じゃあねバイバイ人殺し

目が覚めて眠たい。とても眠たい。もう駄目だ、という言葉だけが朝時に勃起して排尿を拒む陰茎のように隆起した希望に伴われて出社する。まずは希望を殺害すること。まずは希望を撃ち殺すこと。全ての向上心を排除して腐敗した有毒の粘性の高い毒液になって人生の忘れ去られた古い地下墓地の片隅に溜まれば、もっと素直に、そしてもっと幸福に生きていけるのではないかとその度に思う。けれども現実は無情でこの星をすっぽり覆う蜘蛛の糸に覆は何をするにも全身に絡みつき口も鼻も耳も目も遮り、「愛さえあれば生きていける」とか、「先立つものは金」、「努力は君を見捨てない」といった類の矛盾した、警句ですらない言葉の羅列が希望の後ろ、もう駄目だの後方、ずらずらと列を成して戸を叩く。その一つ一つに心を動かされ、応対するだけで1時間、2時間失われる人生のありがたさ。無念さ。幸せはありませんか。この人生に幸せはありませんか。心の痛まない幸せはありませんか。そうやって泣く子を紐で絞め、肥溜めに向かって5キロも歩く。板張りの床も、箪笥の引手も、幾何学模様の天井も、「人殺し」「人殺し」と心ない言葉を投げつけてくる。反骨心に満ち溢れた僕は、「だからなんだ」と反発する。迷惑なものを殺して捨てて、やがて忘れて何が悪い。心の痛みも良心の呵責もこの人生には寄与しない。大切なのは自分自身だ。自分自身の夢であり、希望であり、未来だ。そんなものを信じられる無邪気さはもう無い。朝起きて、心が死ぬのを待つ。奴らが全て疲れ果てて巣に帰り眠ったならば待ち望んだ僕の時間。けれどもその頃にはもう既に憎しみが心を曇らせ草臥れて、眠たかった前半生よりもさらに眠たい。起きている事が出来ない。かと言って、繰り返される睡眠と起床とそれからの方へ、近づいて行く気はもちろん起きない。眠たさが通り過ぎた眠たさの中を手探りで探す。徒労に終わりまた眠る。腹が鳴る。どうでもいい。眠たい。どうでもいい。今のお前に必要なものは、必要な物は。