2018年8月2日木曜日

ti8を前にdota2シーン最悪の一年を振り返る


The International 7が終わってからの一年間は、dota2シーン最悪の一年でした。何故2017-2018シーズンが最悪の一年だったのかを、簡単に振り返ってみたいと思います。





◆Evil Geniusesの意味不明なチームマネジメント

EGは2017年の12月に世界最強のポジション3だったUniverseを解雇し、少し前まで隠遁していたFearをロースターに戻しました。それだけならばまだ良いのですが、世界最強のmid lanerだったSumaiLを何故かポジション3にうつし、midにおいてはeSportsシーンで通用した事がないfearをmidで使うという正気の沙汰ではないチーム改変を行いました。

これにより、世界最強のmid lanerのSumaiLが事実上eSportsシーンから完全に消滅しました。おりしもpatchの影響で、「世界最強のmid lanerであるSumaiLが一人勝ちするはずのバージョン」であったにも関わらず、SumaiLがポジション3をやっているという理解不能な状況が続きました。

また、miseryをOpTicから引き抜きながら僅か5ヶ月で戦犯扱いして解雇するなど、理不尽な行いでEGの5人のみならず、他のチームまで滅茶苦茶にしてしまいました。



◆OGで暴走した無能なコーチ

OGはanaという若いオーストラリア人のmid lanerが休養の為にチームを離脱し、その穴埋めに歴史に挑むポジション1、光武帝レソリューションを獲得しました。けれどもチームオーダーが定まらず、レソリューションとnotailという2人の偉大なプレイヤーを無駄使いした挙げ句に迷走します。

私が「欧州最強のpickerではなく世界最高のpicker」と言い続けてきたキャプテンflyに対して「流石にpickerを変えた方がいい」と言った程に、メジャー大会を3連続優勝したあの日が嘘のように、酷いチーム状態が続いていました。

けれども、レソリューションが謎の離脱を遂げた事により、状況が一変します。レソリューションの抜けた所に入ったのは、OGのコーチでした。そしてOGのコーチはeSportsシーンでは考えられない滅茶苦茶に酷いpick&banを繰り返し、「何故世界最強のpickerであったはずのキャプテンflyのpick&banが迷走したのか」という謎に対する明確な回答を提示します。コーチがどうしようもなくアホだったのです。

結果としてOGはレソリューションのみならず、flyとs4という偉大なプレイヤー2人にまで逃げられて、世界最強のポジション4と、休養から復帰したanaを無能な元コーチが閉じ込めるという、名手の墓場、歩く棺桶と化してしまいました。ミンナ……ハヤクニゲテ……。



◆newbeeの無策

newbeeには世界最強のポジション1と、世界最強のmid lane carryが居ます。ポジション1+2の総合力では世界最強というチームです。けれども、ポジション3の適正を全く持たないオーストラリア人と、ポジション4の適正を全く持たない中国人を頑なに使い続けたが故に、全く勝てませんでした。

本来ならばnewbeeこそプレイヤーを変える必要があったのですが、昨年のThe International 2017で無駄にウイナーズ優勝を成し遂げてしまった為に変えるタイミングを失い、世界最強の1+2である金色の2人を使い潰して何も出来ずに終わってしまった一年でした。



◆LGDのマネジメント

昨年のThe International 7で4位という好成績を収めたLGDは、ti7後にチーム改変を行い、トップシーンにおけるワーストプレイヤーだったyao先生を2ndチームから1stチームのLGDへと引き上げます。

yao先生はLGDが4人のプレイヤーをiGに引き抜かれ、残る一人もモチベーションを失い休養してしまう中で、LGDの最強プレイヤーとして現在のLGDの礎を作ったLGD最大の功労者の1人です。yao先生が居なければ今頃はチーム自体が無くなっていた可能性すらある。そんなyao先生に、賞金額がインフレした現代シーンで稼がせてあげる為の、論功行賞としての再編でした。

けれどもyao先生はトップシーンにおけるワーストプレイヤーでした。トップシーンにおけるワーストプレイヤーをチームに編入したLGDが勝てるわけがありません。LGDはyao先生起因で不安定に負け続けます。yao先生が2月にkickされると同時にLGDは世界最強の一角にまで登り詰めました。LGDは最悪のチームマネジメントにより、半年間を無駄に過ごしました。

