2018年7月31日火曜日

The International 2018 プレイヤーレビュー

毎年恒例のプレイヤーレビューですが、今年ほどつらい年は記憶にありません。何故ならば、この一年間のdota2シーンは、dota allstars16年の歴史の中で最悪の一年だったからです。

今年のバージョンの勝者になるはずだった、世界最強のmid lanerであるEGのSumaiLは、最悪のチームマネジメントの犠牲者となってmid laneから居なくなるし、同時代にライバルが居らず、歴史に挑んでる段階にあった光武帝レソリューションはでたらめなコーチの被害者となり低迷した挙げ句に耐えかねてチームを離脱後に輝きを取り戻す始末。LGDはトップシーンにおけるワーストプレイヤーを論功行賞の為に昇格させて低迷し、VPは勝てば勝つ程に自ら武器を投げ捨てて弱くなり続けるという酷い末路を辿りました。全てのeSportsプレイヤーの中で第一位の生涯賞金額を誇るkurokyは、「eSportsは勝ち負けの為ではなく、美意識の為に存在する」と全盛期kurokyである事を辞めて茶聖化してしまい、Liquidという最強チームは最強チームでありながら、100万ドル規模の大会であっても勝ち負けにこだわらずに戦うという姿勢を明確してしまいます。

実を申し上げると、このような問題点は現在ではほとんど解決しています。この一年間は史上最悪のつまらない一年間だったけれど、幸いにして今日の時点では面白いdota2シーンが戻ってきています。されど、わたしのプレイヤーレビューは一年間のプレイヤーレビューです。困りました。困っています。困っている中で書いていきます。







◆星5
・miracle-

プレイヤーレビュー史上初めての星5二連覇。最強アクションゲーマーという出自を持つmiracle-のミクロを見てしまうと、他のプレイヤーのミクロがmiracle-と比較して数段階劣っているという事実が浮かび上がってしまう為、dota2シーンを見るのがつまらなくなってしまうという諸刃の剣。世界最強のポジション1も、世界最強のポジション2も、世界最強のポジション3も、miracle-には遠く及ばない。現段階において3つのポジションで世界最強のプレイヤーである事は疑う余地のないところ。

miracle-が一人で誰も居ないレーンクリープだけの相手からラストヒットをとるだけのゲームこそがdotaのオールスターズマッチ。文字通りのone man dota allstars。長く「歴史上最強プレイヤー」という称号を維持し続けたrtzから、その看板を既に奪い取ったと見るのが正しいだろう。dota16年の歴史の中で、断トツの最強プレイヤー。後の時代に生まれたが故に最強なのではなく、同時代における傑出度においても、rtz、kuroky、dendiの三者を凌ぐ、相対的にも絶対的にも時代的にも全て最強の、問答無用の最強プレイヤー。

SumaiL、sccc、レソリューションという、miracle-を上回る部分を所持したプレイヤーが、揃いも揃ってチームマネジメント問題で低迷した為、miracle-時代を止める事の出来るライバル候補すら見当たらない一年間だった。そして、そのmiracle-を止めたのが他ならぬkurokyの「私達は賞金100万ドルレベルの大会では勝ち負けでは無くて美意識を追求します」という姿勢であり、世界最強のmiracle-が負けても、それはkurokyが勝ち負けを度外視して美意識を追求しているが故に負けたのだという展開になってしまい、「最悪の一年」を象徴する最強プレイヤーだった。

miracle-に非ずは、dotaプレイヤーに非ず。dotaの最強プレイヤーを問われたら、一切の躊躇なく即答できるいい時代。Liquidというチーム自体が強すぎることもあり、ti8後に発生するであろう再編により、世界中にドリームチームが複数生まれたとしても、miracle-時代はあと1年は続くだろう。miracle-の星5は、二連覇ではなく三連覇である。





◆星4

・ACE

この一年。2017~2018というシーズンが、誰のシーズンだったかと問われれば、ACEである。極めて平凡なプレイヤーでしかないACEが、side solo carryという10年前のdota解釈を復活させたppyによって、世界的な名手を全て踏みつぶす所から始まった一年だった。

