傘を差して雨の日に横断歩道を渡れば、その傘は誰かの青信号を遮る。

猟銃を持って地に伏せて引き金を引けば、その銃弾は誰かの太ももを貫く。どこで銃を手に入れたのか、なぜその場所で地に伏せたのか、自らさえもその問いに答えを用意することは出来ない。ただ道があり、ただ人が居て、引き金にかかった指がわずか数センチ動いた。それだけの事で銃弾が飛び、それだけの事で鮮血が飛んだ。

傘を差して雨の日に横断歩道を渡れば、その傘は誰かの青信号を遮る。赤が消え、緑が点り、奇妙な音楽が流れると同時に人々は歩き出したが、傘に視界を遮られた孤独な女は僅か数分の一秒だけ歩き出すのが遅れた。ただ雨雲が空に浮かんだというだけの理由で降った雨は傘を呼び、女の人生を僅かに狂わせたが、すぐに誰もが歩き出し、雨も止んでやがて乾いた。