2010年6月15日火曜日

真性引き篭もり : ESWC出場チームレビュー。

一番驚いた、というか僕の英語読解力が足りずに間違っていたのは13Baby。



Meet Your Makers
  Maelk
  MaNia-
  13abyknight
  PlaymatE
  PusHer

Online Kingdom
  syndereN
  XoY
  Fire-_-
  Black^
  KuroKy


13BabyはMYMに移籍していた。駄目じゃん全部おじゃんじゃん。いくらKuroKyが加入しても、13Babyが抜けてしまったOnline Kingdomに勝ち筋は無い。あくまでも、13babyという生真面目carryと、KuroKyという最強のユーティリティープレイヤーが合体するから可能性を感じたんであって、肝心要の大黒柱13babyが抜けてしまっては、アジアはおろか、ヨーロッパですら戦えない。

逆に、MYMはデンマーク最強を体現する面子が揃った。DTSを1人で葬った「弱小チーム不動の大黒柱」が遂に"デンマーク人プレイヤーのゴール"であるMYM入団。かつてMYMに所属していたAngle、miGGel、hanni、といった素晴らしいデンマーク人は他にも居るけれど、どちらが上かとなるとそれはもう、ほとんど好みの問題。しかも、大黒柱としてプレイさせるならば、13babyはangleにも勝る本物のcarryプレイヤーにして、間違いのないラストヒッター。もしもMYMがtinkerやsandをpickし、13babyとPlaymateという生粋のcarryをきちんと支える事に成功すれば、アジア相手のアップセットもあり得るだろう。(ミザリーもデンマークだけれど、Lodaと蜜月である以上現実的ではない。)

一方のkurokyだけれど、表面だけ見れば「世界を旅するドイツ人ドイツに帰る」というなんというか、果てしなく微妙な結末。しかも、層の薄い弱い弱いドイツからは2チームも参加するせいで、「ドイツドリームチーム」ですら無いという絶望的な状況。「DOTA allstarsの中心」であり続けたKuroKyが、その舌根と無国籍的奔放さ故に、遂にDOTA allstarsのホットスポットから自ら降りる形になってしまった。このメンバーではまともな成績を残すことは不可能だろうけれど、こればかりは自業自得・・・か。言っても、臨時加入であり、ESWCが終わればpggとpuppeyが待っているわけで。「mouz所属プレイヤー」というただ一点だけでkurokyを基本的には応援し続けてきただけに残念。まさか13babyが「デンマーク人のゴールテープ」を喜び勇んで切ってしまっていたが故の助っ人としてのOK入りだったとは。デンマーク人だからしょうがないとは言え、KuroKyに訪れたリベンジの夏は、始る前に終わってしまった。



DTS
  ArtStyle-
  Light Of Heaven
  Dendi^
  NS
  Dread

DTSはもちろんこのメンバー。いつ見ても名前だけならば世界最強に見えてしまうけれど、それは2年も3年も前のこと。即ち、むかしむかし、そのまた昔。dagger pandaや、dagger rkという、どうしても古く見えてしまうヨーロッパ/ロシアなスタイルで、どこまでアジアに迫れるか。DTSに最も足りないものは、戦術の革新性であり、次に足りないのは・・・チームの核?「入れ替えるメンバーが居ないが故に補強不可能」という、なんとも贅沢すぎる問題点を抱えたチーム。ここにkurokyが居ればというのはたらればすぎるか。もうこのチームは引退以外ではメンバー入れ替えの余地がない。この5人のシーン貢献度は高すぎるので、ロシア人なら応援するしかない。僕はESportsでは伝統的な親ロシアなので当然乗る、と言いたいところだけれど・・・一番思い入れのあるロシア人はESWC出番無しのpgg。pggが浮いてしまったのは本当に残念。おのれKuroKy金剛峰寺バルザック。


