「わたしにも夢があった」なんて言ってみても信憑性はないよね。僕には夢なんて無かった。おいしいラーメンが食べたいとか、今日はハンバーグがいいなとか、そんな事を考えたりはしたけれど、そんなのは夢じゃないよね。夢ってのは素敵なものでなければいけない。ちょっとした欲望を満たしたり、幸運な出来事を望んだり、誰かの不幸せを願ったり、そんなのは夢でもなんでもないよ。夢には幸せが伴わなければいけない。少なくとも、幸せという実体を持った幻想が伴わなければいけない。自分の幸せを願えないならば、誰かの幸せを願って、誰かを幸せにすればいいってのは安直な逃げ道だけど、僕のような人間が誰かの幸せを願うならば関わらないのが一番。僕に出来る事なんてなんにもないね。何もしなかった人の自己弁護だってわかってはいるけどさ。誰かの幸せを心から願った事なんてなかったし、それ以上に自分の幸せを望んだこともなかった。寝てさ、起きてさ、もう一度寝てさ、それだけ。