2019年2月5日火曜日

韮の味噌汁。

味噌汁は液体であるのに、味噌は個体であるというのが、味噌汁の第一の欠陥である。この欠陥を解決したのが液状の味噌であり、湯を注ぐだけで味噌汁が簡単に完成するという優れものである。この液状の味噌を用いて味噌汁を作るにあたり、具は何が良いのかというのが、味噌より私達に与えられた命題である。そして私はその命題を遂に解決した。韮である。思えば味噌汁の世界において、韮は虐げられてきた。韮は味噌汁には相応しくない。わかめだとか、豆腐だとか、アサリだとかナスだとか、そういった輝かしい食べ物こそが味噌汁に相応しいのであって、韮などというものは豚の内臓とでも炒めておけばよい、などという風説が出回り、誰もが疑問を抱くことなく、それを受け入れて生きてきた。有史以来、私達人類の歴史の中で、味噌汁に韮を入れんが為に戦った者は、ただの一人も存在せぬのである。この私を除いて。然り、味噌汁と韮の歴史は、私以前と私以後に別ける事が可能である。いや、可能なのではなく、いやがおうにもそうなってしまう。つまりこれから先の未来、人類の歴史は、味噌、私、韮の三語で言い表されることになるのである。