2013年3月22日金曜日

超一流のディアブロ3と三流の糞ゲー。

金儲けを敵視しているわけではない。決して金儲けを敵視しているわけではない。お金を儲けるのは、素晴しいことだ。それに、金儲けの為につくられたものを指して「つまらない」だなんて言うつもりもない。イングランドのプレミアリーグでは、EAゲームスや、アクティビジョンブリザード、xbox、プレイステーション、果てはセガといった企業までが、スポンサーになっている。けれども、プレミアリーグを支えているのは、「ゲーム」を売っている会社ではない。「ゲーム」と呼ばれるサービスを提供する、賭博会社だ。どこのチームもピッチサイドの電子看板にはオンライン賭博会社の宣伝が並び、テレビ中継のコマーシャルだってギャンブル。

海外だけの話ではない。コナミがJリーグに支払うライセンス料よりも、TOTOが稼ぎ出す金額の方が大きい。我が国ではインベーダーの以前から、パチンコや競馬といった類の金儲けが、人々を熱く興奮させ続けてきた。ユーザーにお金を支払えば勝てると思わせる仕組み。ユーザーに「金儲けが出来るんじゃないか」と思わせる仕組み。もっと、もっとと、課金させる仕組み。それらは、その仕組みの存在をもって、ビデオゲームに勝る。

この世界では、ビデオゲームをプレイする人口よりも、お金を稼ぐ人口の方が多い。お金を支払う人の方が多い。優れたビデオゲームを提示するより、優れた支払いシステムを提示した方が、ほとんど全ての人に対しては、訴求力が高いのだ。

けれども、僕等は違う。
求めるものはビデオゲーム。




一見するとビデオゲームのような課金システム。それがディアブロ3だ。ディアブロ3でアクティビジョンブリザード社が成し遂げたかったのは、巨大な課金システム。eBayの総元締め。ヤフオクの総元締め。ユーザーとユーザーを結びつけ、それを現金で取引させる。そして一定の寺銭を抜く。その為のプラットフォーム。アクティビジョンは巨大な企業で、ディアブロ3を作ったのは優秀な人達。だから、ディアブロ3は、本当に良くできてた。100点満点中の、100点と言っても過言ではない。

攻撃速度を上げたい?氷のダメージを与えたい?アイテムをもっと手に入れたい?火に対する耐性を手に入れたい?ディアブロ3のオークションでは、全ての望みが一瞬で叶う。望む品物を、瞬く間に発見する事が出来る。それは完璧なネットオークションであり、完璧なインフラだった。ヤフオクなんかより、eBayなんかより、ずっと、ずっと、優れていた。

ディアブロ3を購入したユーザーは、オークションという存在を介して、巨大な1つに繋がった。ディアブロ3のユーザーは、もはや1人のプレイヤーではなく、100万人をゆうに超える、巨大な一つの集団だった。オークションという存在によってアイテムは全てシェアされ、オークションという存在によって、僕等は強制的に結びつけられた。




自ずから、ディアブロ3に施されていた調整は、「1人のプレイヤーに対して行われた」という類の調整ではなかった。「オークションによって結びつけられた、100万人単位の巨大な集団」に対して行われた調整だった。

1人のプレイヤーが3時間プレイして、やっと1つだけ手に入る、素晴しいランダム特殊効果のついた、とっておきの装備品は、3時間後には100万個も供給されてしまう。ディアブロ3には5つの職業が存在する。1つの職業のプレイヤーに対しては、素晴しいとっておきの装備品であっても、他の職業のプレイヤーには無用の長物。8割のプレイヤーにとっては不要品。当然、オークションに流れる。3時間後、80万個ものとっておきの、素晴しいランダム効果が幾つも付いた装備品が、猫も跨いでオークションに溢れる。




「それは、困る。」

そうだね、それは困る。確かに困る。こういうゲームはさ、アイテムを見つけるのが楽しいんだ。自分が今、身に付けている物よりも、少しでも優れた装備を見つけて、それに着替えて、「あ、ちょっと強くなった!」って思うのが楽しいんだ。ビデオゲームという商品が僕等に提示しているのは、"FUN"でも、"EXCITING"でもなく、擬似的な成長。成長ストーリー。成長物語。現実世界では10年努力し続けても、滅多と手に入らないような、成長の快感。ディアブロ3を作り出した、アクティビジョンにしたって、それくらいの事は理解していたのだろう。



