2017年8月2日水曜日

The International 7 プレイヤーレビュー。

途中から泣きそうになりながら書いた毎年恒例プレイヤーレビュー。







『今年のプレイヤーレビューが不可能に等しい理由。』


今年のプレイヤーレビューが極めて困難なのは、dotaシーンにおいて、この一年間というものが存在しないに等しいものだからです。欧米の主要チームはti6後の移籍期間で軒並み崩壊し、中国に至ってはiGVが最強格というだけで頭を抱える展開なのに、そのiGVにビザが出ないという悲惨な環境下で開催されたのが、昨年10月のボストンメジャー。

そこからシーンは立ち直る事がなく、新patchでマップが変わり、dota史上に残るワースト要素が含まれたバージョンが続きました。しかもpatchで悉くバランスが変わるものですから、シーンを曲がりなりにも制したOGと、シーンの中心的な存在であったVPですらも、シーンの文脈を作る事は出来ませんでした。「ラムゼス凄いね」「Universe凄いね」で終わってしまい、彼等がどのようなdotaを目指していたか、どのような成長をしてきたか、どのように新マップを解きほぐしていったか、という見所が曖昧になる環境が続きました。プレイヤーの進化よりpatchの影響の方が大きすぎたのです。アジアチャンピオンシップにおけるiG bobokaのwinキーに、一体どのような文脈があるでしょうか。ふざけた話でした。


唯一の例外はOGで、OGだけは僅かに文脈を作る事に成功しました。そのOGですら、notailの苦肉の策と、s4の弱点克服(できなかった)問題、そして『JerAxやべえJerAx居れば勝てる』というテーマが主で、チームとしてはpatchの影響が強すぎました。OGは、jax強いね、fly強いねという個の力、世界最強のサポート2人によって裏打ちされたチーム力によって、ti6からの一年間、メジャー大会を全て勝ちきってしまいました。


この一年間のシーンにおけるプレイヤーの輝きを、単純なプレイヤーの評価に繋げる事が極めて難しい中で開催されるti7。そのプレイヤーレビューです。上位10人は凄く書きやすいけれど、それ以下は凄くしんどかった。なきそうだった。せめてレソリュと跳刀跳刀とshadow-が切符を逃していなければ、下位でも筆も踊ったのに。






星5,一名。

★★★★★ JerAx


OGはti6後に開催されたメジャー大会3つを全て勝ってしまいました。何故OGが勝てたか、という原因を探るよりも、その前に、否が応でもjaxです。何はともあれjaxです。

JaxがOGに居なければ、OGは必ずどこかで負けていたでしょう。それどころか、1つのタイトルも獲れていなかった可能性まであります。本来ならばLiquidが獲得していたはずのcr1tが、黄金期を迎えていたppdを地下牢に押し込めるという暴挙に出たEGに掻っ攫われた段階で、もしもLiquidにjaxが出戻っていたならば、この一年間シーンを制していたのはOGではなく、Liquidだったでしょう。これは仮定の話だとか、ifだとか、そんな生ぬるいものではないです。現実です。真実です。ifではありません。この1年間のjaxとはそういう存在でした。jaxが居るから勝てる。それがjax。一人でチームを勝利に導いてしまう存在。クラックそのものでした。「dendiが居るから勝てる」をサポートで再現してしまったのです。有り得ない話です。

jaxが辿り着いた高みは、dota16年の歴史の中で、誰一人として辿り着けなかった場所です。全てのサポートプレイヤーが辿り着けなかった、辿り着けないはずの場所です。





ti6以前の一年間、dota2は現在のバージョンとは違うマップのゲームでした。ゲームバランスも全く違いました。そのバージョンにおいて、Jaxがプレイしている4手というポジションは、ゲーム展開に対する影響力を非常に強く持つポジションでした。


アライエンスが誇った世界最強のサポートEGMと、アライエンスが誇る最強のキルプレイヤー Killer Akke & passive Akke の組み合わせは、ti3の決勝において、違いを作る事が出来るサポートプレイヤーを有していなかったnaviに、一度ならずも二度までも完全な勝利を収めました。midでは勝っていた、1手は甲乙付けがたく、3でも優位性はあった。にもかかわらず、サポートをどうゲームに組み込むかという差で、naviは負けたのです。



それからのシーンを制したのは、zai、aui2000という北米でプレイした2人の4手であり、バージョンの変更によりさらに4手の重要性が上がった結果、フィアーとChuaNの2人を筆頭に、世界最強cr1t、zfreek、maybenexttime、ppy、そしてjaxといった面々がシーンの主役となっていったのが、昨年のti6までの流れです。



ところが、ti6以降その光景が完全に変わりました。

東の横綱ChuaNが休業し、西の横綱fearは座敷牢へ。世界最強の4手だったcr1tは、ポジションを変えた事により4手としては完全消滅。zfeekとmaybenexttimeは所属チームの問題から切符を安定して獲る事も叶わなくなります。

そんな中で、追い打ちとなったのが7.00系列の新マップ。コアプレイヤーに追加のリソースが与えられた事により、サポートのゲーム介入能力は低下。サポートは悲しくバウンティルーンにピンポンダッシュ。ゲームを硬直させてだらだらファームをし、フルビルドを備えてドーンとぶつかるのが最適解という、サポートがゲームを作っても相手を押しつぶせないバージョンが来てしまうのです。このバージョンにおいては、カブト虫を食べるフィアー・ザ・ダークネスや、銀の弾丸ChuaN ザ・シルバーブレットは実現しなかったでしょう。




