2005年9月29日木曜日

今いかづちに、望むこと。



巨大な見えない左手が地殻にそびえるサイドギアをガチッ、ガチッと引き起こして夜を長くしてゆく、物凄い速さで。巨大な見えない右手が逆側のサイドギアを一気に引き倒して一秒、一瞬を際限まで引き延ばし張ってから、もう久しい。コンコルドが首をもたげる。静寂が斬られる。音が遅れて鼓膜を叩く。未だ、冬は来ず。思いの外、冷える。




暖まりの無さに揺さぶられ、いかずちにでも撃たれれば少しは気が安らぐかもしれないという希望が芽生えては過ぎ去り、芽生えては過ぎ去る。灰色に速く回る洗濯機の中の糸くず取り網のように右に左に張り倒されながら、そこを漂う薄汚れた必要の無いものばかりを1つ残らず漏らさぬようにと掻き集め続ける遊離感。衣服も礼節も無く保つ寸分の正気。壊れぬ己の強靱な頑なさが、寒い夜は一段と憎い。




突然の大雨に、油断していた黒雲が取り乱している。
「梅雨かな」とふと思ってしまうアジサイの枯れた季節。
茶色く濁ってそれでも尚、造花のように冬まで佇む、梅雨を乗り越えた強さ。
花片一枚、落ちず、流れず。




目視不能な天空の向こうで、見えぬものと見えないものとが擦れ合って、啀み合う。
爆ぜ宛ての無いかみなり雲が、己のわたくしを破壊してゆく。




水道水を一口飲んで、眉毛を2本抜く。
冬に震えて、少し怯える。








外は夜の雨。
内は冬の空。
雲一つなし。
晴れわたる。


いかづちまでもが、冷たくあたる。
せめて雷、せめて雨。