マップ改変を含むpatchにより、武器となる戦略を悉く奪われてもなお、ppyに託されたタスクを完璧とも言える非常に高い成功率でこなし続け、個としての能力は極めて低いにも関わらず、他のどんなプレイヤーよりも強く見える、奇跡的なと言ってよい内容を残し続けた。

このレビューはあくまでもプレイヤーレビューなので、プレイヤーとしては平凡なppyの名前をあげる機会には恵まれないが、決して強いとは言い難い平凡なプレイヤーであるにも関わらず、secretの最強プレイヤーは断トツでACEという状況を作り上げたのは、ti7後のsecretを即座に勝てるチームとして完成させ、2017年こそがppyの全盛期なのではと思ってしまうほどの会心のリプレイを残し続けたSecretを率いる、puppey the Destroyerの手腕は素晴らしいものだった。

トップシーンでは通用しないはずのACEが、「世界で勝てるチームのポジション1」としてsecretを文字通りcarryする形でトップシーンでのキャリアを開始し、その勢いは最後まで衰えなかった。dotaは未だ、極めて平凡で魅力の無いプレイヤーでも、工夫と努力次第で世界で勝ててしまう、素晴らしいゲームだと思う。

プレイヤーとしての特色としては、建物を殴るというゲーム解釈をnotailから引き継ぎ、失敗の少なさと小ささではravenに次ぐ地位にある。生み出せるリターンの規模こそ小さいタイプのプレイヤーではあるものの、ACEよりも大きなリターンを安定して生み出せるプレイヤーは片手で数えて事足りる知恵度にしか存在していない。

残念ながらpatchにより、時空を超えて蘇ったside solo carryという斬新な地位は失ってしまったものの、ACEが星4筆頭に居るのは、patchでside solo carryを完全に潰されてからも、世界四位相当のSecretというチームにおける最強プレイヤーであり続け、トップシーンに足跡を残し続けることに成功したが故である。

本来ならば星4筆頭に置くようなプレイヤーではないが、世界的名手の多くが、半年間行方不明になるような特殊状況に助けられたとは言え、この一年はACEの一年だった。




・マイコン

scccが手にするはずだったti7のMVPを、newbeeの酷いpick&banによって棚ぼた式に手に入れてしまったti7のMVPは、この一年間も強かった。kurokyとfataで勝つという異常なチームだった5jangoの、臭いのしないパクチー程度の添え物でしかなかったあの日のマイコンは、もうどこにも存在しない。他のライバルの失速もあって、世界最強のポジション3の座を、一年通じて維持する事に成功した。

ただし、圧倒的に世界最強というわけではない。pickプールやプレイスタイル面では、9pasの方が面白い部分もあり、fata-はずっと素晴らしかった。未だにdota allstarsはポジション3が強いとチームが強く見えるという単純なゲーム。昔は添え物だったという出自が故のスケールの小ささこそ最近は気にならなくなったものの、リターンのとり方は唯我独尊タイプのそれではなく、1人でゲームを勝利に導く能力は他のプレイヤーよりも低いものの、dota allstarsは5人でやるゲーム。

Liquidの塩。
塩、The solt。
マイコンである。




・fy

fyが3人居ればというのは、今も尚LGDにとっては絶対に叶わぬ夢。前半期をポジジョン3で過ごし、後半期をポジション4としてプレイしたが、共に素晴らしい内容でポジションコンバートは完全に成功していた。チームマネジメントの犠牲になる形でポジションを再び4に戻されてからも、fyというプレイヤーが持つ個性の不安定さを感じさせぬ安定感でLGDを世界最強チームへと押し上げる事に成功した。

ポジション3で強く、ポジション4で強く、ポジション5で強く、pick&banが出来てキャプテンも出来る。もはやキャプテンfyは、中国最大のタレントなどではなく、現代シーン最大のタレントと言ってよい。あの日からずっと実は最強であり続けたfyが、チームマネジメントの犠牲になることなく、順風満帆のキャリアを過ごせていたのならば、中国は今のような惨状に陥っていなかっただろう。

プレイヤーとしての個性は今のバージョンに向いていないが、そこはfyである。メタというのはレベルの低いプレイヤーの間で流行っているただの流行でしかなく、一部の特別なプレイヤーはメタというくだらない低次元の流行を完全に無視することが出来る。そしてfyは特別なプレイヤーである。

fyが世界最強チームのキャプテンとしてThe Internationalに挑むのはこれが二度目。前回はきっちり優勝している。xiao8の居ないシカゴならば……、果たして。





