2005年8月24日水曜日
リアル売ります。
「僕は何者なんだっけ?」
といった些細な疑問がふとしたきっかけで湧いてきて、秋の頭を支配した。
僕は何者なんだっけ。
思い出した。今思い出した。
引き篭もりだ。真性引き篭もりだ。
自分は引き篭もりであるという再発見によって、引き篭もりというものに少しだけ興味が沸いた。興味が沸いたので、引き篭もりがいっぱいいそうな場所へと潜入してみた。
そうしたら、なんと、引き篭もりがいっぱいいた。
右も左も引き篭もり。さすがにちょっとひいた。世も末。
そこでは、引き篭もり同士がいがみ合っていた。
それはもう不毛な争いを飛び越して、おかしいたらありゃしない。
「夜中に自転車で走ってたら警官に止められました」などという悲しげな独白に対して「夜中に散歩に出られるなんてお前引き篭もりじゃねえ!出てけ!今すぐ出てけ!」なる罵倒が飛び交う世界。悲しい異次元罵りあい。思わず「喧嘩は止めて!」って叫びそうになった。全てが虚しい。
そこでは「書き手が引き篭もりであること」が求められていた。
誰もが「書き手が引き篭もりであるかどうか」を知りたがっていた。
「書き手は一体何者なのか」
インターネットの多くの人はそれを知りたがっている。
どうしてかとなるとそりゃあもう簡単な話。
読み手は不安でいっぱいなのだ。
「ここに書かれているものは実はくだらないんじゃないか」と。そう。
読み込む前から胸一杯、読んでる途中も疑心全身。
まったく、インターネッターってのは哀れだ。
全部くだらなくて、全部つまんないのに。
なにかを期待する方が間違いなのに。
けれども誰もが何かを期待し額に夢してブログを巡る。
そして常に書き手が何者であるかを知りたがる。
何故知りたいかとなるとそりゃあもう単純な話。書き手が何者であるかがわかれば、それは即ちそこに書かれているものが何であるかがわかるからだ。わかりはしなくても、安心するのだ。
即ち、ブランド主義。
つまりブランド志向。
ブログ読者が消費しているものはエントリーでもブロガーでもなくブランド、肩書き、プロフィール。見える顔。
そして同じく書く側も、ブランド志向ブランド主義。
自分のリアルを書き綴っては何者であるかを形作る。
「こういう書き手になりたい」という願望が人を突き動かす。
そうして嘘と自己正当化な演出弁護が掻き集められ、リアルは形作られる。
例えば美人OL。
例えば引き篭もり。
例えばモテるヲタク。
例えばCOOLな主婦。
例えばスーパーハッカー。
それは大変な作業だ。
しかも、綻びやすい。
作り上げられた偽リアルは、ほんとのリアルじゃないからだ。
「こういう人間でありたい」という願いが叶わぬならせめて、「こういうリアルを演じていたい」という望みを綻ばぬ完璧な形で叶えられる1つの方法がある。
本物のリアルをどこかから、借りてくればいいのだ。
インターネット人口におけるブロガー即ち書き手の割合など微々たるものだ。
その他多くの人達は、リアルを持てあましているのだ。たんす貯リアル状態。
その、眠っているリアルを借りればよい。
そうすれば、完璧綻ぶ事の無い、リアルブロガーの出来上がりだ。
ネカマなリアルを演じるのに、パンツの色やマニキュアの色、あるいはサンダルの値段や美白液の銘柄といった、設定するのに大変な労力が必要となる事柄も、本物のリアルな女の人からリアルを買って、一括仕入れで一発だ。全部完璧に設定終了。プロフィールには「OLやってまつ」と胸を張って書ける。何問われても綻ばない。
即ちリアル売買というのは、両者が満たされるwin-winな勝利関係なのだ。
そこでリアルだ。
僕も売ろうと思う。
僕にとって今や必要なのはhankakueisuuとブログだけだ。
生活も、日常も、思考も、ありとあらゆる私事は必要無い。
むしろマイナス。
縛り付ける鎖。
不要である。
だから売る。
リアル売る。
真性引き篭もりを演じたい誰かにリアルを売るのだ。
そうすると、少しだけ困る。真性引き篭もりというリアルを売ってしまった僕のリアルは何なのか、何者なのかがわからなくなる。一体僕は何者なのか。まあ、そんなのはどうでもいい。何者だろうと知ったこっちゃない。
とにかく、リアル売るのでどなたか買ってください。
真性引き篭もりのリアル(一月分)
¥198500円(全てサポートします)
198500円が高いと思った貴方。
貴方は間違っています。
真性引き篭もりになると198500円くらいでは済みません。
たったの198500円で今のリアル生活を維持したまま真性引き篭もりになれるのです。
これは少し考えればわかることなのですが、物凄いお得です。
リアル売ります。真性引き篭もりのリアル売ります。
ご購入ご希望の方はhankakueisuu(アットマーク)hotmail.comまでご連絡下さい。