Blight (dDream)
  Ducky
  MiSery
  Loda
  Miracle
  Pajkatt

これでDuckyがプレイしないのであればスカンジナヴィアドリームチーム。
もしもそこにkurokyが居れば、亜欧決戦としゃれ込めたのに。

遂に、パジャキャットが居場所を手に入れた、という事実だけは喜ぶべき事。1年以上前、もっと言えば2年前でもプレイのクオリティは高かったので、13babyとパジャキャットが「強い人は強いチームへ」というとても自然な流れに乗れたのは良い事。ESWCという高額賞金大会復活によって自然な事が自然に起こった。何度でも言うけれど、チームリーダーのducky以外は「これ以上誰を望む」という域に達しているプレイヤーなので、急造チームの不安はあれど、Loda MiSeryの核は揺るがず、欧州一番手はこのチーム。KuroKyの自滅によって、ぐらぐらと揺らいでいたLodaの欧州筆頭は、再び不動のものに。「SK所属プレイヤー」であるLodaを応援しない理由は無い。パジャキャットは後衛も出来るので、パジャを後ろに回すのか、それとも前に出してミラクルかlodaを下げるのかが、このチームの分かれ目か。流石にlodaを下げるという選択肢は無さそうなので、素直に考えればパジャを前に出しミラクル下げて3-0-2か、パジャを中衛にしての2-2-1かだろう。Lodaはチーム事情から前に出さざるを得ず、ミザリーは使い勝手が悪いのでこれもまた前に出さざるを得ないので、戦術の幅が狭いのが痛いところ。両者を最前線でプレイさせるとなると、パジャキャットに無理をさせるしかない。パジャは後衛、中衛もこなせる器用なプレイヤーではあるんだけれど、これだけのレベルのガチ大会でいきなり鍵を握る存在になってしまったのは、不安要素。浮沈の鍵はパジャの出来にかかっていると思う。(ドゥッキーは実力が足りていないので、安定して駄目だろうから。)



Nirvana.Int
  Fear
  Demon
  Korok
  Puppey
  Azen

米露合体。間を取り持つkurokyが居なくなったおかげで、Eスポーツ的には珍しいアメリカロシアドリームチーム。上3人はアメリカ、下2人はソビエト(ロシア/エストニア)。「アメリカ3、ロシア2」という枠内ならば、ほぼ完璧なメンバーが揃った。これは予想外に面白いチームになった。ESWC一番の面白チーム。贅沢を言うならばkorokに変えてKuroKyだけれど、もうKuroKyの名前を出すのはやめろ状態。KuroKyの"Ky"は空気読め!のKy。

メリーニの代役にAzenというロシア最強にして最悪のBAKAプレイヤーが加わったことで、Fearとdemonの「期待の持てないアメリカ人」にも、面白さが出てきた。必要な事はしっかりと出来るプレイヤーなので、かなりのインパクトを残す事が出来るかもしれない。このチームの完成は、一番嬉しいサプライズ。

それでも、「ESWCまでに欧州再編は間に合わなかった」という感覚がぬぐえないのは、duckyとkurokyの存在感が故。Azenに「Azen専用ヒーロー」を割り振ってあげる事さえ出来れば、アジア3をも叩けそう。2年越しのks.sg超えなるか、といった所。シルバークロスやミザリーも大概BAKAだけれど、世界で一番BAKAなのはやっぱり、今も昔もAZENだと思う。チーム事情故にBAKAプレイヤーを担当してるとかじゃなく、正銘生粋のBAKAプレイヤーだから。BAKAプレイヤーっていうのは、「バカバカバカバカバカァ!」って言いながら相手全員ポコスカ殴って、全員やっつけちゃう役目のプレイヤー。



MUFC
  Winter
  Koy
  Deejaysharky
  Redsun
  Silvercross

「あれ?こういうメンバーなのか。」というのが素直な感想。「Deejaysharky」って誰だろう?akaは何なの?と狐につままれたような感想を抱いてしまう。記憶力の外側に位置するメンバーが居るのが気になるけれど、シルバークロスは今日も輝く。僕はMUFCに乗る事に決めました。昨年のSMMでKuroKy率いる旧MYMを打ち砕いたのがこのチーム。けれども、あれはホームでの出来事。アウェイ、Parisでどうなるか。

!!
今ざっと調べたところ、22minで9000gold溜めたbatが他ならぬDeejaysharkyだった(aka:sharkshark、aka:shark、aka:sharkey)。他チームの大黒柱だったのが、MUFCに合流してESWC行き。マレーシア予選を勝ち抜けたのはこの人が大当たりしたから。パリでもやってくれ。中国に奪われたDOTA宗主国の座を、再びマレーシアに!