市場に溢れた80万個の優れた装備は、人々から楽しみを奪う。

それは単純。そして明快。だからアクティヴィジョンは、80万個もの商品が溢れかえらないようなバランスにした。見事に調整した。100万個も出現するから、80万個も溢れかえるのだ。出現率を1/5に抑えれば、20万個。20万人の戦士に対して、20万個の斧。20万人の狩人に対して、20万個の弓。20万個の召喚術士に対して、20万個のどくろ。出現率を1/5にすれば、需要と供給は見事に釣り合う。他の職業のアイテムを拾ってしまったって?なあに、安心しなされ。オークションがある。

運悪く、「戦士なのに杖を拾ってしまった」という人は、オークションで杖を売る。金に換える。その金で両手剣なり、斧なり、棍棒なり、望む品物を手に入れればいい。それは、誰にでも理解出来る、シンプルな理屈。完璧な理由。






けれども、とアクティビジョンは考える。
3時間で1つ、はちょっと甘いんじゃないか。


レベル20から30までの間のとっておき品は、レベル20でも拾える。レベル30でも拾える。レベル40でも拾える・・・。レベル50でも、レベル60でも拾える。どこでも拾える。いつでも拾える。拾える可能性は残り続ける。そして、ユーザーはもはや個別の存在ではない。オークションというシステムで結ばれた、巨大な一つの集合体だ。3時間に1つのとっておき品は、毎秒、毎秒、増え続ける。どこまでも、際限なく、市場に溢れ続ける。溢れるが故にその価値は低下し続ける。商品が溢れ、商品が溢れ、商品が溢れ、やがては二束三文で買えてしまう。

未鑑定のアイテムを1つ拾い、それを鑑定する時間よりも、道端の壷を1つ割り、中から出てきた小銭を拾い、その小銭をオークションで振りかざす方が、優れたアイテムが手に入ってしまう。アクティビジョンは考えた。「それは困る。」




商品で溢れないために。
デフレで全てが二束三文になってしまわないように。

その為に出来る事。
アクティビジョンに出来る事。



アイテムの出現率を絞る。
市場に、アイテムが溢れないようにする。


元々は3時間で一個だったものを、職業分の調整の為に、五分の一にした。100万から、20万にまで下げた。それを、さらに下げる。貴重な装備に希少価値を与える為に、素晴しい装備を身に付ける喜びを人々に与える為に、さらに下げる。出現率を、さらに下げる。そして出来上がったディアブロ3では、アイテムは出ない。拾えない。出現しない。良いアイテムはない。落ちてない。鑑定した。それはゴミ。ゴミです。道端に落ちているものは全部ゴミです。敵が落としたものは、ゴミです。ゴミなんです。役に立ちません。ろくすっぽ役に立ちません。




では、優れたアイテムはどこにある?
それは、オークションです。
オークションにあります。




オークションには良い武器があります。
オークションには良い盾があります。
オークションには良い剣があります。
オークションには、良い装備が全て揃っています!




世界中の人々の巨大な巨大な集合体。1人の人間にとっては巨大なプレイ時間だが、100万のユーザーにとってはまるで一瞬。1人プレイでは決して拾えないような素晴しい装備品も、100万のユーザーの前ではざっくざっく、ぼっろぼっろ、ごっろごっろ、どっさどっさ、大量に、大量に、出現し続けている。そして、どんな優れたアイテムであっても、ディアブロというゲームが職業というシステムを取り入れている以上、4/5のユーザーにとっては不要品。倉庫の肥やし。だから、オークションに出る。オークションに、出品される。それも一つや二つじゃない。十個。百個。千個。いや、万個。大量、大量、大量。宝の山。




僕等はもう、1人じゃない。
僕等はもう、孤独じゃない。

僕等はもう、1つの集団。
地を埋め尽くす、人のarmy。

巨大な、巨大な、大軍勢。
強く結ばれた1つの毛玉。

今じゃ僕等はバイオマス。
オークションという赤い糸。




オークションを見る。アイテムが見つかる。アイテムを買う。強くなる。手数料ちゃりん。ブリザードにちゃりん。オークションを見る。アイテムがある!アイテムを買う。やったぞ、強くなった!手数料ちゃりん。端銭がちゃりん。また強くなる。次に強くなる。さらに強くなる。ちょっとゲームをやってみる。強くなってるから楽勝。サクサク進む。快適。これぞ未来。未来のゲーム。フューチャー。僕らはinフューチャー。もう過去には戻れない。人類は進む。前に進む。進まないのは、ゲーマーだけだ。過去にしがみついて、脳の随まで腐っちまった、懐古だけが生き甲斐の、くだらない連中だけ。進む。進む。ゲームは進む。未来に進む。ここがフューチャー。