◆星3


・rodJER

VPから消去法で選ぶならばぎりぎりでrodJER。VPは前任者のlilで十分に強かったと思うし、naviが強かったのは蘇生者sonneikoというCIS史上最強のキャプテンに率いられていたからで、rodJERの功績は決して大きくはなかった。

とは言え、pickプールが0にまで落ち込んだ経験を持つlilのプレイヤー特性的な問題により、VPに存在していた戦略的な足枷を、左右に対する意識が高く、心も強い、平均的なポジション4としての特性を持つrodJERが取り除いたのものまた事実。9pasが現在のバージョンに少し合わない感じを醸し出していることもあり、VP筆頭となるとrodJERでいいのかな、というあくまでも消去法の星4つ。正直rodJERはそんなに強くなかったし、とても苦しい。

不幸にもVPは迷走してしまい、2018年の8月を世界最強チームとして迎える事は叶わなかったものの、それはrodJERの責任ではなく、rodJERの関われない所で発生したチームマネジメント上の問題。まだVPには大量の伸び代が残っています。





・9pas

本来ならば星4に置くべきプレイヤー。
バージョンに嫌われた。
VPが迷走してしまった。

VPは2017-2018のサーキットポイントランキングで一位だったのだけれど、それでもこの一年間のVPは世界で最も見応えのある負け役でしかなく、終ぞ能動的に勝てるチームにはなれなかった。それもこれも、picker変えすぎ。picker適正の無い人にpickerやらせすぎ。コーチが戦略に無駄に介入しすぎ。プレイヤーの個性を殺しすぎ。

9pasもまた、VPが魅力を失っていくのと同時にプレイヤーとしての輝きを失っていったものの、かつてはポジション1をやっていたという出自を思い起こさせるような内容で度々チームをcarryしていたし、バージョンによりメタの変化にもきっちりと対応出来ていた。

敗色濃厚なゲームを1人で互角の展開へと戻すという、かつてポジション3に要求されていたタスクこそ少し弱いものがあるが、今のdota allstarsは5人でプレイするゲーム。チームメイト全員の位置を把握する目の良さ、敵の挙動を推測する頭の良さは、VPが9pasの長所を宝の持ち腐れとして殺す戦略を選択し続けてなお、「VPのリプレイに外れ無し」というVPの確かさを支える最大のプレイヤーだった。VPは確かに最強でした。最強だったんです。




・ヤプゾル

「けったいなことをやります!」
という道化でしかなかったヤプゾルも今は昔。

ヤプゾル躍動せずしてsecretに勝利なしとまでうたわれる、世界で最も見応えのあるポジション4へと成長した。依然としてヤプゾルは曲芸師であり、強い弱いという外側に足を置いている部分を持つプレイヤーであるが故に運用が難しく、高い頻度でゲームから完全に消えてしまうのは大きくネガティブなポイント。ppyの無茶ぶりに対応しきれず負けていくゲームが多い。

とは言え、相手を煙に巻くミクロ自慢のプレイヤーという特性を持ちながら、抑揚の効いたプレイが出来るのが最大の魅力。あの手先の器用さだけが取り柄の自信過剰なヤプゾルを、隙の無いポジション4に育てたppyは凄い。育ったヤプゾルはもっと凄い。

チーム力的にsecretは厳しい立ち位置にあるものの、2017-2018シーズンを決定的な失速を迎えることなく乗り越えた、最優秀チームsecretの最優秀プレイヤー。




・abed

Fnaticに加入する以前に既に世界で戦えるプレイヤーとしての地位を完全に確立させていたabedですが、envyはそれに満足せず、abedをdendiに、跳刀跳刀に、そしてsingsingにしようと試みました。その試みは現段階においては成功を見ておらず、バージョンに右往左往させられた影響もあり、envyとabedは一年間を無駄に過ごしたという見方も不可能ではありません。