ライバルが悉く自然消滅し、patchにより4手の比重が下がってしまったそんな環境下で、JerAxだけが異質の存在感を放ち続けます。cr1tを僅かな差で追う世界で2番目の4手だったjaxは、どんな役割を担当しても、何故か違いをつくれてしまうという、驚異的な、まるで奇跡のようなプレイヤーと化してしまったのです。



振り返ればjaxは、ゲームの脆弱性を悪用してレートを上げる事で成り上がるという、eSportsプレイヤーとしては非常に汚れた経歴を持つプレイヤーです。だからこそ僕は、5j加入当初の5人の中で断トツで弱く、トップシーンで通用する見込みの無いjaxを指して、「JerAxはペテンである」と言っていたわけです。


この種の、ゲームの脆弱性を利用して成り上がったプレイヤーは、ゲームの脆弱性が埋められると同時に「何をやっていいのかわからない」「扱えるキャラクターが居ない」という苦境に陥って消えて行くのが世の常です。jaxはそうはならず、明確な意志を常に持ち、どんな役割をも担えるという超人へと進化しました。それも僅か5ヶ月くらいで。

MVPで何の結果も残せなかったjaxが、フィンランドコネクションを用いる事で、職場を追われた浪人の集まり程度のアマチュアチームに滑り込んでいなかったら、僕等の見て来たeSpretsシーンは全く違う光景だったでしょう。そのアマチュアチームには、かつてはdota史上最強のタレントだったkurokyが居て、尚且つjaxが加入した5jという有象無象のアマチュアチームでkurokyは、驚愕の全盛期を迎えてしまうのです。

全盛期kurokyの成果は、全盛期kuroky自身がタイトルを獲得してシーンを制圧する事によってではなく、彼が育ててしまったjax、そして移籍市場における敗北により、OGへと放出してしまったjaxが、dotaシーンを完全に制圧するということで、その結実を見てしまったのです。

そして、全盛期kurokyがjaxを失ってからの一年間は、dotaシーン15年の歴史の中で、どんなサポートプレイヤーも決して成し遂げられなかった、「世界最強プレイヤーはサポート」という、未曾有の現実をも招いてしまったのでした。その頃kurokyのLiquidはしんでました。



世界最強プレイヤー。
現時点においてのそれは、他ならぬjaxです。

世界最強carry。
現時点においてのそれは、他ならぬjaxです。



実際、サポート担当プレイヤーが勝利を運んでいるんだから、jaxはcarryでしょう。全然ファームしないけど。ファームするのはファーマーであって、carryじゃないでしょう?ひたすらファームしてるサポートを「carry Support」とか言うの、ちゃんちゃらおかしいですよ。それは「farm Support」です。jaxはどちらかというと、farmしない方に属する4手です。キルも取りに行かない方の4手です。何してるんでしょうね。どういう仕組みなんでしょうね。未だに言葉では表現出来ません。臨機応変にいろいろやっているだけです。





さて、jaxのプレイヤーとしての特色は、まず第一に人を食ったような気質です。jaxのプレイには緊張感がありません。たとえばChuaNは、自らの一挙手一投足が勝敗を左右するという事を明確に認識し、常に緊張感を持ってプレイするのですが、jaxにはそれがありません。自分が何かをして勝つという責任感を持たず、なおかつ日和ってゲームから浮いてしまう事も無いというjaxのバランスは、「所詮これはゲームにすぎない」というjaxの人を食った態度によって成し遂げられています。その態度が成り立つのは、「俺はファームしなくても勝ってきた」というjaxが積み上げてきた実績が故でしょう。

自らのプレイに対する強固な意志を持たない、自らのプレイに固執しないという事はjaxの弱点でもあるのですが、今のバージョンは4手に対する弱体化が幾重にも重なった果てのバージョンなので、jaxのプレイスタイルが最適解と言うことが出来るでしょう。

唯一の懸念はauiとlilをはじめとしたvisage playerのvisageです。中国もvisage大国であり、visageはjax唯一の泣き所です。幸いにして、現状では、visageはjaxの地位を脅かすまでには至っていません。ハンドスキルタイプのプレイヤーではなく、目で見てキーボードを叩ききるタイプのプレイヤーな為、rubickにも多少の問題はあり、enigma戦に不安があるのですが、こちらはチームオーダーで対処可能です。




多くのサポートプレイヤーは「結局ファームしていれば勝てるゲーム」というdotaのゲームデザインに縛られ、相手のファームを潰すか自分がファームするかの、旨味の少ない2択を強いられてきましたが、過剰な自信と人を食った態度に裏打ちされたjaxのマインドは、「別に俺が何もしなくたってチームは勝つ」という達観に至り、他のプレイヤーのように「相手を潰すか、自分が伸びるか」という回答不可能な命題に向き合わずに済んだのです。それもこれも、jaxのパートナーが全盛期kurokyと、世界最強の5手flyという、他の誰もが羨むようなプレイヤーだったのですが、それはそれ。jaxは居るだけでいい。居れば勝てるんです。

kurokyと組むということも、flyと組むということも、jaxが自らの力で勝ち取ったものです。もちろん、その"力"というのは、ゲームの脆弱性の悪用であり、同じ言語を喋るフィンランド人プレイヤーと友達の力を活かしたコネクションによる強引な席確保ですが、その強欲さ、傲慢さ、バイタリティこそが、eSportsプレイヤーに最も必要な能力だったのでしょう。




