タイガータイガーがつまらなければ。



素晴らしいとされているものを、素晴らしいと思えない度に、僕は心を痛めてきた。
「不完全な人間なんだ」と。




みんなには笑えることが、僕には笑えない。
みんなは泣いていても、僕には泣けない。
みんなは喜ぶけれど、僕は嬉しくない。




何が起きても沈んだままで、微動だにしない自分の心。
そんなことが、繰り返された。




心から何かを楽しめたことも、
心から何かを喜んだことも、
心から幸せを感じたことも、
一度としてなかったように思う。




それでは、いけないと思った。
人間らしくありたいと思った。




喜んでいるふりをして、楽しんでいるふりをして、笑っているふりをした。
「他の人ならどんなふうにするだろう」と考えて、それを真似していた。




想像ばかりしていた。考えてばかりいた。何も感じていなかった。
悲しさも、苦しさも、恋しさも、全部想像の産物だった。




自分で自分の心を作って、
手作りの心で生きてきた。




喜ぼうと思って喜び、
悲しもうとして泣いていた。




偽りの心ではなかったけれど、
本当の心でもまた、なかった。




悲しくても、「どうせ悲しいだけなんだろう」
嬉しくても、「どうせ嬉しいだけなんだろう」
傷ついても、「どうせ傷ついただけなんだろう」
と、遠く離れて、冷めていた。




僕は自らでありながら、
知らない誰かのようだった。




新しい事がある度に、
新しいものに出会う度に、
僕は何も感じず、何も思わず、何の驚きも持たず、
それでいて感慨めいたふりをして、泣き笑いを繰り返した。




笑顔の度に、涙の度に、
苦痛で顔を歪める度に、
僕の心は離れていった。
僕の心から離れていった。
「本当はそんなでもないくせに」と。




もう、何も見たくない。
もう、何も知りたくない。
どうせ僕は、何も感じない。
そのくせ、何かを感じるのだ。

喜んだり、悲しんだり、笑ったりするのだ。
何も感じてなどいないのに。




もう、何も見たくない。
もう、何も知りたくない。
どうせ僕は、何も感じない。
そのくせ、何かを感じるのだ。

タイガータイガーがつまらなければ、
僕は尚更そう思うだろう。
タイガータイガーがおもしろければ、
僕は尚更そう思うだろう。