けれどもそんな一年をFnaticは、アジア3強の末席の座を決して誰にも譲ること無く切り抜けました。残念ながらabedが革新的な進化を遂げることはありませんでしたが、abedはFnatic以前から十分に魅力的なプレイヤーであり、Fnaticで試行錯誤を繰り返す中でも常にプレイヤーとしての魅力に溢れる内容を残し続けました。

既に強く、美しく、魅力的で、悪い個性も持っていません。あとは勝てるプレイヤーになれるかだけです。が、それはチーム事情というものがありますから、ti8では難しいという話にどうしてもなってしまいます。残念なことに、abedは旅に値しますが、Fnaticは旅に値しません。




・raven

異常者、無敵のravenです。

ravenが無敵だったのはもう思い出せません。失敗を恐れるようなそぶりを見せないにもかかわらず、失敗を回避する為の異常とも言えるロジックを持ち、得られるものは少ないけれど、失うことは決して無いというタイプのポジション1です。

このタイプのポジション1は、確固たるものを持つ強いポジション2と組む事で生きるのですが、TNCはポジション2をKUKUからarmelに変更するなど少し迷走してしまい、ravenの強さは生きていません。特に1437を放出してからのTNCは迷走してしまい、ravenの輝きも若干色褪せてしまいました。

とは言え、一年通じてどのリプレイを見てもravenは外れの無い挙動をしており、全てのポジションを顧みても、世界で一番失敗率の低いプレイヤーです。ravenを見る為にTNCを見よう、という話には決してなりませんし、TNCがravenで勝つという事は滅多と起こりませんが、それでもravenは世界最強のポジション1の一角を成しています。世界中の誰もがみんな迷走して消えていた最悪の一年において、ずっと強かったというだけの理由の星三つです。





◆星2

・fata-

pos3転向後に精彩を欠いたs4と比較すると、ブランクがあったにもかかわらずpos3に転向した瞬間から素晴らしかったfata-の特別さが際立ちます。この一年間のsecretはサイコロの出目が良くて身の丈以上に勝ちすぎていたというのが私の見立てなのですが、少しかみ合えば勝ちまくれるだけのチーム力が間違い無くありました。それを支えていたのは他ならぬfata-です。

現代に蘇ったside solo carryとしてACEが運用される中でfata-はtri lane hitterを務めていたわけで、その運用に耐えうるプレイヤーパワーと、その運用に耐えうる信頼感があったからこそsecretというチームは成り立っていたのです。この一年間通じて最後まで決して失速しなかったsecretの快進撃は、fata-の確かさによって支えられていたのです。


・fade

一年通じてfadeは強いというリプレイを残し続けたプレイヤー。チームの勝ちに繋がっていないではないかという部分は中国予選という特殊な事情があるが故であり、過疎化が進み衰退する一方の中国という地域においては唯一と言ってもよい明るい話でした。2-1-2になってプレイヤーとしての個性が失われたように見えるのは残念です。多くのpos4pos5が2-1-2になって魅力を失ったのと同じように、2-1-2になって違いが作れなくなったのが気がかりですが、バージョンの問題だと思います。


・ラムゼス666
Liquidと共に世界最強チームとしてこの1年間のdota2シーンを牽引したVPが誇る最強プレイヤー。ただし、星4筆頭に置くには、強い違和感があったので星4筆頭には出来ず、気がついたら星2の筆頭になっていた。これはラムゼス666の責任ではなく、何故かラムゼスがpickerをやって迷走してしまったというVPのチームマネジメントの犠牲者。


まず第一に、VPが強かったのはラムゼスの強さによるものではない。VPが強かったのは、VPこそが世界で最も洗練されたチームであり、他のチームとはレベルの違う戦略と連携を持ったチームだったからである。ラムゼスは世界最強のポジション1の一人ですが、他の世界的なポジション1よりも上というわけではない。素晴らしい個性を持っているものの、VPその個性を完全に殺す戦略を選択している現状では、ラムゼスは特別な魅力のない平凡なプレイヤー。

pickerを担当する度にVPに暗黒時代をもたらした過去を持つにも関わらず、何故か今もVPのpickerはラムゼスであり、ずっとpickが酷い。ラムゼスが必要以上に悩んでしまったという要素は見え隠れするものの、pick&banの酷さはラムゼスの責任ではなく、チームマネジメント側の問題だとは思う。