おっと、敵がちょっと手強くなった。進みすぎた。突出しちまった。よし、戻ろう。オークションに戻ろう。検索する。アイテムが見つかる。ちゃりーん。買う。しゃきーん。装備。強くなるどっかーん。やったね。ざっくざっくと撫で切りにして、さっくさくと先へと進む。死んじゃった?大丈夫。ペナルティなんて無いんだよ。進む速度が落ちた?大丈夫。買えばいい。オークションを覗いて、手頃な品物を買って、装備して、強くなって、ボス。どーん!。ボス。どーん!。次のボス、ハイどーん!ハイ、クリア。これぞゲームだ。

終わった?
飽きた?
もういい?
満腹?

これまでのビデオゲームは、クリアしたらそれまで。
はい、それまでよ。おしまい、おしまい。



でもね、ディアブロ3は未来。
ディアブロ3は、フューチャー。

飽きた?それなら、売ればいい。
クリアした?それなら、売ればいい。

オークションで売る。
お金に換える。

売ったユーザー、幸せ。
買ったユーザー、幸せ。
手数料を抜いてアクティビジョンブリザードも幸せ。



三方一両得。
みんな幸せ。
みんなハッピー。
誰1人として損などしない。

これが未来。
ここがフューチャー。



技術の進歩は人々を幸せにする。
それ。その象徴。その典型例。
みんな幸せ。誰も損をしない。




成長、ってなんだったっけ。
ビデオゲームって、なんだったっけか。





僕はもう、思い出せない。
ゲームの事を、思い出せない。

一日、一日、少しずつ薄れて行く。
記憶は、記憶は消えて行く。

悲しみと、怒りと、憤りと
無力感、無力感と憎しみ、無力感と憎悪。

そんな感情も馬鹿になって、
わからなくなって、染みこんで。








path of exileというゲームがある。

ゴミゲー。
ぶっちゃけ、酷い。
最悪に等しい。

まず、画面が見れない。
画面、エフェクトで、超光る。
見ると、頭痛くなって、死ぬ。

もうねー、終わってる。
画面を見れないビデオゲーム。

仕方がないので、光らない技使う。
光らない技、超弱い。
弱くて役にたたない。

それでは困るという事で、スキルツリーとにらめっこして、光らない技専用のビルドを組む。専用のビルドを組むと、強い!あれれ強い!超強い。やばい。楽しい。個性的で強いとかかっこいい。pubに見せびらかしに行く。「俺のビルド、ユニークで素敵だろ!」って感じで見せびらかして気持ちよくなっていると、pubの外人の使う光る技が眩しくて画面を見ていられない。仕方が無しに前腕で目を覆っていると、敵にやられて死ぬ。なんていうか、もはやゲームとして成り立ってない。終わってる。




でもね、path of exileは、楽しい。超楽しい。
どうして楽しいかっていうと、アイテムが出る!

なんでアイテムが出るかっていうとね、オークションがない。
オークションが無いから、アイテムで溢れかえらない。
ドロップ率も超甘い。

ちょっと冒険するだけで、いろんなものが貯まっいく。
その辺を歩いてちょっと敵倒すだけで、あれやこれやがボロボロ落ちる。

次から次へといいものが手に入る。装備を更新出来る。
ちょっと敵倒してるだけで、どんどんどんどん強くなる。

オークションとか、見なくて良い。
そんな時間は1秒もない。

ゲーム内でゲームをする。
ただそれだけで強くなる。
どんどんどんどん強くなる。

1時間もトレハンしようものなら、DPSが3倍になったりする。
それどころか、5倍になったりする。

ま、マジですよ?
10発かかってた敵を、2発で倒せるようになったりする。

ありえない。
マジでありえない。

トレハン効率5倍!
アイテムを拾って強くなって、
強くなったるからもっとアイテム拾えて超強くなる。

超強くなるから先へ進める。
先へ進めるとボス出てくる。

ボス強い。
超強い。

でも勝てる。
強くなれば勝てる。
強くなれるからすぐ勝てる。

勝って先に進むと、雑魚にも苦戦する。
苦戦しながら倒してると、アイテムが拾える。

拾って装備すると強くなる。
強くなるから、敵を倒せて、
敵を倒せるからアイテム拾える。

やばい。
楽しい。
超楽しい。
単純に楽しい。




いや、もちろん、酷いゲームなんだ。

画面は見づらいし、意味もなく重いし、ピカピカ光って画面見てられない。ローディングも何故か長い。ストーリーはくっだらないし、グラフィックはしょぼいし、音もへぼい。マップも単調で暗い。10年前のゲーム並にしょぼい。それでも、楽しい。単純にゲームとして楽しい。倒して拾って強くなる。それが出来る。それが出来るだけ。倒して拾って強くなる。それが楽しい。それだけで楽しい。





