それでも夏は僕を押す。

左から来た暑さが空気中を通って部屋の隅々に行き渡ると、地球の周りをゆっくりと回る太陽がそれを暖めて少しずつ膨らます。溜息ばかりついて幸せになれない男はやがて、溜息をはき出すだけの空気をも吸えなくなって小さく俯く。目の前には手とキーボードのミスマッチ。ぬるく暖まり大きく育った夏の空気は口も聞かずに僕を押す。頬を、肩を、腰を、踵を腹を、押されたところで動かない。僕を動かす為にではなく、不満を伝える為に押す。知っている。その不満はもう知っている。なのに不満を伝える為に、それでも夏は僕を押す。