2017年7月26日水曜日

サカナバッカの神謝罪に見る、謝る狂気と許す狂気。

 先日、サカナバッカという魚屋さんがインターネットで炎上した後に謝罪し、その謝罪が神謝罪であると、インターネットで大絶賛されました。いったい、サカナバッカはなぜ炎上し、そしてなぜ、サカナバッカの謝罪は神謝罪であるとインターネットで大絶賛されたのでしょうか。



 サカナバッカの炎上理由を一言で表すならば、「クロマグロを売ったこと」です。それだけです。ただし、それだけではありません。サカナバッカが炎上したのは、クロマグロを売ったからではないのです。事実、我が国のいろんな町のいろんなお店で、クロマグロが売られています。けれども、それらは炎上しません。我が国においては、うなぎも、まぐろも、くじらも、いるかも、象牙も鼈甲も、自由に売り買い出来るのです。なのに、サカナバッカは炎上しました。つまり、サカナバッカの炎上理由は、クロマグロを売ったことではありません。では、なぜ、サカナバッカは炎上したのでしょうか。








サカナバッカの炎上理由は、大きく分けると3つです。

1,産地偽装。
2,漁法偽装。
3,虚偽説明。




サカナバッカの炎上は、「緊急特売!天然生本鮪 豊漁につき、シーズン最安値で大特化!!100g498円~」という、Facebookにおける鮪販売の告知に対してついた、市原岳洋さんの「メジマグロですか?」という問いから始まりました。メジマグロとは、産卵可能な年齢に達していない、クロマグロの幼魚のことです。概ね、20kgくらいまでの本マグロを、メジマグロと呼ぶそうです。



「長崎県壱岐の釣り物(魚体40キロ以上)を扱ってます。」
というのが、市原岳洋さんの問いに対するサカナバッカの回答でした。




ここで最も重要なのは、サカナバッカの炎上理由です。
サカナバッカが炎上したのは、クロマグロを売ったからではありません。
サカナバッカが炎上したのは、市原岳洋さんの問いに対して、「長崎県壱岐の釣り物(魚体40キロ以上)を扱ってます。」と回答したからです。もう一度確認しますが、我が国において、クロマグロを売って炎上することはありません。何故ならば、私達の政府がクロマグロの販売を許可しているからです。うなぎだって、マグロだって、象牙だって、鼈甲だって、全部合法です。クロマグロの漁獲、並びに販売は完全な合法であり、正しい商売です。クロマグロは、我が国のどこの町でも購入可能です。合法的に食べられます。




サカナバッカが炎上したのは、クロマグロを売ったからではありません。
「長崎県壱岐の釣り物(魚体40キロ以上)を扱ってます。」
と回答したからです。



この、サカナバッカの回答には、3つの問題が潜んでいました。
それ故に、サカナバッカはインターネットで炎上したのです。






1,産地偽装。
「壱岐海区では、マグロ漁をしている船は居ません」という、壱岐でマグロの一本釣りをしている漁師のコメントが即座についています。壱岐、対馬を中心に30kg以上のクロマグロが自主規制されており、壱岐でマグロを釣っている船はない、どの組合にも壱岐のマグロは流通していないという事実が、様々な人の口と手によって、淡々と並んでいます。サカナバッカは、壱岐のマグロではないものを、壱岐のマグロと主張したのです。

サカナバッカは、産地を偽装しました。




2,漁法偽装。
サカナバッカは、40キロ以上の釣り物のクロマグロ(本マグロ)を、「豊漁につきシーズン最安値で大特価!!」と称して、100グラム498円で売っています。それに対する最も冷静な指摘は、「40キロ以上の釣り物のクロマグロは、そんな値段では流通しない。」というものでした。一本釣りの国産クロマグロは、いくらクロマグロが安い時期であったとしても、100グラム498円などという値段で販売されるようなものではないのです。ですから、「巻き網によるものであるか、クロマグロの幼魚であるメジマグロの何れかであろう」という指摘が成されたのです。

また、40キロ以上の釣り物の国産クロマグロが、100グラム498円などという価格で市場に出回る代物ではないからこそ、「メジマグロですか?」というコメントがFacebookについたのです。

サカナバッカは、漁法を偽装しました。







3,虚偽説明。

サカナバッカはfacebook上で、漁業関係者や、実際にマグロを釣っている人の問いに対して、詳細な回答を行いました。そこで、サカナバッカが売ったマグロは、「長崎県内(九州本土側)の漁師が壱岐沖まで出漁し、一本釣りによって漁獲」「漁獲されたクロマグロは長崎県内の本土側の港に水揚げ」ということを「確認いたしました。」としています。そして、「壱岐沖で一本釣りによって漁獲されたことを確認しております。」と繰り返しています。