貪欲であれ。

それがjaxが人々に伝える教訓であり、
jax最大の成功要因です。



「意志を持ったプレイ」である能動的なプレイと、「ファームしていれば勝てるゲームにおいてみんなファームしたい」という受動的なプレイの狭間でjaxは抜群のバランス感覚を見せ、個人性能では決して優れているわけではないのに、気がついたらdotaシーンを完全に支配し、「OGが何故勝てるのか?」に対する最もシンプルなアンサーになっていました。



jaxはもう既に、歴史上最強の4手です。しかも、まだ伸びる余地があります。jaxははじまったばかりです。遡っても彼以上のプレイヤーは思い浮かびません。ChuaNは休みすぎですし、ChuaNは強いチームに居ました。jaxは今も尚、弱いチームに居ます。



faerがずっと4手に専念していれば、あるいはChuaNが休暇を取らなければ。そんなifは不要です。jaxの最強のポイントはその向上心です。fearは立ち止まりました。ChuaNは立ち止まりました。jaxは望み続けました。ゲームの脆弱性を利用してMMRを上げ、eSportsシーンでは一切の結果を残せないまま、MMRを見せ札にして自らを売り込み、使えるコネクションというコネクションを全て使い、立身出世の為にチームを変え続ける事で、なんの実績も持たないままで、全盛期kurokyのパートナーに滑り込んでしまった、jaxのコミュニケーション能力、そして自らを売り込むバイタリティ、誰よりも全てを欲しがった、jaxの強欲さの勝利でありました。もちろん忘れてはならないころは、当初のjaxは断トツで5j(現Liquid)のワーストプレイヤーだったことです。kurokyがjaxを育てたのではなく、jaxがkurokyを喰らって、伸びたのです。


「現在、世界最強のdotaプレイヤーは誰か?」
それに対する私の回答は明確です。
その回答に、一切の迷いはありません。





星4,3人。

★★★★ Universe。

jaxが居なければ、現在世界最強のプレイヤーはmiracle-ではなくUniverseです。中国人の3手が全て迷走しました。それだけではなく、欧米の3手も全て精彩を欠いています。唯一の輝きを見せていたVPの9pasは、事もあろうかUniverseに白黒つけられてしまいました。1手から転向したばかりの9pasと、eSportsプレイヤーとしてのキャリアを全て3手に費やしてきたUniverseとでは、選択可能な選択枝があまりにも違いすぎたのです。

現在Universeの所属するEGには、世界最高のmid lanerであるSumaiLが居るのですが、SumaiLが作れるアドバンテージは決して大きくはありません。何故ならば、現代シーンのポジション2というのは、世界中のサーバーにおける、最強のpubプレイヤーが、pubで鍛えた筋肉を背景に暴力と暴力で殴り合う場所だからです。SumaiLは最強なので、誰が来ても殴り勝てるのですが、その差は僅か。ほんの僅かです。

一方でUniverseは違います。3手というポジションにおいて、並ぶ者が居ません。単純な話をするとSumaiLの方が優れていたとしても、実情としてはUniverseの方が圧倒的に大きな貯金を作れるのです。思い返せば、世界最強のチームには常に世界最強の3手が所属していました。Universeは正にそれです。あの平凡なUniverseが、現代シーンにおける最大の「違いを作れるプレイヤー」になってしまったのです。それは、決して、世界的な3手が迷走したキャリアを辿ったが故の地盤沈下などではありません。棚ぼたではなく、Universeの平凡なキャリア全てが、Universeの力となて、世界最強の3手を形作っているのです。

昨年、Universeはmooというレベルの低いプレイヤーにゲームインパクトの作り方で完敗してしまいました。今年のUniverseもcr1tのpick&ban次第で潰れるでしょう。Universeには無限の選択肢があり、その選び方を間違えれば簡単に潰れてしまう結果が待っているのです。




★★★★ miracle-

やっと、2手です。
やっと、midです。

当代最強miracle-です。

とりあえず、現代シーンにおける最大のプレイヤーパワーを持ったプレイヤーである事だけは間違いありません。Liquidはこの1年間負けに負け続けましたが、miracle-の問題ではなく、ppdを地下牢に押し込めるという暴挙に出たEGにcr1tを掻っ攫われてしまったというのがLiquid低迷の50%です。残り50%はマツンバマンです。miracle-はとりあえず強いままで、一年間を過ごしました。

eSportsプレイヤーなどではなく、血と肉で出来た野心がmiracle-の首を狙っています。もう既にmid lanerとしてはSumaiLに刺されてしまい、現在のmiracle-が当代最強のプレイヤーであるという事実は事実でありながらも、砂上の楼閣であります。

「miracle-の時代」の訪れを待たぬままで、「miracle-が最強プレイヤーであった時代」は終わろうとしています。いいえ、まだです。まだはじまってもいません。遂にLiquidはcr1tショック&JerAxショックから立ち直り、名実共に世界最強の一角を担う地位へと自力で舞い戻ったのですから。これは全盛期kurokyの闘いではなく、当代最強miracle-が、真の最強プレイヤーの座を、たかだかJerAx如きから取り戻す為の夏なのです。




★★★★ SumaiL

世界最強の mid laner。
それがSumaiLです。


かつてのSumaiLはレーンで気がついたらダイブして勝手に死んでいました。今のSumaiLはレーンで死なないばかりか、負けません。負けないというのは大げさにしても、最強のmid lane能力を持つプレイヤーである事は、疑う余地がありません。

今のSumaiLの強さを見て思う事は、世界のトップレベルでプレイし続けた経験こそがSumaiLの強みであり、それはUniverseとまったく同じ意味を持ちます。若干15歳にしてキャリア16年を誇ったSumaiLも、気がつけばそのキャリア19年。現代シーン最強のベテランプレイヤーです。

