2005年10月17日月曜日
アルファブロガー
ベッドの上の彼女の上で何度目かの夜を過ごしていると彼女が言った。
「死ねばいいのに。」
「誰が?」
「夫。アルファブロガーなの。」
「アルファブロガー?」
「そう、アルファブロガーなの。」
こんな時に旦那の話をしはじめるなんてと、僕は少し萎えた。
「死ねばいいのに。」
「どうして?」
「だって、アルファブロガーなのよ。信じられる?うんざりなの。」
「アルファだから駄目なの?」
「ブロガーはみんな駄目よ。あんなの。」
僕もブログを書いているんだ、なんて言い出せる雰囲気じゃなくなった。
「みんな頭がおかしいのよ。正気じゃないわ。」
「ブロガー?」
「そう、ブロガー。ブロガーは全員頭がおかしいのよ。」
「そんなものかな?」
「おかしいのよ。」
うんざりしながら耳たぶを舐ってみたが、彼女は話を止めなかった。
「ブログを書き始めて1ヶ月で10%の人が頭がおかしくなるんだって。」
「ほんとう?」
「ええ、主人が言ってたわ。主人、こういうくだらないデータには強いの。」
「そうなんだ。」
「アルファブロガーだから。」
「なるほど。」
「3月で38%の人がおかしくなるの。」
「じゃあ、三ヶ月以上ブログを書いている人の62%はまともなの?」
なにもわかってない、という目で彼女は僕を睨み付けた。酷い目だ。
「違うわ。60%の人はブログを書くのを止めるのよ。三ヶ月で。」
「あー、なるほどー。じゃあ、残りの2%は?」
「生まれついてのおかしい人よ。アルファブロガーってのは、みんなそう。」
「確かに、そういうところはあるかもね。」
幾人かのアルファブロガーを頭に思い浮かべて、僕は納得した。
「強姦魔や人殺しと同類の人達が有り難がられている。それがブログ、ブログ、ブロガー、ブログ。」
「それはちょっと言い過ぎじゃあないかな。」
「馬鹿。馬鹿ね。真鍋かをりを見てご覧なさいよ。あれはキチガイの目をしているわ。」
まったく、アルファブロガーの話をしているときにかをりんは無いだろうと僕は萎えた。
「あの女はね、躯で仕事を取っているの。淫売よ。売女、売女。」
「そうなの?」
「そう。主人が言ってた。」
「あー、ご主人が。」
「主人はね、こういうくだらないのには強いの。まともなのは全部こけおどしだけど。」
「そうなんだ。」
「そう、死ねばいいのよ。」
アルファブロガーの妻に手を出すのはもうやめようと思った。
「あ、ケイタイ。」
「携帯。」
「誰から?」
「夫。アルファブロガーよ。声も聞きたくないわ。」
「そう、だね。」
「死ねばいいのに。」
「そうだよね。」
「一緒に暮らせる。」
「誰と?」
「あなたよ!」
語尾を強められても、と僕は思った。心おきなく中で出せるって以上の価値は君には無いよ、なんて言うわけにもいかなかったし。
「死ねばいいのに。」
「死ねばいいのにね。」
「さあ、続きをしましょう。」
「うん。僕が宇宙と天国を同時に見せてあげるよ、いつもみたいに。」
「お願い。全部見せて。いつもみたいに。」
ブログを書くのを止めようと思った。
「ちょうだい、はやくちょうだい!」
「はいはい、パイルダーーーーオーーーーン!」
頭がおかしくなる前に。