2005年11月10日木曜日

サイワールド・スタークラフト・MMO=洗濯機・冷蔵庫・テレビ



日本にはプロゲームが根付く余地というものが存在していないように思える。

韓国のプロゲームの放送動画を見ていて感じたのは「ああ、これはK1だな」という事である。藤原紀香みたいな女の人がいたり、オープニングの選手紹介ムービーは妙にハイスピーディなテンションだったり、観客席の見栄えのいいお客さんは所々でカメラで抜かれたり、といった番組のつくりは非常にK1的である。邪推だが、なんらかの影響を受けているのではないかと思えるくらいに全体の雰囲気が似ている。

しかも観客には驚くほどカップルが多い。恋人同士のデートでプロゲーム見に行く、なんて我が国では想像出来ない光景であるが、恋人同士のデートでK1を見に行く、という話であれば理解可能な領域である。

さらに、たいした男前でもないのに、強いというだけの理由でアイドル化している自国選手に飛ぶ黄色い声援はK1のそれと被るし、世界中から選手を招聘して自国選手とぶつける、というマッチメイクのやり方も、K1とまったく同じである。

つまり、自分はK1(あるいは昨今の格闘技ブーム)の成り立ちというものに詳しくないのでよくわからないのだけれど、中韓のプロゲームの隆盛は、他にやることが無い若者の興味を集める娯楽というものを、タイミングよく提供する事に成功した、という事なのではないだろうか。

おそらくではあるが、韓国人の多くは別にゲームというものを好きでもなんでもなく、(本当の意味で)他の娯楽が無かった、というだけなのではなかろうか。



と考えると、日本にはもう1つの良い例として、Jリーグフィーバーというものが過去にあり、猫も杓子もカズダンス、といったような状況が作り出された。それは、2002年に韓国のワールドカップフィーバーに重ねて見る事が出来るものである。

ご存じの通り韓国のサッカー熱は完全に冷め切り、JリーグのTV中継が我が国から一気に消滅したのと同じように、韓国ではあのフィーバーを国内サッカーリーグの人気へと繋げる事が出来ておらず、ワールドカップの為に造られた巨大な箱物は、赤字生成マシーン化してしまっているという惨憺たる状況がそこにはある。

我が国のJリーグ経営というものはどうやら結果だけで見ると非常に優れており、フィーバー後の落ち込みからどうにかして全チームが観客動員、収益、人気といった面において完全に立ち直ったようであり、その努力と実行能力は非常に素晴らしいものである。おそらくだが、韓国にそれを行うだけの与力は残っていないだろう。

韓国相撲シルムが潰れ、韓国野球も韓国サッカーもボロボロという状況からすれば、もはや韓国の若者層向け大衆娯楽はインターネットが生み出した「サイワールド、スタークラフト、MMO」という巨大にして強大な、韓国全土を制圧してしまっている時間も金もそれなりに必要な存在と真っ向から戦わねばならない状況に陥ってしまっており、それはほとんど勝利不可能な領域のように思えてならない。

韓国のサッカーや野球は広告塔という面でも収益という面でもインターネット的なものに淘汰され、ますます痩せ細ってゆくのではないかと、物凄く勝手に思っている。



とすると、どうも我が国と韓国は非常に似ているように感じる。ただ、我が国が韓国よりも優れている(あるいは優れていた)点があったとすれば、我が国には若者娯楽の多様性というものが存在しており、PCゲームユーザー(潜在的プロゲーム視聴者)というものが、アニメやら漫画やら家庭用ゲームやら、あるいはその他の一般的娯楽やらというものに分散してしまっており、我が国は文化的に多様であるが故にプロゲームなどというものが根付く余地が無かった、とするのが正解ではなかろうか(物凄い適当)。



即ち、我が国には趣味の階層というものがきっちりと出来上がってしまっており、「オシャレな娯楽」「オシャレでない娯楽」「ファッショナブルな娯楽」「ファッショナブルでない娯楽」などという風にあらゆる娯楽の一般的分類が完成されてしまっているように思える。

例えば、趣味欄に記入される「国内サッカー」「海外サッカー」「国内野球」「大リーグ」という4つの活字には、純粋に競技の違いというものを越えた場所で、それぞれまったく違う意味合いが付加されてしまっている。

同様に、映画/単館映画/TVドラマ/アニメというものにもそれぞれ意味合いが付加されているように思えるし、小説にしてもSF/ミステリー、純文学、大衆小説などといったようなジャンル毎に読者層の棲み分けが綺麗に成されているような印象を受けるし、webコミニケーションにしても、livedoor/mixi/楽天/はてな/アメーバといった具合で、客層の違いのようなものが感じられる。



対して韓国では全人口がサイワールドとうい1つのウェブコミニケーションツールに向かってしまっている。

サイワールドの韓国でのユーザー数はなんと1500万という数字である。
韓国のネット人口は3000万人という数字があるくらいだから、2人に1人はサイワールドという極めて実名系SNSに自分のウェブスペースを持っている、という状況である。



つまり、というか説明になっているかどうかはわからないのだけれど、日本ではあらゆるウェブサービスや娯楽(K1, スポーツ, 映画, オタク)が枝、つまり個性を表現する道具、個性を表す趣味として存在しているのに対して、韓国は娯楽の多様性がほとんど存在していなかった所に突如として、経済崩壊からのIT化政策、インターネット&スタークラフトという巨大すぎる存在が現れたが故に、それが人間の条件として、興味を持っていて当たり前のものとして滲透してしまったのではないか、と思える。

その視点で「サイワールド・スタークラフト・MMO」という韓国を完全に制覇し、一般大衆レベルに満遍なく滲透した3つを考えると、我が国においてそれに最も近いものは「洗濯機・冷蔵庫・テレビ」という所謂三種の神器である。(MMOではなくオーマイニュースが正解かもしれないけれど。)

つまり、韓国人は取り立ててそれらの道具を好きというわけではなく、それらが「当たり前のもの」「当然のもの」として滲透し、消費されているのだと僕は捕らえている。
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