二月騒動をぼんやりと振り返る。

バスケットボールは5人。
dota allstarsも5人。
一見すると似ている。

けれども、その実体は全く違う。
NBAには戦略を考える監督が居る。トレーニングを担当するコーチが居る。日程や健康を管理するスタッフが居る。そして何よりも控えの選手が居る。13人のメンバーが入れ替り立ち替りプレイする。けれども、dota allstarsは違う。正真正銘5人しかいない。

監督の役割はプレイヤーの1人が担当する。コーチの役割を担うのもプレイヤーの誰か。パスポートや日程、時間の管理をするのもプレイヤー。チームのモチベーションを維持するのもプレイヤーの誰かの仕事。スポンサーと交渉を行うのも、旅券の手配をするのも、全てプレイヤーが行う。もちろん、プロ化した一部のチームでは、専業に近いスタッフを擁しているチームも存在する。けれども、2月騒動の発端となったnth(no tidehunter)というチームは正真正銘5人しか居ないと書ききってもよいチームだった。


そのnthからeeというプレイヤーがkickされたのが2月騒動の始まり。eeはnthというチームの創設者であり、監督であり、コーチであり、ゼネラルマネージャーであり、その他全ての役割を担っていた。そんなeeがkickされた。チームを首になった。

最大の問題は、「カナダ人とは意思疎通が出来ない」というよくわからない理屈。eeはカナダ人で、残りの4名はスウェーデン人。差別的だとか、国粋主義だといった批判を受けて、nthの残る4人は一気に謎の悪名を背負ってしまった。


冷静の1人のシーン傍観者から見ると、eeというpickerの最近の働きは、あまりにも酷いものだった。内容だけを見ると、完全にアウトだった。実を言うと、nthが勝ったdreamhack winterにおいても、nthはほぼ全ての重要ゲームでpick負け、戦略負けしていた。彼等がdreamhack winterでやったことは、pick負け、戦略負けしながらもうだうだと時間を消費し続けて、gdgdの泥仕合に持ち込んだ末に有耶無耶の中で殴ってsiegeして勝っていただけだった。nthが勝っていた頃も、eeのpickと戦略は酷かったのである。当然のこととして、nthはすぐに低迷した。

けれども、その事実を持っても、eeをチームから蹴る理由には足らなかったと思う。nthに必要だったのは、pickerを変更すること。かつてのMYMやkurokyが大会中にpickerを強奪、zenithではiceiceiceが大会中にpickerを強奪、ddtではpickerがプレイせず。DKが大低迷時代から不動の中国三強に突如として化けたのも、pickerの変更によってだ。




なによりも大きな問題は、eeをkickしても、代役が存在しないということ。スウェーデン国籍でフルタイムのプロ(最低でも週30時間は必要)として活動可能で、尚かつeeをkickしてまで加入させたいレベルのプレイヤーは、1人として思い浮かばない。スウェーデン最強プレイヤーのパジャキャットはLGD.intで不動のエースを演じているし、肝心のミラケルは新生ALと新たな契約を結んだばかり。両者共に少なくとも3ヶ月、下手すれば半年以上の契約が残っているだろう。

eeはあれでいて相当なプレイヤーで、スウェーデンにはee以上はおろか、eeと同等のプレイヤーすら残っていない。

その代役が存在しない状況下でeeをkickするということは、eeの監督、コーチを兼ねるpickerとしてのエゴが、kickする以外の選択肢が存在しない所まで肥大化してしまっており、kick以外に選択肢が無かった、ということなのかもしれない。




「pickerをkickするという異常事態」と声の大きなインターネッターは盛んに騒ぎ立てたけれど、同時期にアジア最強のチームからpickerがkickされた事の方が衝撃だった。Orangeのリフォームである。

Orangeは既に日常的にプレイする8名のプレイヤーを抱えていたものの、チームを改造する為に、様々な選手を試し続けていた。zenithのiceiceice、同じくzenithのxFre。マレーオールスターのケシクインバ。

そしてOrangeの総大将であるmushiがiceiceiceとxFreに対して述べたのは「彼等は傑出しているが、シンガポール人とは意思疎通が出来なかった。」というものだった。あれ・・・それって、nthのと同じじゃん。(OrangeはGリーグの予選でiceiceiceをスタンドインでプレイさせてMUFCに負けて中国行きの切符を奪われている。)





最終的にOrangeはMUFCからOhyとNetを獲り、さらに6人目のプレイヤーとしてケシクインバを獲得。pickerであったWinteRをはじめとして、残り全員を放出するという、滅茶苦茶な大改造。これにより、アジアシーンはOrangeに対抗しうるドリームチームを妄想する事すら不可能な1強全弱の地域になってしまった。

nthという弱小チームの御家騒動なんて、取るに足らない三面記事でしかなく、Orangeのcaptain kick、picker kickを含めた総入れ替えの大改造こそが最も大きなニュースだったのだが……所詮アジアは辺境の地か。




eeをkickしたnthはお手頃な代役を一時加入させ、NaViと戦い、なんとNaViに勝ってしまった。あまりにも短絡的だけれど、eeをkickしたnthの判断は正しかった、という事になる。

