2006年1月11日水曜日

そして伝説ではない。



伝説になるのは簡単だ。
適当に選んだ20人の敵のそれぞれ顎を、完璧な左フックのラッキーパンチで打ち抜いて、こう言い放ってやればよい。「戦う相手がいなくなった」って。




たった20の並ぶK、たった20の振り抜かれた左足、たった20の果てた末のスパート、それすら誰も覚えていちゃあくれない。たった20の涙ぐむ笑顔、たった20の愛を伴う嘘。伝説になるということ。記憶の彼方へ駆け抜ける。




伝説になるのは簡単だ。
適当に選んだ20の題材のそれぞれ顎を、完璧な左フックのエントリーにこしらえて、こう言い放ってやればよい。「書くべき事がなくなった」って。




インターネットの世界では、何もかもが生きていて、否応無しに蠢いている。次から次へと訪れて、にもかかわらず、誰も戦おうとはしない。横たわるのは馴れ合いで、みんな友達くだらない世界。白黒付かずに時間だけが進む。そこから何かを抜き取って、みんな満足してしまうのだ。




伝説になるのは簡単だ。
適当に選んだ20の巨大な隕石を、完璧な左フックでオメテして、こう言い放ってやればよい。「憎むべき相手がいなくなった」って。




インターネットは止まらないから、区切ろうとする人はいても区切りはないから、そして何一つなくならないから、だからここでは何もかもが伝説にはなれない。待つ物は忘却、止め処なく訪れるあらたな萌芽。何も消えずにずっとある。伝説に、なりたい奴はただ消える。




僕は伝説にはなれない殴り倒せる相手がいない。宇宙全土は見渡す限り、役に立たない能無しの味方で埋め尽くされている。今じゃあ、神も仏も田中も閻魔も僕の背中を押している。我が敵は我のみ。滅びる日まで。




完璧さとはかけ離れた言葉を連ねて、そうして僕は歩き続ける。だって誠に残念なことに僕は未だに生きていて、僕はブロガー。臨終までの孤城落日その全てを書ききるのがブログってもんだろう。




完璧さなんてまっぴらごめんだ。
伝説なんて安いもんだ。