2010年6月20日日曜日

真性引き篭もり : メタ無き時代。

ESWCの予選pickをざっとまとめたものを見たけれど、そこからは何も見えてこなかった。
SMM前夜の場合だと、もう完璧なまでのrange vangメタで、necがとにかく強かった。vangの弱体化でnecを完全に切って新境地を切り開き成功したのが820擁するEHomeで、vang弱体化にも関わらずrange vangを使わざるを得ず沈んでいったのがメリーニのEG(Nirvana.int)だった。

そして訪れたESWC前夜。
今は何メタなんだろう。

これが難しい。なぜならば、ESWCを事実上の完全優勝という形で制し、その後のメタであった3 carryが、一応は完全に滅んでしまったからだ。3 carryは何故滅んだか、というと一番大きかったのは「SGtyの重要なプレイヤーがEHomeに入団した」というあまりにも残酷な現実で、EHomeというチームが今のところ中国人プレイヤーのゴールである以上は、どうしようもなかったのだと思う。SGtyはそれに加えてチームリーダーのインアクティブ志向という問題もあり、何度か試してはいたものの、最終的には3 carryを完全に切り捨てるに至った。SGty以外の3 carryがほぼ完全と言って良い程に滅んでしまったのは、3 carryが勝負をかける時間にunkerに殺されてしまうという弱点で、20-30分にリードを作る(というよりも勝ちきる)のが3 carryという戦術だったのに、その時間をnukerに潰されてしまうとじり貧になるという致命的とも言える弱点だった。それ故に3 carryは廃れ、そのアンチたるnuker重視(正確にはnuker偏重)もあっという間に廃れた。

SGty以外のチームで最も3 carry的だったアジアのチームはEHomeなのだけれど、「問答無用の最強戦術」であると思われていた 3 carryには実はnukerというシンプルな弱点が有り、それをプレイングでカバーしようと試み続けるも凋落ては、低空飛行を続け、結局その暗黒時代を抜け出すには「820を後ろに下げて、他の4人は前へ」という奇手を必要とした。

もちろん、欧州でも3 carryは完全に廃れた。欧州の場合は「3 carryは必要とする練習量が多すぎる」というよりシンプルで、より致命的な理由と、「3 carryは5人のプレイヤーが必要」という、つまらない理由からだった。SGtyやその模倣者による成功した3 carryは、5人のプレイヤーが優れたプレイヤーであったから出来たことであって、チーム内にレベル差を抱えるチームばかりの欧州に3 carryで成功を収めたと言いきれるチームはついぞ現れなかった。

そんな欧州で3 carryに代わって浮上したのは、「Loda」や「Playmate」、あるいは「KuroKy」とか「13baby」といったようなクラックであり、クラックがゲームを作り、ゲームを支配し、ゲームを決めるという、SKやfnatic時代のLodaを彷彿とさせる古い欧州の戦術だった。

以前と違っていたのは、LodaのSKやfnatic時代とは比較にならない程プレイヤーの平均レベルが上がっていたという点と、クラックと呼べるプレイヤーを複数人抱えるチームが成功した、という当たり前すぎるような事実である。欧州で必要とされたのは「2人目のレベル」という低いハードルであり、3 carryに必要な「5人目のレベル」というハードルと比べれば、どのチームも比較的簡単に飛び越えられる高さだった。

そんな欧州に起こったのが、kotl やwlがpick/banされるなど時計の針を逆に回したかのような「素直なpump」戦術であり、逆にアジアで浮上してきたのは「異常なpump」+「支配力のあるsolo mid」だった。アジアでは3 carryと同じくらい早く、同じくらい強く、同じくらい支配力があり、後半もダレないsolo midが要求されたのに大して、欧州では大エースを横に配置して安定を求める傾向が続いた。もう、欧州とアジアでは、「やってること」自体がまったく違うのである。欧州では「3 carryを倒す方法」が真剣に考えられたこともないし、「imbaな3 carry」が存在した事も無い。誰もそこまで到達しなかったのだ。けれども、アジアにはそれが有り、しかもそれを選択したのが他ならぬ中国人のゴールであるEHomeというチームだった、という事があまりにも致命的な現実として存在し続けたのである。そのEHomeを完全に踏み潰し乗り越えたのがCHであり、SGtyであり、Nirvana.CNだったのである。

そして訪れたESWC前夜。
もう、メタなんて無いのだ。

DOTA allstarsのヒーロー数は遂に100人に迫ろうとしている。なのに、ban枠は両チーム足してもたったの8人。「ban必須のヒーロー」の存在が許されるはずもなく、それ故にバランスはとてつもなく良くなった。大会使用バージョンでは無茶なヒーローは存在しないに等しい。残ったのはプレイヤーの好みやチーム事情だけ。sheep stickメタもレシピの変更とアイテムの追加で終わったし、daggerメタも仕様の変更で終わった。もちろん、vangメタも同じように終わった。メタ無き時代の象徴的存在がmedusaであり、今よりも遙かに強かった当時は見向きもされなかった、メタ無き時代の蝙蝠なのだ。