この一年間世界で一番勝ったチームは確かにVP。けれどもそれは、世界中のチームがマネジメントにより迷走していたが故。SumaiLがpos3をやったり、レソリュを追い出すコーチが居たり、チームの功労者に対する論功行賞でワーストプレイヤーを用いたり、そういった外部的要因がなければ、VPはここまで勝てなかったと思う。事実2018年の8月においてVPは世界最強の一角から既に陥落してしまっている。



この1年間のラムゼスに星4はおかしいよね。この1年間のラムゼスに星3はおかしいよね、という話に自分の中ではなってしまった。確かに星4のポテンシャルはある。けれどもこの一年間は違った。ti8のプレイヤーレビューを書き始めるまでは、頭の中ではラムゼスを星4筆頭に書くつもりだった。けれども、ti8用の下調べで色んなリプレイを見て、冷静に一年を振り返りながら考えてみると、ラムゼスを星4筆頭に置く事は出来なかった。

ここ数ヶ月、VPの状態は非常に悪い。「ラムゼスで勝った」と言えるパターンが皆無に等しいので、とにかくpickerを変えて欲しい。今のラムゼスは、自らの歴史に残るキルプレイヤーという特性を押し殺すpickしかしない。悩みに悩んで工夫と努力をしているのは見て取れるのだけれど、全て悪い方に努力してしまっている。努力の方向音痴。pickerを変えない限りラムゼスの復活はありません。僕等はラムゼスに飢えています。




・ghg

この人もバージョンとkurokyの犠牲になったように見えた一年間でした。特に2-1-2が固定化されるゲームになってから、ghgが他のプレイヤーとの違いを作っていた部分の多くが死んでしまい、本人の能力とは外れたところで一時の輝きを失ってしまいました。

Liquidは一年通じて強かったわけではありませんが、常に世界最強チームとしての役割をぎりぎり果たすところには達しており、ghgはその力強さを支える大きな要素でした。世界最強のポジション4として、cr1tやfadeやヤプゾルに追いつかれないようにしていただきたいです。その為にはまずpatchかな、とも思います。外部要素ですね。現在のバージョンは明確に向いておらず、レーンでちんたら2on2をやるべきプレイヤーではなさそうです。




・maybe

maybeはずっとmaybeであり、強くも弱くもあったのですが、シーズンの最後も最後でやっとこさ、LGDは勝てるチームへと生まれ変わりました。トップシーンにおけるワーストプレイヤーであるyao先生を使うなどという意味不明なチームマネジメントの犠牲者でした。

maybeに関しては特に何も無いでしょう。歩いて行くだけで地球上の全てのプレイヤーが吹き飛んでいた時代の感覚が完全に染みついており、現代シーンにおけるmaybeは、強いは強いものの世界で一番雑なプレイヤーでしかありません。

とは言え、LGDの復活に際し、china pubの覇者だった頃に培ったmaybeの個性がポジティブに働いたこともまた確か。LGDの快進撃は現代シーンにおいてはマイナスにしか働かないと思われていたmaybeという個性によって成し遂げられたものです。なお、昨年のプレイヤーレビューの段階で既にわたしはmaybeを、上にはSumaiLしか居ない中国最強のポジション2として記述しています。世界中誰1人としてmaybeのことなんて完全に忘れていましたが、maybeはずっとmaybeだったのです。dendi時代を終わらせるはずだった中国が遂に手に入れた真の才能は、天下を取り損ねた今も尚、幸いにして強さを意味するIDです。



・pj

北米のチームが悉く弱体化したという外部要因こそあれ、2018年にpjが五指に入るポジション1になると誰が想像していたでしょうか。dota2シーンの過疎化と地盤沈下を嘆く前に、pjの素晴らしさを称えるべきです!

kurokyとlodaの時代を終わらせるはずだったpj、13baby、dendiの中で筆頭に位置していたはずのpjは、dendiの天下が終わっても尚も世界で戦えるプレイヤーとして世界中を放浪しています。ppdを勝たせたpjというよりは、pjを勝たせたppdという要素が色濃いのが癪ですし、pos1としての挙動は没個性な事大主義者でしかありませんが、pjがそれだけに留まらないプレイヤーであった事は私達が知っています。一年通じて安定したリプレイを残し続けたことにより、pjの世界的名手としての地位はもはや揺るぎないものになったと言っていいでしょう。ローカルレベルの最強プレイヤーでもなければ、往年の名手でもありません。2018年にも関わらず、今や世界のpjなのです。