さらにNaViは直後の対mouz戦において、1本先取の後で「dendiが夜食を食べるから」とdendiをプレイさせず、1-2で逆転負けするという失笑劇を演じてしまった。そして、NaViがリフォーム。




NaViというチームは「valveの100万ドルトーナメント」によって鋳造されたいびつなチームであり、最初からソビエトオールスターだった。取りいぬ島の蝙蝠(中国不在の大会)であったti1優勝後にアートスタイルが脱退するという埋め合わせ不可能なレベルの弱体化をしてもなお、当時のNaViは相対的に強すぎた。

よって、NaViはチームをリフォームする機会を完全に失ってしまっていた。本来のdota allstarsシーンは、強いプイレイヤーならば1年で3チーム、3年10チームを渡り歩くのが標準の、極めて流動的なもの。後出しじゃんけんで強いプレイヤーを最後に加入させたチームが有利。

ところがNaViは2年以上でたったの6人しかプレイしていないという、異常なまでの固定メンバー。老若入り乱れた様々な強プレイヤーを片っ端から取っ替え引っ替え試してはリフォームを繰り返す後発のチームに後れを取るようになってきた。




しかし、NaViにはNaViの問題があった。

ソビエトの人材難である。ソビエトには、僕が明確に「NaViに入るべき」と思えるようなプレイヤーは残っていなかった。そんなNaViが発表した新メンバーはfun1とkuroky。これは酷い。

fun1はempireに加入したばかりの万能タイプ主力プレイヤー。「empireもいいチームになったなースキャンダルさんもさぞかし頑張り甲斐があろう。」とか眺めてたのに、それをいきなり強奪。これでスキャンダルはBAKAプレイヤーからBAKAへと逆戻り。元の黙阿弥。fun1の代役はvigos……v-god、、、。どうせならA-godも復帰させてBAKAプレイヤー帝国にでもなればいいよ。なんか逆に強そうじゃん。BAKA god 帝国。・・・もうだめだempireもうだめ。スキャンダルさんもかなしい。

しかも最後の1人はkuroky。kurokyって。kuroky抜けてmouzはどうすんの。「わー、pasがmouzに加入するのか!これでmouzは勝つる!pasは今欧州で一番熱いプレイヤーの1人だから!」とかドキドキしてた僕のワクワクを返してください。pasさんかわいそう。pasさん不憫。




「○○があなたはkurokyに匹敵すると言っていましたが?」

    「彼なりの冗談でしょうHAHAHA」


という受け答えがパターン化していた当時のdota allstarsシーン。「○○は部分的にはKuroKyを超えている」というパターンもあった。そのkurokyが後衛を務めてsolo midにdendiって酷い。終わった。kurokyの場合は往年の名スターってわけじゃなくて今も明らかにどうしようもないくらい上手い。VPの解散で無限の名声値こそ曇ってしまったけれど、NaViくらい出来上がってるチームに入れば明らかに強い。fun1とkuroky加入後のNaViはnthやEGを木っ端微塵に粉砕。アジアばかりか欧州シーンまで1強時代に逆戻りしてしまった。

せっかくのfun1加入でやっと頂点が見えていたempireは再び終了。北米の場合は終了どころか最初から終わってる。北米が戦う為には何が何でもリフォームが必要。ただでさえ選手層が薄いのに、強プレイヤーが3チームに分散している状況では他の地域に太刀打ち出来ない。

EGのロースターなんて本当につまらない。liquidなんてサイコロの出目がよくて勝ってるだけ。dignitasに至っては勝ってすらいない。valveのお膝元なおかげで中途半端にスポンサーがついてチームが安定してしまう状況が完全に逆効果になってしまっている。

安定が逆効果になってチームを改造出来なかったNaViがこれだけの事をやったのに、それ以下の地域で3チーム安定とかどうしようもない。パジャやミザがEGに居た頃は北米は見るに値する地域だった。今の北米は馴れ合い仲良し同好会とまでは言わないけど、他の地域と戦うことは出来ない。ただの有名人の集まり。知名度を利用してネットで稼いでるゲームがちょっと上手なネットスターの集団でしかない。プロスポーツチームじゃないよ。


naviに負けるnth。
nthから蹴られるee。
そのnthに負けるnavi。
naviにfun1とkruoky。

それと同時進行したOrangeのリフォーム。
二月騒動はストーブリーグとしては熱かった。

dota allstarsシーンでは後出しじゃんけんで強プレイヤーを加入させられる流動的な後発のチームが圧倒的に勝ちやすい。valveの100万ドルという賞金とそれに匹敵する宣伝費によって捏造されたこれまでのdota2シーンがあまりにも異常だっただけ。





さあ、旧正月のブレークも終わり、パジャもアジアサーバーに帰還して、iG対LGD.intはもうすぐそこ。抜き差しならないbo5の盛大決祭。正月明けのdotaシーンは最初からクライマックス。そういえば、LGD.intはスウェーデン人、デンマーク人、カナダ人、ロシア人、アメリカ人。あれれ、意思疎通って何だっけ?