雨上がりにまた。

夜は更けて雨は上がって息をゆっくくりと大きく吐いてもただ空気が逃げてゆくだけ。人体模型のドクロの手のようにゆったりと曲がって宙に飛び出た左手の四本の指を右手で軽く握ってみても、人のぬくもりは伝わらず。冷たい心の心ない人の、ただ指先が小指を撫でる。おそるおそるに喉から手を入れ胸の中をそっと探れば、怒りと憎しみ強烈な憎悪と不快感だけがそこにあるのに、外のガワはもう抜け殻で、肩を落として左の小指をそっと撫でる。血の通ったケセランパサランとして壁も抜かずにぼんやりと宙を漂い続けるよりも、怒りと憎しみあるいは絶望感に突き動かされている方が幾分かはマシだろうと再び喉をこじ開け胸の内から、そこに転がる数え切れない何かしらのうち一粒を、つまんで取り出してみようとするが、指先が何かに触れた瞬間それは頬骨にさっと血が上る感覚となって涙腺を押し上げると同時にさらさらと消え去り失われ、指先から離れた瞬間に結合して再びその、白い塊に姿を戻す。他のものならばと手を進めるが、次の何かも同じように消え、そっと肩から頬へと鼻筋を通って浮き上がる感覚に恐れをなして、僕には涙を流す権利などないと自らを罵り、諦めて腕を引き上げようとすれば、醜く乾いた指先までもがさらさらと消えて溶けなくなり、慌てて腕を引き抜くと、手首から先、肘から先、肩から先も同じように消えた。消えて、消えて、どんどん消えて、わずか一ミリ離れた途端に、再びその姿を取り戻す。全てが僕の責任であり、全てが自らあるにもかかわらず、もう二度と触れる事は出来ない。手に取ることも見る事も、思う事も考える事も出来ず、ただ胸の中に浮き溜まり続ける。肺に4割空気を入れて、息を止めてモニタから目をそらして右斜め焦点を無くして固まり25秒後、諦めうなだれ鼻から吐き出す。沈痛さにも見捨てられ、もはや何も残ってはおらず、体は軽く心は軽く、不平不満を口にすることもなく、椅子から転げ落ちることも立ち上がることも出来ず、ただ浮いている。地面は遠く、空は遠く、愛する人はどこにも居ない。