2011年10月28日金曜日

EHomeへの誤った嘲笑

ESWCの総括としてEHomeは弱かった中国は見かけ倒し、mushiも弱かったアジアなんて雑魚、みたいな事を書いて居る人が居るけど明らかに違う。EHomeは強いし、マレーシアもそれなりだし、NaViもそれなり。NaViが圧勝したのは熟練度から。

なにしろ、本来ESWCはDOTA allstarsで行われるはずだったし、DOTA allstarsで予選をしていた。それがDOTA allstarsからDOTA2に変わったのは大会まで一ヶ月を切った9月23日。尋常な出来事ではない。





欧州のDOTAシーンは完全に終わった。
MYMもSKも遠い昔に引っ込んで主要チームが無くなって、LOLが客を取って、大会もそちらに流れて、ウェブ上での集客力が落ちてしまって以降のDOTA allstars欧州シーンなんて、アマチュアに毛が生えた程度の所まで戻ってしまってた。以前は面白いリプレイがあると結構な頻度で5万ダウンロードされていた(3サイトの合算)のに、今はもう2万に届かないくらいにまで落ち込んでしまっている。プレイヤー自体はまだ多いけれど、シーンの落ち込みはどうしようもない。大会も減った。だからこそ、デンマーク語やスウェーデン語よりも大きなパイを持つロシア語という市場の資金力で完璧な面子を揃え、モチベーションを保ち続けることに成功したNaViやモスクワ5は「私達はdota2をやる」と大々的に喧伝したんだし、クローズドベータの頃からdota2を本気でやりこみ続けてた。


一方のアジアは、DOTA allstarsは完全に死にきっていない。
プロ間の対戦成績を元に算出されるprodota.ruのランキングではベスト3が全てがアジアのチームだった事もあったし、gg.netのランキングも上位5チーム中3チームはアジアだ。ランキング1位はMYMってチームがあるけどデンマーク人は1人も居ない、シンガポール人とマレーシア人のチームだ。デンマークでは死んだシーンがアジアではまだ生きる。そういうDOTA allstarsをプレイする理由が存在する状況下におかれていたチームが、一ヶ月を切ってから「DOTA allstarsではありません」って告げられた。そこから真面目にdota2やり続けてきた人達に追いつくなんて、どだい無理な話だ。相手は半年やっている。


中国に関してはもう少し酷い。
DOTA allstarsシーンは死に体だ。その落ち込みようは凄まじい。LOLに完全に流れてしまっている。けれども、それはネット上での話だ。ネットカフェ間の集客戦争によって生まれた「中国DOTA allstars」という異様なシーンは今も生き続けていて、web上の集客力では欧州よりも死んでいるのに、シーンの熱量では欧州よりも生きている。DOTA allstarsの大会は常時当たり前の事として行われている。

だから強いチームは強いチームであるほど、DOTA allstarsを好んで去りますだなんて言いださない。そんな状況下でDOTA allstarsで行われるはずだった大会が直前になってDOTA2に変更される。「ハイレベルの内戦で高見に到達した」のが中国DOTA allstarsであり、それをDOTA 2で再現する為にはハイレベルの内戦が必要だった。けれども他の強いチームのメインはあくまでもDOTA allstarsだ。EHomeがDOTA2を高めようにも相応しい相手が居ない。NaViはその点で有利だった。ソビエトdotaの中心人物達はモスクワ5も含めて、DOTA 2に移行している。練習時間だけではなく、練習環境でもアジアとは雲泥の差が有る。

そのような優れた環境下で、反則的に素晴らしい5人の名手が練習を重ねて、強くならないわけがない。おまけに彼らはESportsシーンで勢いのあるNaViという強力なチームに所属し、先の大会で勝った事でモチベーションも非常に高い。分裂と再結成を繰り返してランキングを滑り落ちていった過去のソビエトとは事情が違う。ESWCで僕たちが見た「NaViの優勝」という現実は、彼らの努力が中国の積み上げてきたものよりも上だった、というだけの話でしかない。

もちろん、NaViは優勝して、EHomeは負け、mushiはグループリーグで消えた。
でもそれは、公平な条件下で行われた成熟した大会でNaViが勝ったという話ではなく、突如としてクライアントすら行き渡っていない未完成のゲームに種目が変更されたふざけた大会で、質の高い練習をそれ以前から続けてきた伝説的な名手達が、ただ勝つべくして勝った、というだけの話でしかない。NaViの面々が、成熟したシーンにおいても栄光を手にするだけの力を所持している事は疑う余地もない。けれども、前回の大会にも増して今回の大会は、そういう公平な場ではなかったという事だけは覚えておいてほしい。、dendiやLoHがDTSのタグを背負って成し遂げた事や、Nirvanaタグでpuppyが成し遂げた事の方が、こんな未成熟な大会でのちょっとした勝利よりも、ずっとずっと大きかったと僕は今でも思うのだ。