そうやってまたすぐにヴァァァーーーって言う。

何かを凄く好きで、何かを凄く愛している人は、あんまりヴァァァーーーってならない。ヴァァァーーーってならずに、穏やかで静かな凄く好きが続く。山もなく谷もなく、ずーっと好きで、ずーっと愛してる。何かを凄く好きになるには、心の体力がいっぱい必要なので、何かを凄く好きになれる人ってのは、そんなに多くは居ない。

「凄く好きだよ」「愛してるんだ」なんてふうに着飾る人は大勢居るけれど、その実態は、ちょっと好きなものや、ちょっと気に入ったものを、「凄く好きなんだ」「愛してるんだ」ってことにして、人生を豊かにしているに過ぎない。世の大半、ほとんど全ての人にとって、「凄く好き」とか、「愛してる」なんてのは処世術の一つであり、人々にとっては自身の感情ですら、道具の1つでしかないのだ。

ヴァァァーーーってなる人はすぐにヴァァァーーーってなるし、なんにもでヴァァァーーーってなる。凄く好きだヴァァァーーー、愛してるヴァァァーーー、最高だぜヴァァァーーー。声を張り上げて彼らは叫ぶが、息が途切れるなりそれを止める。ゼエゼエ肩で息をして膝に手を突いて、コップの水をごくんと飲んで、次にヴァァァーーーと叫んだ時には、他のものに対して叫んでいる。さっきとは全く別の他のものにたいしてヴァァァーーー、ヴァァァーーー、って叫んでる。ヴァァァーーー、ヴァァァーーー、と奇声が飛び交い、好きだ愛だが掲げられるけど、それは彼らの生業であり、愛の囁き風に溶けて、君の耳には届かない。