2007年9月23日日曜日

レインボーブリッジを、閉鎖しろ。



人々の儚い希望や、切ない心を飲み込んで、日中日夜の見境無しに、凄い速度でどこまでも巨大化し続ける、インターネットという夢の高未来テクノロジーこそが、私たちの生活を妨げ、私たちの日常を寸断し、私たちの営みそのものを阻害している、という事に人々が気がついてからというもの、インターネットを遮断する、というのは長く我々の夢だった。




誰もがインターネットの存在しない世界を夢想しながら、インターネットの波間を宛もなく漂い、全身に漂う疲労感と空腹感、あるいは腰の痛み偏頭痛といった類の郎党に追い立てられて隆起した、自ら己への失望と、諦めの狭間に、座る場所さえ失われ、朝を告げる目障りな雀の歌を聞くに及んだ。

それらが繰り返される度に、人はまた、インターネットを遮断せねばならぬとの思いを強くするのだ。朝が来る度に歌い、羽ばたき、恋をして、雀のように生きるには、インターネットから自らを隔離する以外に道はないと。事実、燕やら、雀やら、沖の太夫やTODOは、インターネットの無い世界で今日も夜明けを歌っているじゃないか。




けれども、僕らは、それなり人で、そんなうまくは回らない。

Googleも、excite翻訳も、goo辞書も、wikipediaも、Twitterもyoutubeもmixiもハンゲームも無い世界で、一体何が出来るというのか。いや、なにもできない。インターネットを遮断しようにも、インターネットが無ければ、何一つ始めることすら出来ないのだ。

だから僕らは仕方がなしに、インターネットに自分を繋げて、いろんなものを垂れ流す。時間、脳髄液、人間の心。どろどろに溶かして流し込んでゆく。そんなふうに、「このくらいならまだいいか」なんて少しずつ何かを捧げる度に、僕らは何かを得て、何かを失い、インターネットは肥えてゆく。

僕らが歌うはずだった空はもう、嘴までも黒色の漆黒のフラミンゴの群れで埋め尽くされている。絶え間なく降り注ぎ舞い飛ぶ抜け落ちた暗闇色の羽毛綿毛の嵐の前に息も絶え絶え瞼など、持ち上げる事すら出来やしない。眼に光はついぞ差さない。




それでも、やはり、インターネットを遮断するという夢は、けして、僕らを、とらえて放さず、今日も誰かが立ち上がる。たとえば、考え得る限りの最悪のブログを書いて、インターネットをトラウマにして、精神的にインターネットを不可能にするという試み。

もちろん成功したよ。大成功だった。魔王物語物語クリアしたよ。中盤で成長が頭打ちになり、以降は敵ばかり強くなってゆくというのは、明らかにしんどい。中盤までは逆にスキップできすぎなのに、突然プレイヤーがゲームの都合に回収されてしまうような無理強い感を感じてしまう。一応出口抜け道その類もあると言えばあるのだけれど、頭打ち期間は事実上ラスボスまで続いてしまう。とりあえず、成功だったよ。大成功だった。攻略サイトを探しにGoogleにアクセスする勇気すら生まれなかった。

これは、行けると思う。物理的にインターネットを遮断するのが不可能ならば、精神的に負荷を与えて、インターネットをトラウマにして、インターネットへの接続を不可能にしてしまう、という作戦は大変に有効だと思う。このインテリジェンス溢れる戦略的な勝利をさらに決定的なものとするにはどうすればよいのか、という事を考えた。考えに、考えた。

結論としては、やはり、Winnyでウイルスに感染し、恥ずかしいデスクトップやら、書きかけのブログの草案やらといったものを、全て流出させて、恥ずかしくて、恥ずかしくて、もう生きていられませんというくらいになれば、きっとインターネットを完全に遮断出来るだろうと、僕は思った。




だから、加速的速やかにウイルスに感染するべく、取り急ぎWinnyをダウンロードして、The Elder Scrolls IV:Oblivionと、Bullet Butlersと、この青空に約束をと、巣作りドラゴンと、絶対幸せ宣言と、遥かに仰ぎ麗しのと、Quake4を落として、alcoholで焼いて、インストールして、明けぬ夜明けまで遊んできます。それでは、皆様、ごきげんよう。また会う日まで、愛しい人よ。