このサカナバッカの回答は、一週間後にサカナバッカの運営企業である株式会社フーディソン代表取締役山本徹名義で出されたお詫びとお知らせの中で、保身の為の虚偽説明であった事が記されています。


サカナバッカは、保身の為に虚偽説明を行いました。







「メジマグロですか?」
のコメントから10日後。

サカナバッカの「ご回答」
から一週間後。


事件に対する謝罪がフーディソン社からの出ます。
そしてその上社罪はネット上で、神謝罪と大絶賛されるのです。










いったい、フーディソン社は何をどのように謝罪したのでしょうか。そして、フーディソン社による謝罪の、どこが神謝罪であると、人々に広く評価されたのでしょうか。何を持って、神謝罪であるとされたのでしょうか。まず、フーディソン社の3つの炎上理由、産地偽装、漁法偽装、虚偽説明、これらそれぞれに対して、フーディソン社がどのように謝罪したのかを、見て行きましょう。











1,産地偽装疑惑に対して。

「調べました。」

サカナバッカ(フーディソン社代表取締役山本徹)は、産地偽装の疑惑に対して、「調べました!」「わかりませんでした!」と回答しています。それが、産地偽装疑惑に対するフーディソン社の回答の全てです。産地偽装疑惑に対する回答はありません。産地偽装に対する謝罪もありません。真相の究明もありません。「調べました」それが、産地偽装疑惑に対する、フーディソン社の神謝罪です。

フーディソンは長い長い謝罪の中で、「私達は偽装していない」「荷受会社に荷主名を照会したところ、荷主名に関する回答は得られず」「だから私達に非はない」と述べています。「現地の漁師が禁漁しているこの時期、福岡市中央卸売市場で釣り物のマグロは無い」という指摘は無視した上で、この謝罪文の後に再び成された「この時期、福岡市中央卸売市場で釣り物のマグロは見ない」という指摘も無視です。

その上で、「重ねてお詫び申し上げます」と彼等は平身低頭謝っています。いったい、何を、誰に、お詫びしているのでしょうか。






2,漁法偽装疑惑に対して。

「調べました。」




漁法偽装に関しても、フーディソン社サカナバッカの態度は全く同じです。釣り物の国産クロマグロは100グラム498円では提供出来ないという論理的な指摘に対して、サカナバッカの回答は、「調べました。」それだけです。なお、調べた結果、わからなかったそうです。

いったい、何を調べたのでしょうか。僅か一週間前に、2日もかけて回答した文章の中では、確認しました、確認しましたと繰り返した事が、僅か一週間後、「調べました!わかりませんでした!」へと後退しています。


なお、サカナバッカは「※荷受会社に荷主名を照会したところ、荷主名に関する回答は得られず」として、全ての調査を打ち切っています。フーディソン社は「調べました」と口では言いながら、調べていないのです。調べる気もないのです。フーディソン社にあるのは、謝罪したいという強い気持ちだけです。フーディソン社山本徹の、人々に広くお詫びしたいという、強い意志だけです。

謝罪すると、どういう良いことがあるのでしょうか?それに対する回答は明白です。サカナバッカのイメージダウンを止め、彼等のイメージが上がる。フーディソン社の利益に繋がる。だからこそ、フーディソン社は全ての疑惑に対して一切回答することなく、「調べました!」「わかりませんでした!」「重ねてお詫び申し上げます」と繰り返しているのです。





3,虚偽説明疑惑に対して。

「ごめんなさい」


「初期の調査で誤った情報をお伝えしたことならびに、特定まで至らなかった点が生じたことにつきまして、重ねてお詫び申し上げます。」虚偽説明に対しては、わりときちんと謝っているような印象を受けます。

けれども、実は、フーディソン社の"お詫びとお知らせ"は、サカナバッカがFacebook上で2日かけて出した回答と全く同じです。フーディソン社は「誤った情報をお伝えしたこと」をお詫びしていますが、サカナバッカのFacebook上での回答と、フーディソン社の"お詫びとお知らせ"に書かれていることは、全ての点で同じです。差違は見当たりません。