A、「検索して買って強くなる」
B、「倒して拾って強くなる」
どっちが楽しいと思う?

わからへんわ。わからへんねん。けどな、僕はな、あのな、倒して拾って強くなる方が楽しいねん。せやからな、path of exile、超楽しいねん。悪人はだいたい関西弁を喋る。関西弁を喋る野郎はろくでなしの屑だ。







システム面だと、path of exile(以下poe)はスフィア板ってのがある。

HPが増えたり、攻撃力が増えたり、といった基本的なものから、最大HPが1になるけど毒無効とか、召喚数2倍だけれど攻撃出来なくなるとか、必中だけれどクリティカルが出なくなるといったような、尖ったスキルも揃ってる。有効なスキルは各地に散らばっていて、それをどのようなルートで拾い集めるかを考えてるだけでなんか楽しい。このスフィア板のおかげで、ネタビルドも色々と出来る。たとえばwitchにしたって、上の画像のようにマナと耐久ルートを辿れば、魔法系の能力に手を付けずに、片手剣や弓まで進められる。それどころか、マナと耐久すら取らずにスルーして、他のビルドに進む事も可能だ。誰が育てても同じキャラクターにしかならない、どこかのディアブロ3とは全然違う。




しかも、振り直しポイントを消費する事で、振り直しが可能。

振り直しポイントは、サブクエストをクリアする事で、ゲームクリアまでに18ポイント手に入る。後半のクエストは難易度が厳しいので、現実的には14ポイントくらい。よって、「14ポイント振り直す」という前提でビルドを組める。もちろん、計画を途中で変更したり、想像とちがう雰囲気になってしまったのを修正したりも簡単にできる。


「終盤まで弓でアイテムを揃え、いい装備が整ったら近接両手剣に転職」「前半は攻撃魔法でさくさく進み、後半は召喚に転職して安全に」「序盤は両手にダガーで切り刻み、後半は氷魔法に転職して全部凍らせる」といったふうに、1つのビルドで2度おいしい。

かつてのゲームでは「序盤は弱いけど大器晩成」、「中盤がしんどくてだれる」、「終盤は見劣りする」といったビルドが存在していて、その中からどれを選ぶかというのがプレイヤーの選択だった。けれども、poeは違う。序盤から中盤までは序盤から中盤まで強いビルドで遊び、終盤は終盤に強いビルドに転職出来る。なので、中だるみしない。計画を考えているだけで楽しい。



振り直しポイントは、最大で18ポイント。
けれども、1ポイント振り直せるアイテムが時々拾える。

ドロップ率は極めて低く、ゲームクリアまでに2つか3つくらいしか拾えないんだけれど、トレードしたいと言えば交換してくれる人は居る。なので、30ポイントの振り直しくらいまでは現実的な選択肢として存在している。「このビルドは、後半強いはずなんだけれど、それまでが辛いだろうな・・・」というビルドを、楽しく、さくさくと、爽快感を得ながら遊ぶ事が出来る。全然辛くない。それでいて、振り直しは無限ではないので、個性が出せる。自分で妄想したビルドが完成してゆくのは、かなり楽しい。振り直しによる転職でまったく違うキャラ特性になるのは、超楽しい。







スキルビルドのスフィア板はこのくらいの大きさ。
ここから100ポイントくらいを選んで自分のキャラを作る。










さらに、何が楽しいかというと、クラフトが楽しい。

このゲームact1は氷、act2は雷、act3は炎、という風に敵の攻撃の傾向がだいたい決まっている。よって、場所によって指輪を付け替えて対処する事になるのだけれど、魔法効果の付いた指輪は滅多と拾えない。単純に、「雷耐性だけ」とか「氷耐性だけ」といった、無印のアイテムしか拾えない。そこでクラフトの出番が来る。

poeでは、特殊効果が6つ付くレアアイテムを作るのは困難なもので、現実的ではない。けれども、特殊効果が3つまで付くマジックアイテムを作るのは、非常に簡単なのだ。指輪やアミュレットを拾う度に、クラフト素材を注ぎ込んで、片っ端からマジックアイテムにしてもぎりぎり足りるくらいのバランスになっている。よって、なんの魔法効果もない無印の指輪を拾うだけでも、ちょっとテンションが上がる。

