2005年2月10日木曜日
10秒
それが事実であるからといって、それそのままにキーボードを叩いてよいという事ではない。例えば、女の声を聞いたのであれば、「昨日、夜もふけた頃、女の人の声が聞こえてきた。」などという書き方が推奨されるのである。
ここでそのような段取りを踏まずに事実をそのままそれとして、
「女の声が聞こえる。」
と不躾にやってしまっては具合が悪い。
ブログというものはその人と也がそのままに現れるものである。
例えば僕がこのブログ上に置いて、物凄く書道が好きで、書道部にて書道ライフを謳歌しているのだけれど、足が速すぎて陸上部の顧問からストーキング勧誘を受け続けており、陸上部の顧問は陸上部の顧問でよく出来た人物であるからして、断り続けるのに少し疲れ、「陸上書道部」なんてのも悪くは無いか、などと二刀流への転進を前向きに検討している、ゲームは小学校4年生くらいで卒業した電子レンジで2分チンした生卵を食べても吐かないような短髪の好青年を演じているわけであるのだが、http://sinseihikikomori.bblog.jp/を開いた時にまず目に入るのが「真性引き篭もり」であるからして、そのような目論見が成功しているかどうかは疑わしい。
だからといって、ブログのタイトルを今日、今この瞬間から「物凄く書道が好きで、書道部にて書道ライフを謳歌しているのだけれど、足が速すぎて陸上部の顧問からストーキング勧誘を受け続けており、陸上部の顧問は陸上部の顧問でよく出来た人物であるからして、断り続けるのに少し疲れ、「陸上書道部」なんてのも悪くは無いか、などと二刀流への転進を前向きに検討している、ゲームは小学校4年生くらいで卒業した電子レンジで2分チンした生卵を食べても吐かないような短髪の好青年」というものに変えればよいというものではない。
ブログはそのタイトルだけでなく、その成り行きに人と様が現れてしまうわけであり、突如として自分を美しく見せようという魂胆でブログのタイトルを変更したとなれば、それはもう、そのような人物であると笑われて終わりなのである。
事実として僕は非常に足の早い好青年であり、食欲が無いからと卵を器に割り入れて電子レンジでチンしたら、トイレに行っている間に茶碗が割れていて電子レンジの中がじゅばばばばーんとなっており、茫然自失と少し泣きながら必死で飛び散った卵を指で摘み取って口に入れ、何を考えたのかトイレへと走って戻り、トイレットペーパー基地を4回くらいカラン、コロン、と鳴らして両手に巻きつけ、それに水道を少しばかり垂らして電子レンジの内部を清掃し、急いで部屋へ駆け入って一息ついていると少しずつ壊れ始め、やがてそれは猛烈な吐き気へとなったのであるけれど、僕は真性引き篭もりであるからして部屋から出られぬ事情にあり、その後の事は思い出したくないなどと泣き言を書き連ねるような人間ではないのだが、非常に足の早い好青年であるという事実を持ち出すよりも、事実無根のでっちあげを行った方がブログを書くには容易いので、事実無根のでっちあげを行っているのである。
僕が連日連夜、ブログをわずか10分足らずで書き上げ、投稿し続けられるのも、適当なでっちあげをもってそれを適当な気持ちで文章にしているからである。例えるならば6Bの鉛筆を「尖り過ぎてると書きづらいからさ~」などと言ってノートの白いページにグルグルとこすりつけ、そのページをまっくろにしているようなもので、推敲も翻案もなにもない。
これがもし、非常に足の速い短髪の好青年であるというありのままをブログにする、という方針でやっていれば、このようには行かない。
非常に足の速い短髪な好青年の日常というのは非常に退屈なもので、踊り場にて1年前の級友と出会い、駆け下りていた階段をゆっくりと登るくらいが関の山であり、そのような平凡な日常をブログにするというのは果てしなく難しい。
もしも、僕が素のままで素朴にブログをやっておったならば、おそらくは3日に一度とか、4日に一度とかそのようなおざなりな更新しか出来ず、アクセス数なども只管に落ちて行き、アクセスカウンタをつけるとかブロックの再設定を行うなどといった他愛も無い事ですら行わぬくらいに適当な運営になってしまうであろう。
