2005年12月5日月曜日

蛇頭



筋骨隆々の屈強なる男に「俺はいつだって真実を述べているよな?」と凄まれながら唇喉胃その向こうまで腕を付き入れられては微動だにできず、やがてむんずと掴まれ引きずり出され、ブルンブルンと振り回されては爽快に五色の悪に撃ち当てられては諸共、もろとも砕け散ればこれ本望と凍り付く夜に望んでみてもアルゴスに戦士はいない。

喉の奥、寸での所で鏡に映らないぎりぎりの位置から心臓の中奥深くまで五臓六腑にでろりと横たわった巨大な毒蛇が内腑を食い破らんと上下の顎をじりりじりり、開こうとしている。

そうされてはたまらん、と思うわけではないがきりりきりりと突き刺す痛みに堪えかねて思わず、そうされてはたまらんと思い立ち顔面蒼白、全身の肉という肉神経という神経に力を入れて強ばらせ蛇の口をば懸命に押さえつけ続けていると、毒蛇は死んだ。なんとも、あっけない。

死んだはいいが、死んだは死んだで毒蛇の毒が溶け出して血を巡って行き渡り、指の先つま先脳の髄、魂までをも壊死させる。抜け落ちた鱗が絡まり合って松ぼっくりのようになり舞いのたうち回る。それでも蠢く不義理な心は唇が乾けばチロチロと舐め、脇腹が痛めばくねくねと地を這い、太股に指絡ませる。いったい僕は蛇か蛇か。