一ヶ月が5時間くらいしかない。

貴重な時間を大切に使おうなどと言ってみたところで、一ヶ月が5時間では限界がある。その5時間もまとまっていればまだ生きようがあるだろうが、細切れの5時間となるともはや手の施しようがない。僅かに5時間だけ人の性質を取り戻し、ほかの時間を得体の知れない生き物として過ごす。その満遍なく長い魑魅魍魎として生きた、一月の大半を占める長い時間は、自らを人の身分から遠ざけ、得体の知れない所へと僕を連れ去ってしまう。僅か5時間、細切れの5時間に、そこから懸命にはいずり出て、さあ人間をやりましょうと気張ってみても、淡い願いは皆砕かれる。人間になりたいという夢はもはやかなわず、人でありたかったという願いは元から人でなく、ただ自らがまるで人間のように見える歪んだ水面の見えるところで、愛しい人の枯れた笑い声や澄んだつぶやきに耳を向け手で土を掘り土を食う、そんな低層は空より高い井戸の底よりまだかなた上。僕の死んだ人間が死んだ5時間に死んでゆく。