秋刀魚の気持ち。



秋刀魚は七輪で焼かれて不憫だなと、秋刀魚の気持ちをおもんばかっていると、七輪で焼かれる際には秋刀魚は既に死亡しているという事に気がついた。であれば即ち秋刀魚は不憫に非ずかと言うと、それも違う。秋刀魚は網に掛かるとパニックになって他人の鱗を飲み込みまくって死ぬと言う。惚れたあの娘の鱗ならば良かろうが、秋刀魚に選択の余地はない。見ず知らずの赤の他人の鱗を喉に詰まらせ、息も出来ずに死んで行くのである。知らない誰かの体毛を喉に詰まらせて死ぬ自分を想像して、この時ばかりは「ああ、人間で良かった。」と思ったものの、そんな気持ちも長くは続かず。