もちろんpick プール的に大きな問題を抱えており、かつてのs4やmushiと同じように、invokerをpick出来ない程度のプレイヤーパワーしか持ち合わせていません。その個としての若干の弱さを、SumaiL最大の強みである暴力的なひらめきと、円熟味を増した死なずにキルを重ね続ける能力、そして気がつけば、往年のctyを彷彿とさせるmid laneの圧倒的な強さにより逆転し、miracle-すらもその影を踏む事が出来ないレベルのmid lanerとして、世界の頂点に君臨しています。それが、あの頃のSumaiLとはまったく違う、進化したSumaiLです。


もしも、去年のEGに今年のSumaiLが居たならば……。
歴史は変わっていたでしょう。




星3,五人。

★★★ sccc。

ライジングサン。
昇る太陽scccです。

Hao、mu、ChuaNという3人の主力ベテランプレイヤーを休業で失いながら、2ndチームから1stチームに引き上げられたscccは、抜けた3人の穴を一人で埋めるという、あまりにも衝撃的な、日の出の勢いでシーンに登場しました。

確かにあの頃のnewbeeは、iGVよりも弱かったのですが、それはscccの責任ではありません。確かに今のnewbeeも、決して強くはないのですが、それはscccの責任ではありません。

果たしてこの広い世界にchina dota至上主義者というものが存在しているかどうかはわかりませんが、その架空の実在しないchina dota至上主義者にとっては、全ての答弁において「でも中国にはscccが居る」という回答を可能とした、この一年間の中国最強プレイヤーでした。



彼の適正が本当に2手なのかという疑問は今も残りますが、チームメイトに恵まれれば天下を獲れるプレイヤーであることは間違いありません。残念ながら現段階ではチームメイトに恵まれていませんが、それはまた別の話。少なくとも個人としてのscccは、現代中国が誇る特別なタレントなのです。scccの栄光は、この夏には無いでしょう。けれどもその話はnewbeeのチームレビューにて行われるべきであり、この段落で行われるべき話ではありません。





★★★ xxs

現代最強の中国人プレイヤーはxxsです。

話が混乱してきましたが、scccのことは一度忘れて下さい。現在、世界中の3手が滅びました。ムーンメンダーはtiの切符を取り逃し、elvenはこの一年半、迷走に迷走を重ねました。昨年の優勝プレイヤーであるbianは切符を逃し、昨年のtiで準優勝を成し遂げたmooは1手にポジションを変えて切符を獲りました。マイコンは添え物としては最強なのですが、主役になるタイプのプレイヤーではありません。


そんな3手の地盤沈下の中で、xxsはUniverseと同じように、地盤沈下によって浮上したのではなく、自らの才能によって浮上しました。他のプレイヤーが嫌がるプレッシャーの高いヒーローを恐れずにpickし、結果を出し続ける事で、本来ならば中国最強の3手になるであろうyangとの中国NO1プレイヤー争いにも完全に白黒をつけました。yangは心が折れて低難易度のキャラクターへと軸足を移しましたが、xxsは最後まで折れず、心にナイフを隠し持ち続け、要所で誰かの心臓を刺しました。

scccが「本人は輝いているけれど」というプレイヤーなのに対して、xxsは本人が輝き、尚且つ結果が出たプレイヤーでした。身も蓋もない話をすると、全く違うゲームアプローチを持つinjuryとの差は決して大きなものではないのですが、少なくともinjuryには絶対に不可能なロールを担当出来るという点において、xxsに対する評価は揺るぎないものであると思われます。


低難易度のキャラクターで結果を残すプレイヤーを軽んじるのではなく、簡単なプレイスタイルでチームに大きな貢献をし、結果を残すプレイヤーを軽んじるのではなく、xxsは素晴らしい仕事をしている。現在の中国人プレイヤーの中で、最も大きな利益をチームにもたらす事が出来る。それだけの理由で、xxsは中国最強のプレイヤーなのです。ただし、紙一重です。scccとの話が混乱したのも、その辺りですし、後ろにも大勢控えています。




★★★ fly

世界最強の5手。
それがキャプテンflyです。

かつてはサポートのレベルが低い地域であるヨーロッパで唯一、攻撃的なサポートをプレイ可能だった、あのFnaticのキャプテンflyです。この一年間実はflyにとっては少し弱いバージョンが続いていたのですが、それでもflyは無敵でした。JerAx+flyが無敵だったのではなく、fly単独で、他の追随を許さない、無敵の5手でした。

MMYとkakaを失った中国に、flyを討ち果たす力はなく、ppdは地下牢に押し込められ、cr1tは一年の歳月を経てなお、ポジション5に適応出来ませんでした。UniverseやJerAxと同じくらいの、飛び抜けたプレイヤーなのですが、残念ながら今はサポートが弱いバージョン。5手が決定的な仕事をするのは、以前にも増して難しくなっています。それでも、flyのプレイヤーパワーこそが、この一年間のOGの快進撃の根底にあったという事実は揺るぎません。

バージョン的には、昨年のtiよりも都合が良いでしょう。本人に能力がありすぎるが故に、pick&banで自らがコアロールを割り振りに行ってしまうリスクがありますが、流石にその心配は無用だと思います。OGの成功は、失敗の積み重ねであったというのも、flyにとってはポジティブです。




★★★ notail


最悪です。
迷いに迷った結果、ここ以外にnotailを置く場所が無くなってしまいました。ご存じ、なんの取り柄も無いnotailです。集団戦で自らのHPをコストとして支払い、相手のcarryのHPを回復しに行くnotailです。しかも1回じゃなく2回。けれども残念ながら、世界最強のcarry playerであるレソリューションがtiの切符を逃した事により、ポジション1の一番上にnotailを置かざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。論点は理解しています。ラムゼスです。