本当は八強漏れしそうなチームだったんだけれど、shakyの加入で「アジア八強下位」と呼ぶに相応しいチームになったので、欧州のトップどころがここに勝てるかどうかが、この大会最大の見所。「欧州のトップチームに1人加わればアジア八強下位に勝てる」と常々言い続けてきたので、13babyが加入したMYMや、AZENが加わったNirvana.int、パジャが加入したdDreamなどがそれに近い。でもよく考えてみると、Nirvana.intはkurokyが抜けて実質マイナス。dDreamはAngle、miggelが抜けこれも完全にマイナス。MYMは純粋にプラスだけれど、元の地力でやや劣るので、MUFCとの力関係を逆転するには至らないか。それでも、下手な鉄砲数うちゃ当たるで、どこかがやってくれるかもしれない。ホームの利もあるし。

MUFCもMUFCで、アジア八強上位にはほとんど完敗し続けてきただけに、アジアの高さをパリで証明するという困難なミッションを完遂出来るか、胸躍る。EHome、MUFCの2チームが途中でつぶし合わない限り、金と銀は既に決まったようなもの。(このチームの覚え方はマンチェスターユナイテッドフットボールクラブでOK。)



YS(旧 ks.sg、旧aeon)
  ToFu
  hyhy
  Roy
  MikeD
  xy-

苦しい。メンバー構成が残念。2008年王者、と言われても時代が違う。かつてはマレーシア最強プレイヤーの1人yamateなんかも居たが、再編に次ぐ再編で相当スケールダウンしてしまっている。SG/MYの連合チームだったのが、DOTAシーンの隆盛に伴いマレーシア人は国に帰ってしまった。おまけに、シンガポールのベストメンバーでも無い。「xyとroyが居て何が不満か?」と言われれば、まあそれはそうだ。確かにそうだ。アジア的に見ても「恥ずかしくないメンバー」である事は確か。でもその辺のプレイヤーが聖LOHやdendiやartstyleよりも勝ってると言えるか、となるとかなり微妙。同じくらい、というのが素直な感想だと思う。つまり、hyhyというクラックを擁する点を除けば、今現在のysはDTSと同じくらいのチームでしかない。

もちろん、決定的な違いはhyhyが居るという事。同じkingsurfに所属していたので幾らか割り引いて捕らえないといけないとはいえ、あのKuroKyが世界最強と言ったのが他ならぬhyhy。確かに、それは決定的なように思えるけれど、もうクラック1人でどうにかなる時代ではない。実際に、ここ最近はどうにもなっていない。hyhyを軸にした砲戦術を徹底すれば可能性はあるけれど、それでも他のメンバーがhyhy砲を支えきれないと思う。さらに言えば、hyhyは砲型のプレイヤーではなく、ysは砲型のチームでもない。hyhyはなんでも出来るけれど、もの凄いクラックが1人でどうにかする、という時代は完全に終わってしまったのだ。今のDOTA allstarsはあくまでも、チーム力。後衛力。戦術精度。練習量。そもそも、ガチの大舞台においてチーム力で圧倒的に勝る相手を1人で潰した実績を持つのって、せいぜいLodaとmushiの2人くらいのものだと思う。rash3d vs 旧ks.intの大ソビエト時代だって、勝負を分けたのはクラック力ではなくチーム力だったし、それと同時代にアジア最強をうたっていたtofu-hyhyのチームにしても同じ。2010年のhyhyがこのチームで成し遂げられる事は、せいぜい「素晴らしいリプレイをシーンに提供する」くらいのものだと思う。

iceiceiceが居たら?yamateが居たら?mushiが居たら?kurokyが居たら?もし誰か1人でも居たならば、ysは強かろうと言うと思う。でも、このチーム力だとToFuを前衛でプレイさせざるを得ず、ToFuの長所であるpick幅を活かすことが出来ない。厳しい言い方だけれど、「アジアは3チーム」というより、MUFCとEHomeの2チーム。ysは上位に進出する前に消えると思う。もしも消えなかったら、それはhyhyが今尚して異常なまでの世界最強プレイヤーだった、というだけの事であり、世界はhyhyにひれ伏すだろう。でもそんな事は起こらない。だって、事実そんな事はずっと起こっておらず、アジア八強の上位4チームは常に中国チームが独占し続け、ysはアジア八強にも入れない、「金星を提供し続ける昔の強豪」的な低空飛行を続ける、dota大国シンガポール没落の象徴的存在なんだから。このチームも今はSGtyと同じLGDがスポンサー。醤油(調味料)メーカーらしい。そんなもの使う層はESportsなんて見ないよと思うけれど、一人暮しの大学生にコーラ売る感覚なのかな。



EHome
  820
  BurNing
  357
  KingJ
  Dai

なんと。
驚き。
バーニングがEHomeに居る。

昨日まで、というか予選でもCHに居たのにEHomeに入っている。本当に驚き、というか酷い補強だ。予選からメンバーを変えてきた。それもBurNing加入とは。中国人はakaが狂ってるので、どれが誰なのかわからないし、誰がどこに居るかもわからない。「aka:简单的电脑」とか言われても読めないし、「aka:Q」とか言われでも「で、誰?」としか。