なお、yao先生は2ndチームへと押し出されたのですが、yao先生を押しつけられたLFYはThe International8の出場権を逃しています。論功行賞とはなんなんでしょうね。



◆Fnaticのpieliedie

他の例に比べれば軽微なものかもしれませんが、宇宙最強プレイヤーを擁しながら世界で勝てるチームには決して成り得ないというFnaticの特殊事情はpieliedieの弱さが故です。ただしこれは他の「チームマネジメントが悪い」というケースとは全く違う、難しい問題です。

pieliedieはdota allstars16年の歴史の中で最強のmid laneサポートにして、最強のfeederです。問題は、現在のバージョンにおいてはmid laneサポートという役割も、自分が死ぬ事によってゲームの展開を作るという役割も、patchによって完全に潰されている事でしょう。

pieliedieはdota2の歴史の中で最大のプレイヤーIDと言ってよい偉大なプレイヤーであり、確かにFnaticはpieliedieのせいで世界で戦えないという苦しい状況にあるのですが、だからと言ってFnaticのマネジメントが間違っているという話には現段階ではまだならないでしょう。



◆VPの第三期ラムゼス暗黒時代

VPはラムゼスがpickerになる度に低迷しているのですが、二度ならずも三度までもラムゼスをpickerにして暗黒時代を迎えてしまいました。確かにVPは2017-2018シーズンのポイントランキング第一位ではありましたが、最終的にyao先生をkickしたLGDに同一カード4連敗を喫しています。

VPが世界最強の一角だったのは、他のチームが迷走していたから。そんな残念さが最後まで付きまとう2017-2018シーズンでした。





◆茶聖kuroky

5jangoで雑兵を集めて自らの無茶苦茶なコマンディングにより世界のトップシーンに殴り込むという驚愕の全盛期を迎えたkurokyはそのままの勢いでThe International 2017で優勝を飾り、全盛期kurokyは当面の間続くだろうと思っていました。

所がti7で優勝をした後にkurokyはそれまでの勝利を目指す姿勢を完全に捨て、「ゲームは勝ち負けの為にやるものではない」という方針を明確に示してしまいます。kurokyは自らの美意識の為にプレイし、自らが面白いと思うことをやる為だけにプレイしはじめます。全てのゲームのeSportsプレイヤーの中で最高の生涯賞金額を誇るkurokyの、まさかのエンジョイ勢への転向でした。もう金は十分に稼いだから楽しんでゲームをやろうぜ、という事なのでしょう。

valveは昨年までは年に4回発売していたシーズンパスをThe Internationalのみの1回にしてしまうなど、賞金額の一極集中が進み、The International以外の大会を真面目に勝ちに行くメリットが減ったのは確かです。賞金額の低い大会で強い内容を残してvalveに目を付けられて極端な弱体化の対象にされるよりも、低空飛行を続けた方が得策であるとの判断があったのかもしれません。

ともあれ、kurokyが賞金100万ドル規模の大会では真面目に勝ち負けを目指さないという事がti7終了後すぐに明示的に示されてしまい、"何者をも寄せ付けない世界最強チームLiquid"という魅力的なコンテンツへの扉は、kuroky自らによって閉ざされてしまいました。




これが"最悪の一年"のほとんど全てです。他にも「休養が必要なので休みました」というトッププレイヤーは存在するのですが、人生に休養は大事なのでそれらは"最悪の一年"という言葉の中に含まれていません。最悪の一年の内容はkuroky以外の全てがチームマネジメント起因です。ベンチがアホやから、という話ばかりでした。

ポジティブな話としては1にも2にもsecret。
ppdの復活やMineskiの充実も盛り上がりました。
それもこれも……という話にはどうしてもなりますが。






なお、上記の"最悪の一年"を構成する諸要素の多くは既に解決済みです。「2017-2018シーズンは最悪の一年だったけれど、ti8が最悪なわけではない」というわけです。一応は、めでたしめでたし、ですね。