ぼくの考えた対戦格闘ゲーム。



モータルコンバットは華麗なフェイタリティーが最大の長所だったはずなのに、何を血迷ったかスパイダーマンやバットマンを参戦させてしまったが為に、フェイタリティーの描写が自主規制され、モーコンの魅力が大きく奪われてしまい非難囂々、というトピックを少し前に目にした。確かに、スパイダーマンの腕をもぎ取ってそのもぎ取った腕でたこ殴りにする、なんて描写は大人の事情で難しいのだろう。

それならば、いっそ戦う係と、フェイタリティーされる係を分けてしまうというのはどうだろうか。たとえばポール・ワトソンというカナダ人のキャラクターは、鯨を守る義憤集団の勇敢な船長であり、発煙弾や酪酸弾を投げつけて戦う正義の戦士だ。信念の人である。ゲージを消費することで漆黒の海賊船ロバートアーウィン号を召喚して攻撃する事も出来る。

僕の考えた対戦格闘ゲームの最大の特徴は、対戦で敗北した時である。ポール・ワトソンが試合で負けた場合には、「フィニッシュヒム!」の効果音と共に、ミガルという名のザトウクジラが子連れで泳いでくる。このザトウクジラ、全身が白である。まごう事なき真っ白である。世界でただ一頭の正真正銘、真性の白鯨である。

そこでコマンドを入力すれば、ミガル(アボリジニの言葉で「白い友だち」)には銛が、無数の銛が、巨大な銛が、これでもか、これでもか、と突き刺さり、グレートバリアリーフが真っ赤に染まるのである。その真っ赤に染まったグレートバリアリーフを不安げに泳ぐ子鯨にも、7秒間ほどの絶妙なタメの後に同じように銛が、巨大な銛が、無数の銛が突き刺さり、血みどろになり肉片が浮かぶ絵の右下にはりはり鍋をおいしそうに食べるおっさんのムービーが挿入されて「YOU LOSE」の文字が響きわたり、ポール・ワトソンはちょっと悔しそうな顔をしてつま先で地面を蹴るのである。

あるいはシモン・ペレスというキャラクターは精悍な顔をした退役軍人であり、一族の平和と安らかな暮らしを守るために、白燐弾や劣化ウラン弾を投げつけて悪と戦う正義の戦士だ。よくわからないものを投げつけて戦うという時点で、ポール・ワトソンとちょっとキャラが被ってしまっているが、その辺の没個性は超必殺技の違いで補うしかない。ゲージ消費でスーパーアーマー付きの超戦車メルカバに一定時間変身したり、ゲージ3本消費で核爆弾を打ち込んだりして戦うのである。何のために戦うかというと、それはもちろん正義の為である。

もしも彼が試合で敗北した場合は、「フィニッシュヒム!」の効果音と共に、児童を満載した通学用のスクールバスがゆっくりと走ってくる。そこでコマンドを入力すれば、児童を満載した通学用のスクールバスには銛が、無数の銛が、巨大な銛がこれでもか、これでもか、と突き刺さり吹き出す若い血潮と共に、最後は爆発して消し飛ぶ。何故爆発するかというと、捕鯨用の銛というのは、先端に火薬が付けられており、一撃で巨大な鯨を仕留める事が出来るようになっているからである。

もちろん、フィタリティ技はそれだけではなく他にも種類があって、足の不自由なご婦人がバスに乗り込んだかと思ったらその5秒後に大爆発、といったちょっと手の込んだ演出や、薄汚れた白いバンが真横から突っ込んで大爆発、といった香港映画風のもの、あるいは育ちの悪そうな少年少女が大勢出てきて、手に持った石をそれぞれ思い思いに投げつけて、バスの中の児童が血だるまになって死んで行くというヒッチコックの鳥風のものまで、多種多様である。それと同時に「YOU LOSE」の文字が響きわたり、シモン・ペレスはやる気の無さそうな顔でけだるく寝転びガムを噛むのである。