確かにラムゼスは素晴らしいプレイヤーです。

ラムゼスはnotailと違い、相手を叩きのめす事が出来ます。全てにおいて、ラムゼスの方がnotailよりも上です。notailがラムゼスに勝っている点は思い浮かびません。唯一思い浮かんだのは、実績くらいです。あとは精々1st タワーに対するダメージくらいです。

notailの項でラムゼスの話をするのは忍びないのですが、残念ながらそれを避ける術はありません。何故ならば、脳味噌が付いている人間にとって、ラムゼスはnotailよりも明確に優れたプレイヤーだからです。わたしには脳味噌というものがありません。



一つだけラムゼスについて述べるならば、ラムゼスも実は完璧なプレイヤーではありません。VPは「相手を叩きつぶす」というゲームアプローチが故に、この一年間大きなタイトルとは無縁でした。では、何故VPが「相手を叩きつぶす」というゲームアプローチに縛られていたのでしょうか。その原因はラムゼスにあります。ラムゼスのプレイスタイル自体が「相手を叩きつぶす」「キルでゲームを作る」というプレイスタイルであり、それ以外のゲームアプローチを行った際のラムゼスは、rtzやburningと甲乙つけがたい、極めて平凡な超一流のトッププレイヤーです。



つまり、ラムゼスを世界最強のcarryとして運用したいならば、VPは自ずから「相手を叩きつぶす」というゲームアプローチを選択せざるを得ないのです。そして、dotaというビデオゲームにおいて、「相手を叩きつぶす」というゲームアプローチは、LGD.sgtyによって、フルスタックアライエンスによって、歴史上最強secretによって、否定され続けてきたゲームアプローチなのです。

だだっぴろいマップでグダグダとファームを続けるのがdotaです。dotaは、「相手を叩きつぶして勝つ」というビデオゲームではありません。つまり、VP最強のプレイヤーは疑う余地なくラムゼスなのですが、そのラムゼスこそが、VPに「相手を叩きつぶして勝つ」という弱い、しかしロマン溢れる、そして痛快で、爽快な、プレイスタイルを強いているのです。ラムゼスの強さこそが、ラムゼスの弱点です。



一方でnotailは違います。

notailは何の役にも立たないので、notailがチームに何かを強いるのは「notailが弱いから」です。ラムゼスは「ラムゼスが強すぎるが故に」チームの足枷となってしまっていますが、notailは「notailが弱すぎるが故に」チームの足枷となっています。



「ラムゼスが強すぎるが故に」チームの足枷。
「notailが弱すぎるが故に」チームの足枷。

果たして、どちらが良いでしょうか?
果たして、どちらが悪いでしょうか?

少なくとも、この一年間の結果だけを見ればnotailの方がマシです。そして単純な結果だけではなく、両チームが残してきたリプレイから見ても、notailの方がマシです。今のnotailはあの頃のnotailとは違うのです。チームの足枷となっているのは確かですが、notailという明確な限界の中で、横に太く、縦に長く、下に重く、巨大な1手として、現代シーンに、凜と立っているのです。立ってしまっているのです。



人は自らの強さから逃れる事は出来ません。
自らの強さから逃げると、強さを失うだけです。

その一方で、弱さから逃げる事は簡単です。
努力をすれば強くなります。
そしてnotailはそうしました。



ラムゼスのゲームアプローチが、dotaというビデオゲームにおいて、強いゲームアプローチだったならば……。そんなifは、ここでは忘れて下さい。事実として、残念ながら、何の取り柄も無いnotailは、ソ連が誇る世界で最も暴力的なcarryよりも、明確に強いのです。




レソリューションが切符をとっていればこの項は、
レソリュって書いとけばそれで終わりだったのに。






★★★ raven


無敵のravenです。

アジア最強プレイヤーが世界最強プレイヤーの座についたのは、DK dream teamのiceiceiceが最後。現在のravenは、アジアに久々に登場した、世界最強を目指せるタレントです。以前僕がmiduanの事をそう評価していたのはもはや周知の事実ですが、それを取り下げたのも周知の事実だと思います。ravenは違います。miduanに対しては初見のインパクトで評価を見誤ってしまいましたが、ravenは泥臭いキャリアを全て見続けた上で言っています。


レソリュやzyfが切符を逃したti7において、最強の1手はもう既にravenです。下にはmonetやame、1手に専念するならば拒絶者、そして一皮むけて世界的なタレントになろうとしているuuu9が控えています。とりあえずti7が開幕するまでの、ti7に出場する1手の中の頂点は、ravenとラムゼスが半分ずつ分け合う形です。notailに関しては忘れて下さい。この辺ややこしいので、とりあえずnotailの事は忘れて下さい。



ravenはその苦難に苦難を重ねるキャリアから、ラムゼスとは違い完成された1手です。もはや、ravenに足りないものは何も無いと思います。努力に努力を積み重ねて、アジアの僻地から世界シーンを目指すというそのキャリアが故に、オリジナルのキャラクターという点では少し弱いですが、そんなもの必要ありません。よっぽどメインメタがおかしな事にならない限り、ravenの強さは揺るぎません。

無敵のravenが、ti7には出場しない世界最強レソリューションを、この1夏で超える為に必要なのは、優勝だけです。ti7の優勝だけ。ti7で優勝するだけ。たったそれだけです。ravenが無敵であるならば、そんなもの容易いことです。そしてravenは無敵のravenです。無理だと思います。無理なんてものはないんです。