BurNing以外は全員わかる(Daiが「aka:X」、KingJが「aka:J」「aka:JJJ」な)ので、AAAに変えてBurNing。SGtyを完璧な形で打ち破った予選からメンバーを変えてくるとは、EHomeも必死なんだろう。これは強くなった。バーニングは成り上がった。こうして見ると、EHomeはやっぱり一応、中国人DOTA プレイヤーにとってのゴールなのかなあ・・・。(kingJは昨年のSMMではSGtyに所属していたプレイヤー)

SGtyは、チームリーダーの2009が実質インアクティブのままで予選に挑んだのが最後まで響いた。本当はESWC前に入れ替えたかったんだろうけれど、予選までに2009以上のプレイヤーを入団させる事が出来なかった。そりゃあそうだ。あの栄光のSGtyでsoloやってる2009の代わりなんぞ、そう簡単に見つかってたまるか。しかも、予選後にメンバー入れ替えに成功したのはSGtyではなくEHomeとは。酷い。酷い補強だ。不動の大本命、というレベルではない大本命。EHomeが勝たないとおかしい、というレベル。さらに強くなったこの5人ならば、EHomeが本格的に中国筆頭、即ちアジア筆頭に返り咲くかも。

戦術面でも、820砲、820soloの3 carry、820後衛の3carry、820前衛の4 carry、820後衛の4 carryと、なんでもござれ状態。820は820なので、820に負担が掛かるのは仕方がない。SMMからの半年は完璧に近いまでのSGty時代で、EHomeは中国3番手も危うい所まで落ちてしまっていたんだけれど、そこから見事に蘇り、さらに事もあろうかCHから主力プレイヤーを補強する事に成功してしまった今のEHomeに不安要素は全く無い。

SGtyがパリで見られないのはつくづく残念だけれど、まあ、これならいいやという感じ。逆にSGtyが出場して、「SGty優勝しなければそれは間違い」みたいな変な緊張感が生じてしまうよりも、「負けてもアウェイだから。」とか「負けても面白いものが見られたから」という理由で納得できるEHomeの方が心理的には楽。だいたい中国とか伝統的に好きじゃない人がほとんどで、せいぜいFly100%とxiaotとgohomeと820くらいだから中国は負けてもOK。SGty以外負けてもOK。SGty・・・。



有力チームはここまで。
欧州5。アジア3。






あとは、MCiTY(ニュージーランド)。
中国勢との対戦経験も多く、アジア八強下位には稀に勝ってる。たまーに、勝ってる。



もう1つ、EOU(dmz)。「youtubeインポート阻害につき削除」一連の動画でプレイヤースキルを超えたスターになってしまったyoutubeスターのhexOrを擁するドイツチーム。日本風に言えばhexOr P擁するドイツチーム。kurokyが居ない事を除けば、きちんとドイツ最強な面子だけれど、所詮ドイツだから上位は無理。腐っても古豪という点と、hexorの知名度と、パリに近いという優位さにより、招待枠をゲットしたラッキーなチーム。Eスポーツ大会に出場するよというよりは、「パリだ!夏だ!ディズニーランドだ!」的な強さ。(ごめんなさいと謝るための心の準備は出来ている。)。SGtyがSGtyがと譫言のように繰り返したくもなる。



乗るのは前述の通りMUFC。断トツで強いのはEHome。
それでも、3ヶ月前に想像していたよりは遙かに楽しみな大会になった。

・アメリカロシアドリームチームのNirvana.int。
・生粋の生真面目carry13babyを手に入れたMYM。
・パジャキャットを手に入れたdDream。
・不動のメンバーでビザ問題も(今のところは)聞こえてこないDTS。
・助っ人どころかシルバークロスが霞んで見えるチームになったMUFC。
・それらの補強を嘲笑うかのように、さらに強くなってしまったEHome。

賞金額は人を動かす。現実のスポーツと同じように、ESportsもまたプレイヤー駆動ではなく、大会駆動。今僕が世界ランクを作るとすれば、1位から9位までは全てアジアのチームだとはいえ、パリで行われる大会にアジアから3チーム15人というのは、十分な数字。KuroKyだけは本当に残念。あのチームでは何もかもが不可能だ。






「2008年のアジアを遂に捕らえた欧州。だがしかし、現代アジアは銀河の果てへ。」
そんな当たり前の事実を当たり前のように再確認できるESWCになるだろう。