サカナバッカは長崎だと言い、
フーディソンも長崎だと言っています。

サカナバッカは一本釣りだと言い、
フーディソンも一本釣りだと言っています。

サカナバッカはクロマグロだと言い、
フーディソンもクロマグロだと言っています。

サカナバッカは本土側の漁港だと言い、
フーディソンも本土側の漁港だと言っています。




おかしな話です。サカナバッカが言ってることと、フーディソン社が言ってることは、全く同じです。長崎と長崎。一本釣りと一本釣り。本土側漁港と本土側漁港。そしてクロマグロと、クロマグロ。にもかかわらず、フーディソン社は「初期の調査で誤った情報をお伝えした」と言っています。一体、何が誤った情報だったのでしょうか。






事の発端。
「メジマグロですか?」
というFacebookについたコメント。

サカナバッカの回答と、
フーディソン社の回答の、
唯一の違いはそこだけです。





サカナバッカは40kg以上のクロマグロだと言い、
一方で、フーディソン社はクロマグロだと言います。
ここだけが、唯一の違いです。

「初期の調査で誤った情報をお伝えしたこと」
フーディソン社山本徹は書きました。




「メジマグロですか?」
それが全てのはじまりでした。

サカナバッカはメジマグロではないと言いました。
フーディソンはクロマグロですと言いました。
メジマグロも、クロマグロです。




「初期の調査で誤った情報をお伝えしたこと」
フーディソン社山本徹は言います。


「初期の調査で誤った情報」
とは、いったいどこに存在しているのでしょうか?

「40kg以上のクロマグロ」という情報が、
なぜ「クロマグロ」になったのでしょうか。






サカナバッカの説明と、
フーディソンの説明の、
違いは唯一そこだけです。

サカナバッカはメジマグロではないと言いました。
フーディソンはクロマグロですと言いました。
違いは唯一そこだけです。




「メジマグロですか?」
全てはそこから始まりました。














では、なぜ、疑惑に対しては一切応えず、全く関係の無いところで「調べました!わかりませんでした!ごめんなさい!」を只管繰り返すだけの、フーディソン社の酷い"お詫びとお知らせ"が、インターネット上では神謝罪だと、大絶賛されたのでしょうか?インターネットの声を拾ってみましょう。





「画像やpdfではなく、ウェブサイトでお詫びしている!」
「経緯が詳細に書かれている!」
「はてブのボタンがついている!」
「日本語におかしなところがない!」
「親会社の社長名義になっている!」
「プレスリリースとしてだされている!」
「お詫びにTwitterシェアボタンが付いているのなんて初めて見た!」



インターネットは口を揃えて言います。
神謝罪だ、と。
見直した、と。
好きになった、と。




私達は、そんなインターネットに生きています。
私達は、そんな時代を生きています。










トラブルはチャンス!
誰かがいいます。


謝罪は最大のチャンス!
彼等に言わせるとそうです。




問題が発生したとき。
その問題に対する対応こそが、評価を上げるチャンスです。

謝罪せねばならない事態に陥ったとき。
そのときこそが、評価を上げる最大のチャンスです。



そんなことは、もうみんな知っています。
インターネットは、チャンスの世界です。
毎日なんらかの問題が発生し、
毎日誰かが謝っています。




みんな、謝罪の素人です。
問題対処の素人だし、
チャンスを活かす素人です。



きちんと謝れる人なんて、滅多と居ません。
「ごめんなさい」
と口では言いながら、
自己正当化をしたいだけの人達で、
世界は埋め尽くされています。




今日もまた、広いインターネットのどこか知らない寂れた場所で、何らかのトラブルが発生し、寄って集って誰かを責めます。そしてたまらず口を割ります。「ごめんなさい、でも、私は悪くない。あいつらが」


それでも、まだ、ましなほうです。
絶対に謝らない人。
発言を消して無かった事にする人。
人だけではありません。
公人だって、企業だって。
印象操作だ。差別だ。
誰もが言います。
みんなそうです。

そんな人達で、僕等の世界は満ち溢れています。

そうです。
世界はチャンスです。
チャンスに満ち溢れています。




インターネットが、酷い謝罪で満ち溢れている空間であるということは、インターネット上で毎日のように行われる、酷い謝罪のパターンを解析し、そのパターンから全てを少しだけずらせば、その謝罪は、神謝罪として奉られるのです。

「これは酷い謝罪だ」
「自己正当化したいだけ」
「全然謝ってない」
「そもそも謝る気ないだろ」

インターネットに発生する謝罪に対して、口汚く暴言を浴びせかける人達は、その酷い謝罪のパターンから少し外れた謝罪を見つけると、喜び勇んでその謝罪を大絶賛します。「検索避けの為のjpegされた謝罪画像じゃなくて、ウェブサイトで謝罪してる!」「謝罪している人の名義が出ている!しかも社長だ!」「会社のトップページからリンクが張られているぞ!」「Twitterのシェアボタンまである!」