いや、確かに僕の日常には駆け下りていた階段をそろりそろりと忍び足で音を立てないように慎重に登り帰る以外のイベント、例えばよろしくやったとか、よろしくやっていたのがばれたとか、よろしくやりたいといったものも存在するのである。
しかしながらそのような下世話で論壇系ブログに相応しくない文章を投稿するわけにはいかないので行わない。
では、なにを行うかというと、開設されたその日その瞬間ともいっていい時間帯からよろしくやりたいと思っている読者を放置して、コメント欄で「ぅゎ~ちかくにゅる♪今度にょみにでもいきまっしょい!!」とかやりあっているのとかも非常に腹立たしいのに、サッカーのサの字も出てきていなかったブログにサッカーを生観戦してきます(^^)とか書かれているのを読んで、僕の方が遥かにサッカーが好きであるのにワールドカップすらまともに、というかほぼまったく見ていないという事実に泣きながら苛立ってよろしくやりたい、よろしくやりたいと思い、よろしくやりたい、よろしくやりたいとずっと思ってきたのであるという事実はさておき、「先輩と」ってのはなんだ「先輩と」ってのは。
先輩ってなんだ。
先輩って。
先輩ってなんだ。
先輩って。
女だ。
女。
と、ブックマークを削除してから女の声が聞こえたという事実をブログに書くのである。ブックマークは削除したので、あとは女の声が聞こえたという事実をブログに書くのみである。
つまり、ここで重要なのは女の声が聞こるという事であり、それ以外の些細な出来事と些細な文章は、もう、どうでもよいのである。どうだって。
しかしながら、女の声が聞こえたからといって「女の声が聞こえる」はよくない。
ブログの書き出し一行目で、「女の声が聞こえる」とやってしまっては、スクウエアのロールプレイングゲームの一幕のように安っぽい。
女の声が聞こえる。
いや、ブログのタイトルでも一行目でも何でもない。
リアルタイムに聞こえたという事実を書いただけである。
女の声が聞こえる。
それはかなり昔から聞こえてくる。
いつ頃からかは思い出せないのだけれど、引き篭もりになる前からだったような気もするし、引き篭もりになってからだったような気もする。
女の声、というものは嫌いではない。
より正確に言うと、物凄く好きである。
基本的に女の声というものは物凄く好きであるのだけれど、声というものは言葉を伴う。声はその伴った音と響きにより、薬にもなるが毒にもなる。僕の中に今も残っている女の声というものは、左耳の後ろの頭皮を掻き毟るようなものばかりであり、女の声が好きだなんて、とてもじゃないが書けない。
そのような事実を差し引いても、女の声が聞こえる。
非常に不愉快である。
一心不乱にブログ、それも非常に素晴らしくく読んだ誰もが名文だと唸るような文章を書いている最中、のりにのっている絶好調の真っ只中に女の声が聞こえるのである。
なにも、よりによってこのタイミングで聞こえてこなくても良いのに、と苛立ちを伴う悲しさの中で女を黙らせて、続きを書く。
それはいつも、よりによって、どうして、今。という時に聞こえてくるのである。例えばダンジョンクロウルにて竜王の鎧を4Fで拾ったタイミングで女の声が聞こえてくるのである。
鎧の重さで攻撃という攻撃が失敗して10度に9度はミスが出る時。
飢えとミスにのた打ち回りながらレベルを上げている時。
宝物個の最下層でLv27まで上げ「よーし、進めるぞ!」と思った時。
進め始めた瞬間にに体力満タンから麻痺即死コンボをくらって死ぬ時。
そのような、よりによっての時間が来ると、必ずもって聞こえてくるのである。
「十秒」と。
10秒。
それは短い。
いや、僕にとっては時間ですらない。
「10秒について何か書いてくれ」
と頼まれたとしても、僕は一行も書けない。
世の中には、「10秒あれば眠れる」と豪語し、事実眠る人間がいる。
「10秒で飲み干す」と豪語し、事実飲み干す人もいる。
「10秒でよろしく」と蔑み、5秒でよろしい人もいる。
しかしながら僕は真性引き篭もりであるからして、10秒ではなにも出来ない。
つまり僕にとっての10秒とは、時間ではない。
実在しない、なにかなのだ。
女は、その実在しない何かを僕に投げかける。
「10秒」と。
だから不愉快なのだ。
だから、不愉快なのか?