@星2。10人。


★★ dog1fight

悩みに悩み抜いた結果、星二つ筆頭に置いて一番しっくりと来るIDは、dog1fightでした。かつてのdog1fightは十把一絡げのpub starですらないSEA pub playerだったわけですが、気がついたら凄い事になっていました。ti6以降の中国最強チームは、ti6を獲ったwingsに匹敵する強さを感じさせながら、「中国のレベルは低いから」という忖度を私達に求めてきたiGVでしたし、7.00に至ってはそんな憂慮は不要の世界最強チームとなったのがiGVでした。

そのiGVが何故勝っていたかというと、拒絶者、injury、dog1fightと、3つのポジションで中国最強のプレイヤーが揃ったと書いても全く違和感の無い3人のプレイヤーが故でした。

もちろん、ポジションを変えたkakaやcr1t、ストーブリーグで敗北して完全に消滅した全盛期kurokyと当代最強miracle-とは名ばかりのLiquid、奇妙な低迷を見せるムーンメンダー、SumaiLに「もう二度と天下は望まず」とまで白黒つけられてしまったmaybe、ChuaN、fear、envyといった世界的名手の事実上の失踪など、高額賞金大会であるti6後のストーブリーグと燃え尽き症候群により、世界中のチームが弱くなった結果ではあったのですが、それはそれ、これはこれ。

あの頃のiGVは強く、尚且つ今のiGVも、中国予選を堂々と勝ち抜いてシアトル行きの切符を獲得してしまうくらいには強いのです。そして、そのiGVのベストプレイヤーを一人あげるならば、それは弱いInjuryでも、1手適正が無い中で無理矢理1手をやり、尚且つチームとしても2手に置くか1手に置くかを不安げに迷い続けている拒絶者でもなく、中国最強のサポートプレイヤー、dog1fightということになるでしょう。少なくともこの1年間のリプレイを見る限りは、中国最強のサポートは、newbeeではなく、ほんの僅かだけiGVの近くに居ました。

「このキャラクターでMMRを上げました」
という空気を感じさせない、厳しく言えば必殺キャラクターを持たないdog1fightですが、もう、ChuaNだfearだauiだzaiだって時代ではないのです。dog1fightこそが、今なのでしょう。現在のバージョンは残念ながら、サポートプレイヤーで勝てるバージョンではないのです。OGが有する、たった一人の例外を除けば。

最高の普通の4手。
それがdog1fightです。




★★ maybe

いや、ちょっと待って下さい裁判長。
総理!総理!総理!総理!総理!話を聞いて下さい総理!


maybeがSumaiLに白黒完全につけられて格付け完了してしまったのは、ボストンメジャー。つまりは、ti6からti7の間。即ち、このプレイヤーレビューの対象期間です。にもかかわらず厚顔無恥にもmaybeのIDをこの段落で出すとは、恥ずかしくないのでしょうか。shame on you。いいえ、ちょっと待って下さい。許しては頂けないとは理解していますが、弁解させてください。





ti7前ということで、見ていなかったチームのリプレイも含めて、出場チームのリプレイを片っ端から見て行きました。そこで出た結論は、


maybe、super、noone、ana、fata-

という並びです。
この順番の並びです。
こればかっりはどうしようもないです。

僕が、見て、そう思ったんです。
この一年間あんだけ糞味噌だったmaybeが、nooneより明らかに強かった。現在のバージョンにおいてnooneより取り回しがよく、わりとバージョンの恩恵を受けているように見えるsuperよりも、maybeの方が強かった。こればかりはどうしようもないです。


SumaiLとmaybeは完全に別のフィールドに立っているプレイヤーであるという事をまざまざと見せつけられたのは昨年11月のボストンメジャー。実際今も、maybeよりもSumaiLの方が圧倒的に上で、「めぼしいプレイヤーがみんな居なくなったから、maybeがここに居る」というだけの話です。レソリュだけではなく、跳刀跳刀もshadow-も居ませんからね。彼等が居たらこんな所にmaybeのIDを書く羽目には陥っていませんでした。


とりあえず、maybeは中国が遂に手に入れた真の才能だったんです。あの頃のmaybeはdendiの時代を終わらせるはずのプレイヤーだったんです。実際に終わらせたのはrtzとその時代でしたが、本当はmaybeが演じる役回りだったんです。まあ、色々ありました。maybeは失墜しました。失墜して尚、このくらいはある、というのがmaybeの凄さであり、残念さです。




この段落でmaybeと書く事に対する最大の疑念はnooneの存在でしょう。実際に、nooneとmaybeのどちらが現状のdota playerとして上なのかは、かなり迷いました。まず、nooneは弱さを見せているのですが、nooneの持つ弱さに関しては様々な弁護が可能です。ラムゼスのプレイスタイルに合わせる事を強いられているとか、9pasが未だ完成していないプレイヤーであるとか、lil-soloの関係性が整理されていないとか、soloの戦略自体が痛快なものでこそあれ、dotaというビデオゲームにおいては強い戦略ではないとか。一方でmaybeの弱さに関しては弁護が不可能です。「maybe負けた」「うん、負けたね。」くらいの同意しか出来ないからです。この一年間、世界のトップレベルに対してmaybeが負け続けてきたんだから、maybeは弱い。実際弱いと思います。思いますが、結局maybeはSumaiL以上のひらめきを持ったプレイヤーでしたし(過去形)、SumaiLやmiracle-よりも遙かに成熟した多様性を持つプレイヤーです。maybeはシーンに登場した瞬間から、シーンで最も老獪で知的なプレイヤーだったのですから、当然です。結局その辺の、maybeが持つ個としての強さ、いわゆるサバンナにおける強さを突破するには、よっぽどのものが必要で、そのよっぽどのものを現代シーンにおいて有しているのはmiracle-とSumaiLだけかなあ、という気がしたのです。正直、ti7対策でリプレイを一生懸命に見るまでは、「今も強いかつての名選手」という枠に入れていたプレイヤーなので、こんなところにmaybeのIDを書く羽目に陥って一番驚いているのは僕です。跳刀跳刀がLGDの切符を、分捕ってくれてればなぁ……。

