一粒こぼれた涙が嫌いで、ぎ取り握って叩きつけたら、音も立てずに砕けて消えた。形になった悲しさですら、有耶無耶の中に霧散して、見えなくなってたちこめて、それぞれ、ずっと、押し競う。
ハードディスクがカリカリ回って、遠い夜道を車が走って、知らない鳥がヒューと鳴く。太陽が今も地球の周りを毎日健気に回り続けているのかどうかすら、僕はもう随分と確かめずにいる。
暗がりの中で明るさを、なるべく限り遠ざけて、見ないようにして努めて過ごす。ロウル、ロウル。目も開けられぬ眩しさは、日に日に増えて、見えなくなる。夏至の意味すら知らないけれど、明るい世界が調子付いてる。
真っ暗闇が包み込んでも、眩く輝くCRTが、凝った空気を劈いて、せつなさすらも蒸散させて行き場なく、真っ暗闇に化け変わり、白く凝って包み込み、器用に僕を巻いてく。逆に巻いても黒い海苔は黒いまま変わらず黒く磯臭い。
欲する人は死に絶えて、欲さぬ人は死に絶える。早明浦ダムは干上がって、ムー大陸は海の底。願うだけでは何も変わらない願わなければ何も変わらない。
叩きつけられる水滴が、地鳴りとなって世界を遮り、潤い染み込み消えてゆく。僕の涙もそこに交じれば、梅雨時花の1つも咲くのだろうか。そんな風にでも輝けばいいと、僕が未来を変えるよりも早く、未来が僕を変えていく速く。間に合わないんだ、なにもかも。