2007年6月9日土曜日

三歩進んで二歩下がっては駄目、一日一歩はもっと駄目。



何も成し遂げないままで僕らは生まれ、
生まれてからも何一つ成し遂げないまま、
幾億無数に踏み鳴らされた只管に平坦な道のりを、
街路灯の橙に見守られながら一歩一歩踏みしめ続けてきたせいで、
その行為、即ち歩くこと、歩むこと、踏みしめ進むことそのものを、
神聖化して聖域にして、特別なものとして誇らしげに誇り、
歩くこと、歩むこと、踏みしめ進む自分自身を自ら己で褒め称え、
歩け歩め踏みしめ進めと自らを鼓舞し、奮い立たせ、
随分ずっともう思い出せないくらいの間、
歩くことこそがそうなんだと、
右と左を交互に繰り出し、
爪先踵順繰りのループを、
足跡の数だけ繰り返してきた。




歩くこと、歩むこと、踏みしめ進むに疲れては甘え、
伸ばした背筋も捻くれ曲がり、足跡の数だけ指折り誇り、
今日はもう既に3歩進んだから2歩までは下がっていいのだと、
勝手な理屈己説き伏せ、膝も曲げず腕も振らず、
瞼を上げる手間すら惜しみ進んだ3歩その道を、
チヨコレイトを唱える学童のような闊歩で一つ二つと数え戻って遥々後退。


歩くこと、歩むこと、踏みしめ進むに疲れては甘え、
歩くこと、歩むこと、踏みしめ進むことを続けることが、
大事なこと大切なこと必要なことだと言い含め定め、一日一歩を自らに課し、
楽な一歩より楽な一歩、糾した背骨丸めて猫背、
昇り傾き赤くなるまでつま先の僅か先凝視。
カラスの鳴き声に呼応して、MLBの審判ですらボークを取らないくらいの一歩。






成し遂げたぜと満面の笑み。
おうちに帰って家族団らん。
聞いて呆れる「ようがんばったね」
一度としてなく見上げることなく目指すことなく振りをして死ね。






歩く事ではなく辿り着くことを。
歩く為ではなく辿り着く為に。
辿り着くために。
辿り着き踏み付け乗り越える為に。
水平線に隠匿された未踏峰に辿り着きその頂を這い進む為に。

這い蹲って、数えずに啜る。
這い蹲って、数えずに啜れ。

辿り着くために。
辿り着き踏み付け乗り越える為に。
水平線に隠匿された未踏峰に辿り着きその頂を這い進む為に。

這い蹲って、数えずに進む。
這い蹲って、数えずに進め。













keep on going、辿り着くまで。
keep on going、行き続けてください。