ちょろいもんです。




そう。
トラブルはチャンスです。
謝罪は最大のチャンスです。
サカナバッカはビジネスチャンスをものにしました。
それだけの話です。


「メジマグロですか?」
それに対してサカナバッカが行ったのは「違います」という虚偽説明。フーディソンが行ったのは、なるべく誰にも気がつかれないように、メジマグロですと暗に認めることだけ。インターネットはもはや、責任者に土下座してもらいたいだけの、クレーマー集団に成り果てたのです。フーディソンの責任者が土下座をしたので、インターネットはそれを神謝罪だと称えたのです。素晴らしい世界です。素晴らしい時代です。










重要なのは、誰も謝罪など求めていなかった、という点です。

「メジマグロですか?」
「一本釣りですか?」
「どこの漁港ですか?」
全ては単純な疑問でした。

 それに対する回答がフーディソン社から行われていれば、様々な事が明らかになったでしょう。議論も進んだでしょう。メジマグロの何がいけないのか。巻き網の何がいけないのか。なぜ我が国の政府ではなく、九州の漁師がそれぞれ漁業協定を設けて禁漁をしているのか。けれども、そんな僕等の進歩は、実現しませんでした。全てはフーディソンの「調べました!わかりませんでした!」という土下座によって、打ち消されたのです。そうです。フーディソンは最後に、重要な一言を付け加えました。「もうしません」。これが巨大なクレーマー集団と化した、インターネットの溜飲を下げたのです。誰も、謝罪なんて望んでいませんでした。ただ、事実を知りたかったのです。フーディソン社は目的を達成します。謝罪というチャンスを活かすという、彼等自身の目的を。それはwin-winの関係でした。インターネットは、誰かの土下座を見たかったのです。それを上から見下して、大仰に許してやりたかったのです。win-winの関係でした。めでたし、めでたし。




 フーディソン社は大量の情報を持っています。少なくとも、彼等が「40kgのクロマグロである」という虚偽説明を行ったクロマグロが、本当は何グラムのマグロであったのか、そして何匹だったのかという情報はフーディソンが所持しています。また、それがどのような価格でフーディソン社の手に渡ったのかも、彼等は知っています。にもかかわらず、かれらは所持している情報を一切出さずに、誰も追求していないような条項に対して「調べました!わかりませんでした!」を只管繰り返し、「メジマグロですか?」という問いにすら、「40kg以上のクロマグロであった」という虚偽説明を遠回しに認める事で、暗に回答しただけです。そして、彼等は壊れた機械人形のように平身低頭土下座し続け、その姿は日本中のインターネッターを、歓喜の渦に巻き込んだのでした。





インターネットは地獄です。

魑魅魍魎が巣くう世界です。人々は日々、自らが正義の権化となれるジャスティスチャンスを探し求め、憤り、やがては激昂し、糾弾し、そして得意気に許すのです。フーディソンの何も謝っていない謝罪を神謝罪だと騒ぎ立てた人達は、みんなそうです。地獄の悪鬼です。彼等が要求していたのは、謝罪する人の態度問題。責任者が土下座をするかどうか、その一点でした。彼等が評価していたのは、責任者による土下座だけでした。だれかの土下座を横から見て、「俺は許した!」と勝手に許すのは、とても気持ちのいいことなんでしょう。真摯に謝っている演技をしていれば許される。素敵な世界ですね。

「責任者をだせ、責任者を。」
「それが謝る態度か。謝罪する態度か。」




インターネットという総体が、強大な暴徒の集団と化したそんな時代だからこそ、フーディソンのお詫びとお知らせはこの世界において、神謝罪とされたのです。これがインターネットです。ここがインターネットです。







本当に必要なのは、謝罪ではありませんでした。
本当に必要だったものは、土下座ではありませんでした。
事実です。いくつかの事実です。フーディソン社山本徹が、謝罪機会という最大のチャンス到来に際し、「これは握りつぶそう」と決断した、幾つかの、小さな、簡単な、事実だけでした。誰が謝罪を求めたんでしょうか。それは、インターネットです。誰が土下座を求めたのでしょうか。それは、インターネットです。誰が、神謝罪と奉ったのでしょうか。それも、また、インターネットです。




「メジマグロですか?」
そうですね。
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