2008年10月6日月曜日

タイガータイガーがつまらなければ。



素晴らしいとされているものを、素晴らしいと思えない度に、僕は心を痛めてきた。
「不完全な人間なんだ」と。




みんなには笑えることが、僕には笑えない。
みんなは泣いていても、僕には泣けない。
みんなは喜ぶけれど、僕は嬉しくない。




何が起きても沈んだままで、微動だにしない自分の心。
そんなことが、繰り返された。




心から何かを楽しめたことも、
心から何かを喜んだことも、
心から幸せを感じたことも、
一度としてなかったように思う。




それでは、いけないと思った。
人間らしくありたいと思った。




喜んでいるふりをして、楽しんでいるふりをして、笑っているふりをした。
「他の人ならどんなふうにするだろう」と考えて、それを真似していた。




想像ばかりしていた。考えてばかりいた。何も感じていなかった。
悲しさも、苦しさも、恋しさも、全部想像の産物だった。




自分で自分の心を作って、
手作りの心で生きてきた。




喜ぼうと思って喜び、
悲しもうとして泣いていた。




偽りの心ではなかったけれど、
本当の心でもまた、なかった。




悲しくても、「どうせ悲しいだけなんだろう」
嬉しくても、「どうせ嬉しいだけなんだろう」
傷ついても、「どうせ傷ついただけなんだろう」
と、遠く離れて、冷めていた。




僕は自らでありながら、
知らない誰かのようだった。




新しい事がある度に、
新しいものに出会う度に、
僕は何も感じず、何も思わず、何の驚きも持たず、
それでいて感慨めいたふりをして、泣き笑いを繰り返した。




笑顔の度に、涙の度に、
苦痛で顔を歪める度に、
僕の心は離れていった。
僕の心から離れていった。
「本当はそんなでもないくせに」と。




もう、何も見たくない。
もう、何も知りたくない。
どうせ僕は、何も感じない。
そのくせ、何かを感じるのだ。

喜んだり、悲しんだり、笑ったりするのだ。
何も感じてなどいないのに。




もう、何も見たくない。
もう、何も知りたくない。
どうせ僕は、何も感じない。
そのくせ、何かを感じるのだ。

タイガータイガーがつまらなければ、
僕は尚更そう思うだろう。
タイガータイガーがおもしろければ、
僕は尚更そう思うだろう。