さらに、新しい町に辿り着くと、店で武器を買ってクラフトすれば、一定の攻撃力が手に入る。運悪く防具や他職の武器ばかり拾ってしまい、攻撃力が上がらず苦しい、という事態には陥らない。終盤までは、武器と指輪とアミュレットはクラフト品で、他はドロップ品というのが基本になる。ドロップと、クラフトのバランスがいい。




進める、倒す、拾う、強くなる。
買う、クラフト、進める、倒す。
単純に、そのループが心地よい。
どこも破綻する事なく、綺麗に繋がっている。

クオリティという意味では、第三世界の素人集団が作ったインディーゲームにすぎず、どうにもこうにも、終わってる。クオリティという点では完全に終わっていて、駄目ソフト以外の何物でもないんだけれど、きちんとビデオゲームしている。正真正銘のビデオゲームしている。だから、単純にビデオゲームとしては面白い。ゲームとしては二流三流、微妙な出来の代物であっても、その部分だけはきちんと楽しい。




poeのスキルは、レベルアップで覚えるのではない。
赤、青、緑、3色のスキルジェムを、装備の穴に埋めて使う。
何色の穴が幾つ存在するか、というのは装備品を選ぶにあたって、非常な重要な要素だ。「欲しい色の穴が空いた装備を拾えない」というもどかしさが、どこまでも付き纏う。そこで前述のクラフトが出てくる。店で欲しい色の穴の空いた装備を買い、それをクラフトして使う。素晴しい特殊効果が付けば儲け物だし、それなりの効果しか付かなくても、装備を更新出来る事には違いがない。


穴には、リンクというスキルどうしを連結させるシステムがある。「攻撃数が3つに増える」というスキルジェムをファイアーボールに連結させれば、ファイアーボールが3つ出る。当然、強い。リンク1つで超強くなる。なんと最大で6リンク。ただの魔法が超魔法になる。ただの殴りが画面全体殴りになる。ジェムを拾えば嬉しい。貴重な貴重な多リンク品を拾えば超嬉しい。アイテムを拾うのが楽しい。アイテムを探すのが楽しい。希望通りのアイテムを拾えなくても何かしら拾える。その「なにかしら」が必ず役に立つクラフトの材料であるからして、これまた楽しい。超楽しい。敵を倒すのが凄く楽しい。


いや、これは何度でも言うけれど、poeは駄目ソフトであり、ゴミゲーであり、たいしたゲームじゃない。10点満点中、1点か、2点。その程度のゲームでしかない。けれども、poeは頑張っている。頑張って、ゲームしている。きちんと、ゲームしている。ゲームを作ろうとして作られたゲームだ。だから、ゲームとしては、一応、ぎりぎり、最低限の楽しさを兼ね備えている。

「完成度」とか「総合点」という評価をするならば、1とか2。あるいは精々3か4だろう。それでも、部分的には楽しい。敵を倒す。アイテムを拾う。強くなる。先へ進む。倒す、拾う、強くなる。ボス!。そこだけはきちんと出来ている。単純に、そこだけは出来ている。だからpoeは楽しい。超楽しい。色々なゲームをパクっただけの、ディア2の劣化コピーなんだけれど、それでも楽しい。ゲームしてるな、と思う。




なお、poeは基本無料。
けれども、課金がえげつない。

どのくらいえげつないかというと、頭が燃えるだけで1000円。武器が一本光るだけで2500円。両手の武器を光らせるには5000円。ペットの青いサソリを連れて歩くには一万円もかかる。魔法の色を変えるだけで1000円、遠距離攻撃が手裏剣になるだけで2000円とかする。えげつない。マジでえげつない。

ちなみに、頭が燃えても何も無い。武器が光っても何も無い。ペットは連れて歩けるだけで何もしてくれない。攻撃のエフェクトが手裏剣になってもダメージは1たりとも増えない。効果は一切変わらない。何の得もない。グラフィックが変わるだけ。日本人の感覚だと、100円200円のおしゃれ課金アイテムが、1000円2000円というフルプライスゲーム並の価格で売られている。にも関わらず、頭に羽が生えたり、武器が光ったりしてる人がそこら中に居る。なんで。

