待っている。
僕は待っている。
ただじっと待っている。
待つことの辛さというものについては待てど暮らせどそれが訪れなかった人々が散々に語り尽くしている。その最たるは待てど暮らせど死が訪れず、この平成の世になっても未だ、死を恐れ続けては不老不死の秘薬を求めて彷徨い歩き続けている徐福だ。彼の気持ちを想像する度に僕は気分が重くなる。彼が求めているのは不老不死なのに、彼はそれを求め続ける限りは不老不死から逃れられぬのだ。求めるものはそこにあって、既に手にしていて、にも関わらず、それは決して手に入らないのだ。
不老不死の秘薬は事もあろうに徐福の心臓、その肉、その血、徐福オブハート、不老不死。だから徐福は不老不死で、未だにその在処を探し続けている。ああ、徐福、君は何故彷徨う。なぜ求める。なぜ恐れる。君はもう既に徐福なのに。徐福なのに。
僕は待ち続けていて、徐福を待ち続けていて、徐福が何かの妄想に取り憑かれては僕の心臓こそが不老不死の秘薬であると思いこみ、この身、この体、この魂を、この心臓諸共一呑みにしてしまわん事を願い続けていて、そうすれば僕は徐福の血として肉として不老不死を手にする事が出来るのに、出来るのに徐福は来ない、徐福来ず。
待っていて、僕は待っていて、待ち続けていて、徐福は既に死んでいる。