定かではない。定かではないが、不愉快なのだ。
キーボードから手を離し、右の眉毛を二本抜いた所で、また聞こえる。
「10秒」と。
僕はそのような舞台に上がったつもりはない。
ただ、ただDOTA allstarsという事象を文章として捉えなおしたかっただけなのである。僕というDOTA allstars、DOTAallstarasという自分を。
なのに、女の声が聞こえる。「10秒」
しかしながらそのような物言いは不適切であろう。
そもそも、真性引き篭もりというブログを開設し、DOTA allstarsから逃げ惑ったのは、語尾を強める女に追われての結果であったのだから「10秒」
女の声が聞こえる旅に、僕は女に問いかけた。
「これでいいだろ」と。
シンガポール人を虐殺して「これでいいだろ」。
もう満足かい?
女は何も言わない。
押し黙ってじっと見る。
黙りこくった女を見て満足し、胸骨を一本吐き出した所でまた「10秒」
DOTA allstaarsのプレイレポートを立ち止まらずに一気に書ききり「これでいいだろ」、もう満足かい?
女は、また押し黙る。
押し黙った女を見て僕は癒され、女を黙らせる事に成功した自分を褒めて酔いしれていると、また「10秒」
また、「10秒」
また「10秒」
ブログを書いてそれを黙らせ、投稿ボタンを押してまた「10秒」
歯を磨いて「10秒」
少し踊って「10秒」
ゴミ箱を空にして「10秒」
待ってくれ「10秒」
ちょっと待ってくれ「10秒」
待ってくれ「10秒」
お願いだから待ってくれ「10秒」
10秒じゃ何も出来ない。「10秒」
10秒じゃ何も出来ないんだ。「10秒」
許してくれ、僕が悪かった。「10秒」
全部僕の責任だ。「10秒」
もう、おざなりな事はしないからちょっと待ってくれ。「10秒」
朝も夜もちゃんと食べるし「10秒」マウスボールの汚れとかも拭き取るし「10秒」タイピング音がたたないようにとキーボードの上に敷いてある茶色とねずみ色の木綿のシャツもちゃんと洗うから「10秒」
「10秒」ゆっくり考えて「10秒」ゆっくり準備して「10秒」ゆっくり書けばちゃんとやれるんだ「10秒」
5分とか、10分とか、30分とかあればなんだって。「10秒」
5年、10年、15年とゆっくりやれば出来るんだ。「10秒」
けど、10秒じゃ何も出来ない。「10秒」
だから、ちょっと待ってくれ。「10秒」
10秒で、って言われたら、悪いこと悪いこと重ねるばかりだ。「10秒」
にっちもさっちもいかないのは、あんたがせかせるからだ。「10秒」
ちゃんとやれるのに。「10秒」
ゆっくりやればちゃんとやれるのに。「10秒」
なんだってきちんとやっていけるのに。「10秒」
予定を立てて「10秒」手はずを整えて「10秒」石橋を叩いて「10秒」予定を立てて。「10秒」それなのに。「10秒」
あんたがせかすからだ。「10秒」
ちょっと、待ってくれ。「10秒」
待て「10秒」
待て「10秒」
待て!「10秒」
黙れ「10秒」
黙れ「10秒」
黙れ!「10秒」
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!二度と僕に近づくな。世界から消えろ。死ね。一生僕に近づくな。「10秒」黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ「10秒」う座右座右座右ざいざいざうざいざういざいうざい「10秒」ああーーあああーあーああーあーああーーーーーああーあーあーああーあー聞こえない聞こえない。
「10秒」
「9」
「8」
「7」
「6」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」