忘れないで下さい。
これだけは忘れないで下さい。
maybeよりも先に、scccと書いています。





★★ uuu9

newbee最大の懸念材料は、uu9です。

newbeeはti7で絶対に優勝出来ないチームなのですが、最近のuu9は見違える程によくなりました。ti6後によくなり続けていたにも関わらず出場権を確保出来なかったshadow-とは違い、uu9は右肩上がりでよくなり続け、日々改善され続けていると言っていいでしょう。それもここ半年です。uu9にとっては、最高のタイミングのtiです。居ないレソリュの首は掻けませんが、ravenやnotailの首は掻けます。

拒絶者が1手にするのか2手にするのかという問題で迷走している現状、中国最強1手の座は、uu9、monet、ameの3人が争う展開でしょう。現在はスペシャルオーダーでmonetが、1手として求められる多様性の高さではuu9が先んじています。なお、IDはmoogyと変わったようです。なんででしょうね。英語実況でID読みづらくて不評だったから、とかでしょうか。

絶対に優勝出来ないチームであるnewbee最大の不安要素。
それが、最近のuu9の異常なまでの成長と強さです。
dotaは3人では出来ないと思うのですが……。




★★ kuroky

ここで名前を挙げるには、かなり抵抗のあるプレイヤーです。
実際問題、今もkurokyはふわふわとしたプレイヤーです。全盛期kurokyの代名詞である、わけのわからないキャラクターを突然必殺技として使いだす、という所は変わっていません。4手寄りとは言え、5手なのに、何をやっても一人で相手を完全粉砕してしまいそうな雰囲気を常に漂わせ、尚且つそれを実現してしまう能力もあります。ただし、最近は若干丁半博打気味。

話は変わりますが、AAが大きく強化されています。1st pick AAというのは、全盛期kurokyの最強キャラクターでしたね。正直、kurokyはそんなに強くないです。それでも、ppyとか、zaiとか書くよりは、自然なIDだなと思います。

とにかく、この辺の名前の並び方は悉く違和感があるのですが、この1年感のdotaシーンは全部水泡に帰したと言っても過言の無いバージョンでのtiですから、こればかりはどうしようもありません。OGのプレイヤーのIDを全部並べてればいいんじゃないの、とまで思います。そのくらい、今振り返るこの一年間は空虚なものでした。こうして振り返らなければ、jaxとSumaiLとレソリュとscccのおかげで、それなりに充実していたのですけれど。現在のバージョンは5手のIDをあげるのが極めて困難なバージョンになってしまいました。kurokyだって厳密には4.5です。




★★ s4

s4は弱いです。
無茶苦茶弱いです。
すぐに行方不明に陥ります。
今のs4は割と壊滅的だと思います。


s4は昔はそれなりに強い部類のプレイヤーでした。あの頃のs4が強かったのは、s4がdotaのポジションの中で一番簡単なポジションを担当していたからです。しかも、あの頃はまだ野心溢れた若い才能がMMRを見せ札にして現金をつかみ取りに来るよりも前でした。けれども今は違います。midなんて、MMRが1万あれば誰でも出来るんです。一方で、ポジション3は違います。そして今のs4はポジション3専任です。


s4は一人でゲームを破壊して帰ってきます。悪い方に。その問題に関しては、ボストンメジャーからずっと解決していません。けれども、ゲームを壊さないように頑張り続けたmagやkyxyやマイコンといった人達がその存在感を失い続ける一方で、s4は何が強いか全くわかりませんが、何故かti6以降のメジャー大会を全て優勝したOGというチームの3手を勤めていました。論拠はわりとそれだけです。実際問題、s4はblink強いし、ピックプールもいいし、多分強い方だと思います。「dsをふっておけばユニバースと互角」みたいな論拠にならない論拠がflyのpick&banを支えていたと思いますし、今の壊滅的なs4でも、3手の中では抜群に強いと言わざるを得ないでしょう。難しいヒーローをpickして、どつぼに嵌まらなければいいですね。s4は所詮s4ですが、s4はs4です。今のs4は明確に弱いプレイヤーなので、かつてのs4につけていた2つ星とは全く意味合いの違う2つ星です。みんな居なくなって、誰も輝くことの出来なかった一年間を踏まえての、少なくとも鈍く弱く輝き続けていたプレイヤーに対する、ある意味では論功行賞のような2つ星です。s4よりも、僕のプレイヤーレビューが今年は滅法弱いです。



★★ 9pas


VPが何故浮上できたかというと、9pasの1手から3手へのコンバートが完璧な形で当たったからです。当たりキャラクターはもちろんsladerでした。それがあまりにも大きく当たりすぎたが故に、少しsladerに執着してしまった感はありますが、VPのベストプレイヤーは9pasでは無いにせよ、VP最大の勝因は9pasだったように私の目には見えました。正直な話、injuryよりも先に9pasの名前を挙げるのには非常に強い抵抗を感じるので、このあたりは横一線です。この一年間のdotaシーンはpatchによって全ての文脈を完全破壊し尽くし続けた果てに待ち受けているのがti7ですから、「ユニバース!」とか「ジャックス!」とかそのレベルを通過した後に待っているのは、「誰も残らない。何も残っていない。」という焼け野原です。9pasはその焼け野原に咲いた一輪の花という感じがするのでとりあえず9pasを。



