乗り越えて成長なんてうそ自分を騙してるだけ。

悲しみを乗り越えて
苦しみを乗り越えて
僕は成長していると
自らに言い聞かせている

悲しさを1つ新しく知る度に、悲しさを1つ思い出す度に、人はこういうものを乗り越えて成長する生き物なんだと、自らの中にある辛さや苦しさを何の根拠も無しに肯定する。けれども僕は悲しみを乗り越えた事も、苦しみを乗り越えた事もない。一度としてない。僕は忘れているだけなのだ。悲しさを忘れ、苦しさを忘れているだけなのだ。それも自らに都合のよいように、都合のよい所だけを忘れているだけなのだ。僕に頼れるものは、自らの生きる力ではなく、明日への希望でもなく、将来への夢でも無く、幸せへの渇望でもない。僕がこの人生において唯一頼れるものは、自らの頭の悪さだけなのだ。僕の脳細胞は幸いにしてもうぐちゃぐちゃで、毎秒たくさんのことを忘れていく。覚えておきたい人、覚えておきたい出来事、遠い昔にもう既に失われてしまった覚えておきたい僅かな現実的記憶。大切に覚えておこうと懸命に努力を続けてもその感覚や光景、あるいはその時浮かんだ感情を忘れてしまうんだから、今すぐ忘れてしまいたい事だって忘れてしまえるはず。そんな風に自分を信じる。自分の頭の悪さを信じる。

乗り越えていない
忘れてるだけ
頭の悪さを頼ってるだけ
また牙をむく
心をむしばむ