魔法の刀

ある日突然、一本の刀が魔法の力を帯びて、人間を斬り殺し始めた。ある者は四肢を落とされ、ある者は喉を突かれ、またある者は額から股間に向けて綺麗に斬り分けられた。一本の刀は神出鬼没、倉敷で1人の老婆の胴体を斜めに切り分けた30分後には札幌で乳飲み子を抱く母親をその子もろとも斬り殺し、その僅か10分後には上野のカプセルホテルで仮眠を取っていた男の心臓を突いた。ここならば安全だろうと洋上に逃げ、船の上で生活していた一家は男を残して皆斬られ、この国を出れば安全であろうと地球の裏側アルゼンチンのコンドミニアムで避難生活を満喫していた裕福な若い女はその一室で、胴体の上に首が乗る無惨な姿で発見された。一本の刀は町で人を斬り、山で人を斬り、海でも空でも人を斬った。それも1人や2人のことではない、魔法の力を帯びたその刀は、毎日百人以上を斬り殺し続けた。1年で5万人、10年で50万人もの人が刀に斬られて死んだが、人々の生活と私達の社会は何も変わらずそのまま続いた。