★★ Injury

この一年間中国最強の3手はInjuryとxxsでした。

全くロマンの無いプレイヤーですし、全くロマンの無いIDですが、同じようにロマンが無いながらも素晴らしいプレイヤーであるmind_controlとは違い、充実した1年間を過ごしてきました。今や世界最強のbat playerはInjuryと言ってもそう強い違和感はありません。Universeだけど。

難易度の高いキャラクターを動かす事が出来ないという問題は幸いにしてti7のバージョンにおいては大きな問題にはならないでしょう。そういう点も含めてInjuryです。miracle-のような属性を持ったプレイヤーが3手に転向したら一瞬で消し飛びますが、ifはif、現実は現実。Injuryという完全に終わったIDが中国最強の3手になってしまったという現実を僕等はそろそろ受け入れる段階に来ていると思うのです。あの頃の僕等が夢見ていた2017年というのは、全てのレーンにmiracle-のようなスキルフルプレイヤーが居るチーム同士の闘いでした。賞金額は跳ね上がり、シーンには終末感が漂うまでになりましたが、そこに待っていた現実は、神と神とがぶつかり合うような頂上決戦ではなく、世界最高の名手が地下牢や座敷牢に押し込められたり、世界最強のプレイヤーが個人としての絶頂期にモチベーションをなくして隠居していく現実でした。Injuryは素晴らしかった。それでいいじゃありませんか。事実、Injuryは素晴らしかったのですから。そして今も素晴らしいのですから。



★★ ラムゼス666

ラムゼスに関しては随分と述べました。

弱さはチームを束縛しませんが、強さはチームを束縛します。ラムゼスは強いです。最強です。ただし、「このビデオゲームにおいて弱い戦略」との親和性があまりにも高すぎます。相手を蹂躙するというVPの戦略は、悪い戦略ですが、soloは悪い戦略を選択していません。チームが最強の1手を有し、2手も3手もその戦略との相性が悪くない以上は、soloにとっての最良の選択は「このビデオゲームにおいて弱い戦略」である、というだけの話なのです。

ラムゼスがあまりにも強すぎることはラムゼスの不幸であり、soloの不幸であり、VPの不幸です。それが幸運に転じるかどうかは、ti7をただ待つばかりです。これまで僕等は待ち続けてきました。DDOS攻撃による出場権喪失を経て、遂に辿り着いたグランドファイナルで、待っていたのはOGの優勝でした。相手を殴らずファームしているだけの、anaという名の悪魔的な暴力でした。



★★ super

世界中のmid playerを見て感じた事は、残念ながら未だに人類最強superは人類最強であり、superを超える為には人間を辞めなければいけないという、あの頃に抱いていたのとまったく同じ感覚でした。

果たして、miduanは人間を辞めていませんし、nooneも弱さを持った人間です。qoも一年間流浪の旅を続けましたし、fata-よりもsuperの方が今のバージョンにおいても強い、というのが率直な感想です。何人も人間を辞める事には成功していません。opも、sakataもそうです。DKでラストヒットをとってるだけのsuperに完敗した、ctyだってそうです。

世界中の2手が人間を辞めるというミッションに成功していない以上は、弱い弱い生き物で有り、サバンナで生きていく力を持たない人間でしかないsuperは今も尚、一つの指針として働きます。superを凌駕すれば世界屈指の名手。superに並べば世界的な名手。

才能の「さ」の字もなく、ひらめきの「ひ」の字も持たないsuperですが、今もsuperは人類最強のプレイヤーであり、特別な才能を持たない人間が、努力を継続し続ける事で辿り着ける高みは、僕等が思っているよりもずっとずっと高いものなのです。

あと、バージョンに恵まれすぎです。stormをまともに動かせず、qopもぎこちないsuperには好都合な微調整がありました。その辺も含めて。





★★ 拒絶者

プレイヤーレビューにおいて必要なものは論拠です。素晴らしいプレイヤーの存在ではありません。monetも素晴らしい。lilも素晴らしい。みんな素晴らしい。ではその全員素晴らしいということが明確なプレイヤーの中から、「この一年間」「どういう素晴らしさで」「どういう結果を残したか」という点が問題になります。たとえばKAKAは素晴らしいのですが、では他のプレイヤーではなくKAKAというIDをここですんなり書く事が出来るかというと、違います。拒絶者は素晴らしいのですが、1手としてのヒーロープールが揃わず、チームも1手で使うか2手で使うか未だに迷いがあります。LFYのリプレイを見た感じだと、LFYはmonetの個としての強さが根底に流れているように見えたので、この項第一の候補はmonetです。あとはVPの後ろ2人のうちのどちらか。miduanも素晴らしいプレイヤーなのですが、miduanはこの一年間世界で戦い続けてきたプレイヤーではありません。QOも同じですね。ということで、全部論拠がないので、なんとなく拒絶者にしておきます。拒絶者が1手か2手かで定まらないのは拒絶者の責任ではなく、iGVの2手が一部のプレイヤーに明らかな敗北を喫してしまうという現実があるからです。拒絶者のピックプールが改善されない問題は明確な問題として残り続けていますが、この際忘れましょう。ここ、15人くらい候補が居て決まりませんでした。






以上です。
今年は上位10人以外はとてもふんわりしています。
論拠はないです。ないですが、勘弁して下さい。

ti7は終わりではなく、はじまりです。
好意的に捉えるならば、ti7は終わりではなく、はじまりです。

この1年間は何もありませんでした。
跳刀跳刀とshaodw-を失っただけです。
それ以外に何もありませんでした。
ti7は、はじまりです。
かもしれません。