しかも、セールとか言って大売り出しをしている。「頭に羽が生えるセール。普段なら1500円が今なら900円」みたいなセールをしている。安くなったぞ!買うなら今だ!とか言ってる。いや、全然安くない。全然安くなってないです。にも拘わらずゲーマーという人種は脳味噌の螺旋が壊れているのか、頭に羽が生えた人が大増殖。こんな課金モデルでこの先やって行けるんだろうかと不安になってしまうけれど、とりあえず現段階ではなんとかなっているようだ。

さらにえげつない課金としては、「ゲーム内に登場するユニークアイテムを考案する権利」なんてのもある。お値段なんと10万円。「ぼくが考えた素敵なアイテム」がゲーム内に登場するというだけで、そのアイテムを貰えるわけではない。わけがわからない。意味がわからない。そんなもの、買う人が居るわけがない。にも関わらず、大勢の人がその権利を買って、「ぼくが考えた素敵なアイテム」をゲーム内に登場させている。あたまがおかしい。えげつない。

とりあえず現段階のpoeは「無課金で遊べる」といった類のものではなく、「課金してもいい事は何も無い」というレベルの課金である。なのに、なのにどうしてみんな課金するあるか。わたしには理解出来ない。課金というよりは、寄付って感じがする。kickstarter時代っぽいな、って感じがする。どことなくモダン、なのかな。







ディアブロ3とpoe、どちらが面白い?
って聞かれると、答えは決まっている。

それは、もちろん、ディアブロ3だ。
遙かに優れていて、遙かに面白い。
ディアブロ3の方が、10倍、いや100倍面白い。



その楽しさは、買う楽しさ。
その面白さは、買い物の面白さ。
その素晴らしさは、オークションの素晴らしさだ。

博士号を持つ優れた技術者達が作り上げた、
完全無欠の完璧な、買い物インストラクチャーだ。




お金を支払う。
物を買う。

手に入れる。
実際に使用する。




それは、人にとって根源的な喜びだ。
その喜びをアクティビジョンは提示した。
完全なまでの姿をもって、人々の前に差し出した。




それは、まるで、完全な快楽。
ディアブロ3の快楽。
気持ちよさ。
楽しさ。
全て。





僕は何度でも言うよ。

ゲームを楽しむ人よりも、買い物を楽しむ人の方が多い。
この事実は決して揺るがない。
この真実は覆らない。




ゲームを人々に提示するよりも、
買い物を人々に提示した方が、
より人々を喜ばせられる。




買い物はゲームを上回る。
優れた買い物は、優れたゲームをも上回る。

ディアブロ3は、優れた買い物だ。
優れたオークションであり、優れたサンドボックスだ。

カスタマイズされたブガッティヴェロンを買って、ニュルンベルグを走らせるには、膨大なお金がかかる。けれども、そんな夢物語が、ディアブロ3の世界では簡単に実現してしまう。買う、倒す、走る。全てが一流。poeの不確かで不安定なみすぼらしい成功とは違う、約束された莫大な定量の成功。誰もが必ず成功を手に出来る、快楽の保証された世界。





かたや、poeはゴミ。粗大ゴミ。
時代錯誤の劣化コピー。
二流品いや三流品。



でもね。

僕等は成功したくてゲームをやってるんじゃない。
成功したいなら、ゲームをしないのが一番だ。
そんな事くらい、誰だって知ってるよ。

僕等は信じたいんだ。
成功できる可能性が存在していると、信じたいんだ。
だから、確実な成功を提示されると逆に駄目になる。
嘘でもいいから、もしかすると、って言ってもらいたいんだ。







超一流の優れた買い物空間と、三流のゴミゲー。

どちらが面白いかだって?
どちらが楽しいかだって?

馬鹿な事を聞くんじゃあないよ。
比較対象にすらなりやしない。

ディアブロ3に決まっている。
買う興奮。
乗る興奮。
走る興奮。
有効な快楽が、有効な形で配置されている。
そこには気持ちよさが詰まっている。
快楽がぎっしり詰まっている。













けれども僕のPCには何故か、Path of Exileがインストールされており、Diablo IIIは存在しない。それは僕がただ単純に、変わり者のけったいな、頭のいかれた男だからだ。