2012年4月20日金曜日

旅の効能。

旅行を馬鹿にする空気、というものが確かにあった。高嶺の花だったものが庶民の手に落ちてきた。日常から逃亡したい人達の恰好のターゲットになった。そういう人達を指差して、旅などに出ても人は変わらない、旅などに出ても人間は成長しないという事を指摘する正しさというものがあった。けれども、旅は人を成長させる。リカバリー能力を成長させる。旅というものは、人間から日常を無理矢理に切り取ってしまう行為に他ならない。2日であれば2日だけ、3日であれば3日だけの日々が失われ、決して戻らない。旅というものは、失われた日々から立ち直る力を、人間に授ける。日常生活のアクシデントや、自らの失敗により、まとまった時間が失われてしまう事が有る。そのような時に、旅を知らない人間は、時間の浪費に失望し、自らを非難し、傷つき、落ち込み、堕落し、何らかのアクシデントで失った、時間以上の大きな物を、芋づる式に失ってしまう。旅を知る人は、「ああ、これは失敗に終わった小旅行のようなものだ」と、何事もなく日常生活を続ける事が出来る。果たして、僕は旅を知らない。