・iceiceice

低迷どころの騒ぎではない低迷は過去です。シンガポールが世界に誇る変態プレイヤーは復活を遂げました。かつての世界最強pos3、DK dreamteamのベストプレイヤー、iceiceiceです。アジアチャンピオンシップで優勝したのは大会期間中のpatchというvalveの言語道断の所業によるものであり、iceiceiceどうこうという話ではありませんが、それを除いてもiceiceiceは世界的な名手としての地位を取り戻したように見えます。

iceiceiceは個性としての不安定さを内包しているが故に、LoL化してしまった現在のバージョンは彼の個性がプラスに働くバージョンではありませんが、それでも十分な強さがあります。




・ori

ポジション1としての拒絶者が完全に行き詰まっており、折を見てポジション2に転向すべきなのですが、残念ながらviciのポジション2には世界的なプレイヤーが居ます。oriです。「中国人は誰もdota2なんかやらない」という現実の中で中国に強いタレントが生まれなくなって久しいですが、本格化したoriは世界で勝てるプレイヤーになりました。長い経験によりpickプールも広がって、以前のような制約もなくなり、ライバルの武器を奪う為のpickや、有利キャラをかぶせるpickもそつなくこなせるようになっています。

中国予選という特殊事情から、常に国際大会に辿り着けたわけではありませんが、ori自身は安定して強かったし、2-1-2化したバージョンでも十分な強さを保ち続けていました。




・nb

ameにしようと思ったのですが、このプレイヤーレビューは2017-2018シーズンのプレイヤーレビューです。LGDは実働半年、Mineskiは一年間ずっとそれなりに強かったです。「ポジション5で勝てないバージョン」になって久しいdota allstarsですが、ポジション5で負けるチームが多い中でMineskiのnbはチームから絶対的な信頼を置かれており、Mushiとiceiceiceが立案したであろうMineskiの特殊な戦略に花を添え続けました。「dotaはポジション5で勝てるゲーム」というあの頃のdota allstarsに最も近い位置でプレイし続けた一年でした。



・レソリューション

ご存じ光武帝レソリューション。一年通じてのプレイヤーレビューに、実働3ヶ月で乗り込む男。「これはdota2史上最悪のシーズンとなった、2017-2018の一年間のレビューだから」というこれまでの言い訳はなんだったんでしょうか。

昨年のti7の時点では、同時代のライバルが完全に不在で、歴史に挑むフェイズにあったレソリューションでしたが、チームマネジメントの犠牲となって行方不明になり、"最悪の一年"を象徴するIDとなってしまいました。最終的にはでたらめなコーチに愛想を尽かしてチームを離脱。移籍先のVGJSで輝きを取り戻し、VGJSを世界的なチームへと生まれ変わらせ、ti8の出場権を北米予選一位で獲得してしまいました。

現在はVGJSでポジション1と2を兼任しており、ポジション2においては世界のトップには見劣りしてしまいます。ポジション1は流石に素晴らしいですがポジション1で勝てるバージョンでもなく、尚且つmiracle-の方が強いという現実が待ち受けてしまっています。帝国は滅んで、歴史は遠く、天下はどこにも見えません。








ということでThe International 8のプレイヤーレビューでした。

2017-2018シーズンは世界中のチームが滅茶苦茶になる最悪の一年だった為、現在のシーンを反映したものではありません。この一年間が歴史上最も退屈でつまらない最悪の一年だったのは疑う余地のない事実ですが、幸いにして今はそうではありません。茶聖kurokyは茶道具を投げ捨て刀を手に取り、ti8を目前にして世界中で再編がなり、「今は面白いんだよ」と言える状況が出来ました。dota2シーンを見始めるには、今日が吉日であります。


繰り返しますが、このプレイヤーレビューは2017-2018シーズンの貢献度を元に書かれたレビューであり、2018年の8月の実情を反映したものではありません。