道一面に蝶が咲いているのを見た。
淡い黒色の大きな羽が、道一面に散っていた。
強い風が巻き起こる度に幾つかが、ひらりひらりと低く舞ってはまたすぐ落ちた。
強い自動車が通り過ぎる度に1つ2つとひしゃげて死んだ。
その度に逆立ち驚き立ちすくむ。
見るも無惨に失われてゆくのを見る。
蝶は馬鹿だ。
実に馬鹿だ。
真っ直ぐ飛べないから。
こんなことになるんだ。
真っ直ぐ飛ばないから。
こんなことになるんだ。
見つかるようにとひらひら飛ぶから。
目立つ翼でぶざまに飛ぶから。
なにもないのに。
誰もいないのに。
煽られ舞い落ちアスファルト。
ひっつきひしゃげて道の華。
馬鹿だな。
ほんとうに馬鹿だな。
道に咲く羽はもうすぐそこ。
道一面の蝶々は記憶の彼方。
道に咲く羽はもうすぐそこ。